一度決めたら諦めない。特徴ある精密部品と自社ブランド品で不況のない会社へ (ザオー工業 代表取締役社長 鈴木国博様 インタビュー①)

安心感と信頼感のある3本の柱はこうして生まれた

ザオー工業株式会社は、金属プレス部品製造と銘板(ネームプレート)を製作する精密プレス部品製造会社である。創業当時からのネームプレート印刷技術を生かし、金型製作・プレス加工・シルク印刷ネームプレート製作までの一貫生産が可能な都内でも稀有な存在である。最近は自社ブランド品として、消費者向けのザオーブロックの製造販売にも注力している。第一回は、会社の事業内容やこれまでの沿革、培ってきた特徴・強みについてお話しを伺った。

ザオー工業株式会社 代表取締役社長 鈴木国博氏

 

お客様のご要望に応えることで事業を展開する

貴社の事業概要や、創業からの沿革を教えてください。

鈴木氏:最初は私の父が、銘板(ネームプレート)の印刷加工で創業しました。
当時はソニーさんや東芝さんのテレビやビデオデッキの銘板等、様々な銘板を製作していました。その後お客様のニーズに合わせて銘板だけでなく金属プレス部品にシフトしていきました。金属プレス部品には金型が必要で、当時は銘板の金型は協力工場に作成してもらっていましたが、金型を作れれば金型の仕事にもつながるということで当社に金型部門も設置しました。その後、プレス加工でも、加工する鉄やステンレスの厚みが増すにつれ、大きなプレス加工機を少しずつ増やし、それに合う金型製作の技術も蓄積してきました。このようにして現在では、金型を作って、プレス加工して、印刷まで行う3本が柱となっています。

 

これまでの技術の蓄積に関して、お客様とのエピソード等はありますか。

鈴木氏:ある会社のコーポレートカラーを施したアルミ製品のプレス製作依頼を受けました。カラーアルミ材は既製品でも取り扱った経験はあったのですが、既製品では裏面にアルマイトメッキ等の電気の通らないメッキをしており、この製品では導電性が求められていたので工夫が必要でした。さらにこの製品は曲げ部分に高い精度が求められたのですが、メッキ塗装した製品を90度曲げるとクラックが起き不良品となってしまうので苦労しました。そこで、材料メーカーと何度も協議し、金型技術も駆使して、90度曲げてもクラックが起きない材料を開発したのですが、なんとこの材料は最初注文するのに2トン買わなければならないものでした。この材質なら必ず製品を作れるという保証もない中で2トンを購入するのは勇気のいる冒険でしたが、そのような先行投資をしながらカラーアルミの加工を始めました。このカラーアルミも現在では当社の特徴の一つで、金型製作、プレス加工、シルク印刷及びその材料もしっかり選定してお客様のご要望に合う製品を供給しています。

カラーアルミ製品(左)

 

企業によっては金属プレス加工は人件費の安い海外に生産移管する話も聞きますが、貴社の金属プレス加工の特徴を教えてください。

鈴木氏:当社が行う金属プレスは単発プレスが中心です。単発プレスとは、右手で材料を入れて加工して、左手で加工した材料を取り出す、という手の動きで加工するアナログな方法です。ロット数はそれほど多くありません。一方、海外生産が進んでいるものは、自動化が進んだラインで大ロット生産するもので、順送プレスと呼ばれます。

順送プレス品はロット数が多いので、一個あたりの輸送費なども低くなり、工賃も安いので海外生産に適しています。ですから企業によっては大ロットの順送プレスは海外、小さなロットは日本という感じで使い分けているかもしれません。そのような状況でも、当社は単発プレスの小ロットで銘板を製作してきたので外観の製品を得意としたプレス屋です。銘板は必ず人目につくので外観を気にしなければなりません。一般的なプレス製品はそこまで外観が問われないケースも多いですが、当社は外観へのこだわりも特徴です。一方で、単発プレスに固執する必要もなく、最近ではお客様のニーズに合わせて、完全な順送プレスの設備までは足りませんが、半自動のラインも一部取り入れています。いずれにせよ外観にこだわった製品作りを心がけています。

 

単発プレスの加工現場


業種   金属プレス部品製造

設立年月          1968年3月

資本金              10,000,000円

従業員数          18人

代表者              鈴木国博

本社所在地      東京都足立区関原2-11-26

電話番号          03-3848-2301

公式HP           https://zaoh.com

この記事の著者

大島隆裕

大島隆裕中小企業診断士

2022年中小企業診断士登録。東京都中小企業診断士協会城東支部所属。大学卒業後、化学品商社に入社し、法人営業、財務部門、海外子会社への出向等を経験。現在はバックオフィスの管理全般業務に従事するとともに、企業内診断士として支援活動・研究活動を行っている。

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