自社に必要な人材を採用するための「設計図」4つの視点(スティミュラス・ビジネスデザイン 北田健太)

自社に必要な人材を採用するための「設計図」4つの視点

新型コロナウイルス感染症の影響によって、世の中の働き方やライフスタイルに関する考え方が多様化しています。そうした中、「採用」にまつわるご相談をいただく機会が増えています。具体的には、従業員の新規採用が難しいという悩みや、採用してもすぐに辞めてしまうという悩みです。

特に、従業員の新規採用は、職場づくりにおいて入口のステップであり、採用における失敗の代償は大きいものです。従業員の採用にあたっては、求人広告の掲出や採用面接、採用後の教育、パソコンの貸与などのインフラの整備、社会保険の整備などの様々な対応が必要であり、多くの時間と費用を要します。加えて、経営者が抱える悩みのジャンルとして、人間関係など「人」に関するものが多い状況を鑑みると、職場づくりの入口にあたる「採用」のステップは重要な意味を持ちます。

そこで、本コラムでは職場環境整備の入口にあたる「採用」の視点から、採用活動の精度を上げるターゲットの具体化についてのポイントをお伝えします。

目的を言葉にする――なぜ人材を採用したいのか?

まず始めに確認したいことがあります。それは、「なぜ人材採用をしたいのか?」を明確にすることです。これは採用活動に限った話ではなく、経営における全ての活動は「なぜやっているのか?」すなわち「目的」を明確にする必要があります。

冒頭でお伝えした通り、採用活動には多くの時間と費用を要します。よって、曖昧な目的で採用活動を開始するのではなく、目的をはっきり言葉にすることから始める必要があります。

具体的には、会社をどうしていきたいのか、そのために会社には何が足りないのかを言葉にしていくことで、採用したい人材像の具体化につながり次のステップを進めやすくなります。

ターゲットを具体化する――どんな人材を採用したいのか?

目的を明確化できたら、次のステップは採用したい人材像を具体化すること、すなわちターゲットを具体化することです。いわゆる「設計図」づくりです。このステップが曖昧になってしまうと、後々の採用広報で伝えるべき内容や選考基準も全て曖昧になってしまうため、とても重要なステップです。

ターゲットの具体化については、以下の点を言葉にすることをおすすめします。

  1. 役割は何か?

例えば、皆さんが野球のチームをつくって真剣に勝ちたいと思ったら、チームメンバーを募集する際に「誰でもいいので応募をお待ちしています」とするでしょうか? チームに投手が不足していれば、投手を募集します。さらに、先発投手がほしいのか、中継ぎがほしいのか、抑えがほしいのか、求める役割も異なるはずです。

人材採用も同じで、どんな役割の人材が必要なのかを具体的に定義する必要があります。年齢はもちろん、長期的に育成して将来の幹部候補生となりうる担当者クラスの人材を雇いたいのか、採用後の早い段階で経営幹部として力を発揮してほしい人材を雇いたいのか。

雇いたいポジションを具体化することで、どういった媒体で広報活動をすれば効果的なのかを検討でき、ターゲットが魅力的に感じるメッセージを検討することにもつながります。

  1. 達成してほしい成果は何か?

いつまでにどのような成果を期待したいのかを言葉にしましょう。半年以内に1人で〇〇工程を担えるように成長してほしい、1年以内にロス率を●●%低下させる検査の仕組みを導入してほしいなど、時期も含めて検討します。応募する側からすると、採用された後に何を期待されるのかが明確になりますので、意欲的な人材を引き寄せたい場合に有効です。特に、早期に経営幹部として力を発揮してほしい人材を雇いたい場合に重要です。

  1. 備えていてほしい特性は何か?

積極性、分析力、粘り強さといった、採用したい人材が備えていてほしい行動特性を言葉にします。これらをリストアップすることで、選考時の書類選考や面接の際に、候補者のどこを観察すれば良いのか、どんなエピソードを質問によって確認すべきかが明確になります。

  1. 合致してほしい企業の文化は何か?

採用後にパフォーマンスを発揮させ、離職率を下げるためにも大切な項目です。いくら能力を見込んで採用したとしても、その人材が職場の文化や雰囲気になじめなければ、能力は発揮できないものです。よって、現在の職場の文化や雰囲気を言葉にし、選考の過程で候補者が合致しそうか確認する必要があります。

職場の文化や雰囲気を知るためには、現在働いている社員の皆さんに対して「うちの会社の雰囲気を表す言葉を挙げてほしい」と問いかけてください。一例ですが「堅苦しくない」という言葉が多いようでしたら、採用候補者がその雰囲気に合致しそうか、面接の際に観察することができます。

 

以上1〜4の項目をもとにA4用紙1枚程度にまとめ、人材採用における「設計図」をつくることで、採用ターゲットが具体化し、採用広報へ活用したり、選考基準へ活用して面接時に確認したりすることができます。また、複数名で選考活動をする際には、認識の摺り合わせに活用することができ、採用したい人材像をブレずに捉えることができるのです。

自社にふさわしい人材を狙って採用する

もし「来るもの拒まず」の採用で良いのであれば、ここまでする必要はないでしょう。しかし、採用失敗の代償は大きいものです。曖昧な目的や曖昧なターゲットの下に行われる採用活動では、採用後に活躍できる人材を雇えるのか、長期に渡り定着させられるのかは、残念ながら運任せになってしまいます。

貴重な時間と費用をかけて行う採用活動だからこそ、採用の目的を明確にし、自社にとってどのような人材を採用すべきなのかを定義することで、採用活動の精度を高めるべきではないでしょうか。

この記事の著者

北田健太

北田健太中小企業診断士

小規模企業・店舗経営者のための「職場の在り方」プロデューサー 「人間には誰しも魅力がある! 魅力ある人間が思う存分チカラを発揮できる職場を増やすことで、仕事から充実感を得る大人を増やし、日本を明るくする」という想いの下、スティミュラス・ビジネスデザインを起業。 経営者が持つ「想い」の言語化を軸に、人柄や強みといった「魅力」の活用を通して、燃え尽きずに燃え盛る働き方・職場づくりをプロデュースしている。 飲みニケーションを愛しており、お酒の場で人の話を聴きながら魅力を感じるのが趣味だが、コロナ禍で日々物足りなさを感じている。

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