製品開発を実現するために(株式会社林原コンサルティング 林原 敏夫)

製品開発を実現するために(株式会社林原コンサルティング 林原 敏夫)


付加価値のある製品

「付加価値」とは何でしょうか?

辞書等によると表現はいろいろありますが、大きくは2つの意味で使われています。

  • 生産額から原材料費・燃料費などと減価償却費を引いたもの。
  • 商品やサービスなどに付け加えられた、独自の価値。

前者は財務の観点で使われることが多く、後者は「付加価値を高める」という文脈で使用し、顧客の観点で説明されることが多いものです。今回は②の観点で述べていきます。

一般的に企業はBtoBであれBtoCであれ、競合企業ではなく自社を顧客に選んでもらう必要があります。中小企業は下請けとなることが多く、顧客に選ばれるための手段としてQCDを追求せざるを得ない状況があるかもしれません。QCDとはQuality:品質(安定した品質、不具合のないこと)、Cost:コスト(顧客から見ると価格)、Delivery:納期(納入までの期間と数量)です。

 

しかし、製品に不具合がないこと(Q)は大前提として、価格(C)と納期(D)だけで競合に打ち勝つことを目指すと、原価割れの価格設定や短納期のために大量の在庫保有をする等ということになり、競合に勝つ前に自社が倒れてしまいます。そこで、QCDだけを追求するのではなく「付加価値」を実現できる自社製品の開発を検討してみてはいかがでしょうか。

 

これまで製品開発の経験が少ない中小企業の場合、ノウハウが乏しくハードルが高く感じられるかもしれませんが、以下に開発の基本的な考え方と製品開発のポイントをご紹介しますので、参考になさってください。なお、製品開発の前にはニーズの調査が必要ですが、ここではそれを終えた状態と仮定します。

開発の基本的な考え方:製品の多くは既存技術の組合せ


何もない状態から製品を開発しようと考えるとなかなかうまくいきません。世の中の新製品をよく見ると、新製品とは言え既存技術を使ったり組み合わせたりした製品であることは実感できるのではないでしょうか。過去に多く販売されたビデオ内蔵型テレビ受像機は、テレビとビデオを組み合わせた商品であり、既存技術を組み合わせた分かりやすい例です。

開発したい製品を機能や性能等の側面から考察し、既存技術を応用できる部分とそうでない部分に分け、既存技術では足りない部分の開発に注力する、これが製品開発の実現化の王道です。

 

製品開発の3つのポイント

製品の多くは既存技術・製品の形を変えたもの、または組合せであることを理解していただけたと思います。

次は、製品開発の実現化において大事な3つのポイントを説明します。

(1)技術(技能)

製品開発の多くが既存技術の組み合わせと言っても、既存技術の知識やそれを取り扱うができなければ実現はできませんし、その発想も浮かびません。技術は日々進歩し、数年前には思いもつかなかったようなことが、今では当たり前のようにできることもあります。身近な例ですと体温の測定方法です。非接触での体温の測定方法をどれほどの人が想像していたでしょう。しかしこれも、温度センサ、表示器、電池、プラスチック等の容器等の既存技術の組み合わせです。

開発しようとする製品とは異なる分野で既に使われている技術を取り入れられる可能性もありますので、常にアンテナを広げ情報の受信感度を高めておきましょう。

(2)物質(素材)

物質(素材)も技術と同様に進歩します。以前にはなかった特性を持つ素材も現れてきます。

例えば純金属は元素なので特性は変わりませんが、合金は混ぜる元素の種類や割合、作り方を変えることで、新しい特性の合金ができたりします。有名なところでは、鉄と炭素の鉄鋼材料、鉄とクロムまたはニッケルの合金のステンレスなどがあります。

また近年では鉄と銅の合金で、鉄の高度・強度と銅の熱伝導性・導電性の特性を合わせ持つMTA合金も存在します。

このように物質(素材)も進化しているので、最新情報を得ておきましょう。

(3)発想

料理でも組み合わせに感心することがあると思いますが、どのようにその組み合わせにたどり着くのでしょうか。既存技術の組み合わせを検討する際は、やみくもにすべてのパターンを検討することは現実的ではなく、またパターンのすべてを思いつくことも不可能です。したがって、理論的に組み合わせを考える方法がありますが、同じくらい有効な方法としてふとした思いつきがあります。偶然浮かんだ発想には重要なヒントが隠れていることがあるので単なる思いつきと片付けず、アイデアのひとつとして検討してみましょう。

この記事の著者

林原敏夫

林原敏夫林原敏夫 株式会社林原コンサルティング 代表取締役/中小企業診断士

熊本県出身。熊本大学工学部卒業後、株式会社東芝でエンジニアとして社会インフラ関連の製品開発、生産管理に従事。東芝在職中から中小企業診断士の資格を活かして、業務改善支援や事業再生支援に従事。現在は独立し、製品開発・利益向上・事業承継/M&Aの3本柱を中心に活動中。

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