つながりを大切に、みんなの幸せを実現する(株式会社昭和製作所 舟久保利和 社長インタビュー第1回)

技術と対応力の高さを示す「試験片」
つながりを大切に、みんなを幸せにする株式会社昭和製作所を取材した。三方よしという会社理念のもと、32歳で会社を引き継いだ舟久保社長は、自社だけでなく大田区の町工場の顔として精力的な活動をされている。第一回目は、昭和製作所がどんな会社なのか、その内面を探っていく。

昭和製作所株式会社社長 舟久保利和 氏

創業70年目を迎える、歴史ある事業

主力製品について教えてください。

舟久保氏:当社の主力製品は、大きく分けて2つあります。

一つは、材料試験片といって、材料の機械的強度や耐摩耗性、耐腐食性などの基本的な材料特性を調べるために使用される試験片の加工を行っています。

もう一つは、超音波探傷用試験片です。超音波探傷試験に用いられる検査装置の品質確認のための標準として、試験片を提供しています。日本非破壊検査協会で販売されている、超音波探傷試験片を当社が生産しています。(参考:日本非破壊検査協会 試験片カタログ)]
材料試験片はどのような製品でしょうか。

舟久保氏:一言で説明すると、「ものづくりの最初の一滴の仕事」ですね。世界ではさまざまな用途向けに材料開発されていますが、例えば、新たな材料を作ったときにどのくらいの強さなのか調べるために引張試験をします。また、地熱発電のために温泉地のような場所で使用される材料の場合は、耐腐食性を調べるために、硫黄分を多く含んだ環境で試験をすることになります。

引張試験に用いる試験片を例に、製品の概要を説明します。

試験片での引張試験で得られる強度のデータを基に、材料の厚みや長さを定めて製品を設計することができます。製品設計の前に必要なデータを試験片で得ることができるのです。試験が終わった後は、試験片自体は破壊されてしまうので、部品として製品には組み込まれないのですが、試験片の犠牲の上に、世の中に有用な結果を残すことを目的に、モノづくりをしていることになりますね。

主力製品の一つである材料試験片。お客様の要望により、様々な形状に加工する。

 

超音波探傷用試験片はどのようなものでしょうか。

舟久保氏:超音波探傷は非破壊検査の一つです。X線検査と同じで壊さずに調べるということですね。超音波は、医療機関で使用されるエコーや、漁に必要な魚群探知機等に使われていますが、外観からわからない金属の中の異物や欠陥の有無を調べるためにも使われています。
例えば、大きな橋脚をつなぐために溶接する際、溶接の中に空気の穴が入ってしまうと、そこから亀裂が発生してしまいます。そういった溶接の中の欠陥の有無を、超音波を使って検出することができるのです。また、外観からわからない金属の厚みを測ることができます。高速道路のライトのポールの状態をチェックするときに、ポールの内側が腐食するなどして、金属の厚みが薄くなっていないかを、超音波を使って計測することができます。

もう一つの主力製品である超音波試験片の一覧。階段形状や緩やかな曲線形状は、超音波試験装置の校正に必要なポイントとなる。

このような超音波を使った計測をする際に、 超音波探傷器という装置を使いますが、探傷器が適正に動作するように校正するために使うのが、超音波探傷用試験片になります。いわば、「超音波のものさし」といった、品質基準のもととなる重要な製品です。

昭和製作所の業務と強みとは

仕事の流れについて教えてください。

舟久保氏:当社の製品には、タービン用の特殊ピンなどの量産品が一部ありますが、ほとんどの製品は多品種少量生産になります。

材料をお預かりして、加工して、試験をするためにお客様にお戻しするという仕事の流れです。ほとんどが右から左へスムーズに流れるものではなく、当社が創業以来培ってきた研究開発の経験を活かして、お客様が求める製品を都度製作しています。

昭和製作所の強みを教えてください。

舟久保氏:研究開発の能力はもちろんですが、仕様書上に現れる「見える品質」だけでなく、仕様書上に現れにくい、「見えない品質」を拾って製品に表現する技術力が強みです。当社の「見えない品質」への対応能力を評価いただいている既存のお客様に対しては、他社の参入障壁が高い状態になっていますが、逆に言うと、新規のお客様に対する当社の参入障壁も低くはないです。

「見えない品質」とはどういうものでしょうか。

舟久保氏:当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、試験片を使ってデータを取った時に、適切なデータが取れることが重要なのです。試験片を製作する際に、加工時の熱や応力によって材料に負荷をかけてしまうと、材料の状態が変化し、お客様が適切なデータを取れなくなってしまうため、状況に応じた適切な加工手順が必要になります。こういった加工手順は仕様書に表現されていないので、独自のノウハウが必要になります。
このような仕様書上に現れないお客様が求める品質を、「見えない品質」と考えています。

新規顧客・市場の開拓として、営業活動にも力を入れていると伺いました。

舟久保氏:はい。活動の一つとして、2019年ごろから営業会議を見直ししました。
月に2度、営業成績を見ながら計画と実績を確認しています。実績が悪い場合には、リカバリ策を検討し、逆に実績が良かったら何が要因だったかを分析するようになりました。
営業担当は4人ですが、仕事を取ってくる能力が高い社員には、セールスマイスターという新しい役職を設けるなどして、本人の特性を鑑みながら適材適所のマネジメントを行っています。今後は、新規顧客に対する参入障壁を超えるための営業活動を実現していきたいです。

歴史に裏打ちされた、確かな技術力を有する昭和製作所。順風満帆に見える会社運営ですが、危機もあったそうです。第二回は、会社に訪れた危機に対してどのように対処していったか、そのポイントを伺います。


【企業情報】
業種   金属製品・非鉄金属・重電、産業用電気機器・輸送用機器に関する設計及び製作

設立年月          1952年8月

資本金              25百万円

従業員数          42人

代表者              舟久保 利和

本社所在地      東京都大田区大森西2-17-8

電話番号          03-3764-1621

公式HP           https://showa-ss.jp/

この記事の著者

齋藤宏晃

齋藤宏晃

中小企業診断士 2021年中小企業診断士登録。神奈川県在住。3児の父。 得意分野は製造業×管理会計。日本の産業を盛り上げたい想いで、プロボノを中心に診断士活動を行う。

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