顧客が満足する粉砕品を提供することを喜びとする粉砕機メーカー(槇野産業株式会社 槇野社長インタビュー③)

危機を乗り越えたあとに得た販路開拓のチャンス

葛飾区東四つ木にある槇野産業株式会社は粉砕機メーカーでありながら、顧客が理想とする粉という最終製品を顧客とともに考えながら提供する課題解決型に近い企業である。本特集では槇野産業株式会社の4代目社長 槇野雄平氏にお話を伺った。第三回目の今回は、コロナ禍やウクライナ情勢という外部環境の変化の中で、苦労を乗り越えた後に、販路開拓でチャンスを得たユニークな取り組みについて教えていただいた

主力製品の一つである洗浄性を高めたサニタリーリボンミキサー

様々な外部環境の変化による苦労について

コロナ禍やウクライナ情勢などでご苦労されていることはありますか?

槇野氏:部品の価格が2~3倍に高騰しました。インバーターモーターとか電子部品が買えなくてネットオークションで購入していました。通常の納期が3ヶ月程度の物でも、その時の納期は12ヶ月以上と言われて唖然としました。今でも容量の大きい電子関係の部品が一年半納品されていません。酷かった時期には、海外で作っているので工場の配電盤にあるボタンがないから制御盤が作れないとか、モーターと端子に繋げるケーブルがないと言われたこともありました。あるいは、機械を輸入した後に、お客様から「工場が建材不足で建たないので納品を半年延期してください」と言われたこともありました。しかし、良い傾向として今は注文がちゃんと来るようになったのです。チャイナリクスもあり、国内回帰で工場を建てたいという需要が高まり機械の注文が来るのですね。ただ、受注は増えたものの部品の納期がコロナ前までは戻っておらず受注残が増えて工程管理は大変になりました。現場で間違って先に部品を注文してしまうとスペースもないところに部品が届きますから、置き場所は四苦八苦しています。

 

資金繰りが大変そうですね。

槇野氏:大変です。コロナ融資も利用したのですが、一時期はそれを少しずつ取り崩していました。今は少し落ち着いてきて、出荷や入金のサイクルが正常に回りつつあるので、なんとか暮らせています。これから割賦や一括の返済もあるので、資金繰りを気にしながらの会社経営ですね。 

展示会における独自の工夫で販路開拓

先日、東京ビッグサイトで開催されたFOOMA JAPAN 2023(一般社団法人 日本食品機械工業会主催)(以下、展示会)に出展され、機械だけではなく、たくさんの粉砕品のサンプルを置かれていましたね。

槇野氏:展示会なので、分かりやすく表現することも大事です。うちの機械はどうやって動くのか機械を見ただけでは分かりづらいので、機械の横に動画も流して見てもらっています。人によっては雷おこしを砕いたぐらいのボソボソのものも粉だと感じる人もいますし、それは粒だと感じる人もいます。ですから粉砕品のサンプルを見せると、「あっこれぐらいが良いな」とすぐに具体的な話をできるので、展示会はなるべく視覚で分かるようにしています。また不思議な事ですが、同じ原料でも産地が違うと結果が異なったりするのです。例えばお米の粉砕と言っても、お米の産地・種類によって粉砕粒度が変わったり、「原料によっては粉砕できる、できない」などがあります。営業部員の数も限られるので、お客様とサンプルを一緒に見ながらすぐにイメージを合わせて引き合いをいただけるように工夫しています。

 

機械の説明の動画では社長自ら出演されていました。ツールの内製化へのこだわりはありますか?

槇野氏:動画は綺麗に作りすぎると、パワーポイントのスライドを流したようになって他社との差別化も含めてメッセージが伝わりにくいと考えています。私どもは音感までお客様に伝わるように粉砕機の音もわざと入れています。そういうこだわりなどもありますから、自分で作った方が速いのです。私自身のカメラ好きを仕事に生かして楽しんでやっているので、苦労だとも思っていませんし、わざわざ外注でやってもらう必要もないかなと思っています。自分で作る事で、振り返りにもなりますし、勉強になる事は沢山あります。展示会で流している動画も社員が出てくれていたのですが、今は社内の流れで、全て自分で出演し解説してしまっているので、複数のモニタで再生していると動画の音が被って両方で私が「こんにちは」と挨拶したりして、恥ずかしい思いもします(笑)。

東京ビッグサイトで開催されたFOOMA JAPAN 2023にて出展の様子

Webマーケティングの活用による販売促進

展示会からの引き合いと、営業部員が受注を取ってくる比率はどのようになっていますか?

槇野氏:今回の展示会では、コロナ前と異なり、実際にサンプルなどをお持ちになって、立ち止まって話をして頂いたお客様が多く、早速テストの話になっている案件も何件もあります。コロナ禍の影響もあったので、正確な比率は分かりませんが、コロナ前では名刺交換をした後に20件ぐらい電話してもゼロだったりすることもありました。普段は基本的にホームページを見て電話をかけてくるお客様が多く、ほかにも問い合わせフォームに毎月大体30件ぐらいは問い合わせがきますね。

 

販売促進にデジタルを有効に活用されていますね。

槇野氏:私が自らホームページを作って、SNSによる発信もしています。FacebookやYouTubeのサムネイルも全部自作しています。お客様の機械を見つける方法も昔は展示会で回って見つけた会社に連絡するケースが多かったですが、若い人は展示会で探すよりもまずはネット検索します。検索結果の上から順番に電話するので、検索結果で上位に表示されないと箸にも棒にもかかりません。検索順位とお客様からの電話の数は連動していて面白いですよ。順位変動に関わるSEO対策も試行錯誤しながら自らやっています。YouTubeもたくさん出していますので、多くの製造業の方から見れば検索順位の上がり方が不思議に思われているのではないでしょうかね。

 

ホームページの効率を上げるために特別な対策をされているのでしょうか?
槇野氏:そうですね。ページのアクセスランキングも全部見ています。最近はGoogleアナリティクスでキーワードなどが拾えなくなり分析にやや不便を感じていますが、記事をアップしたら機械のページに全部リンクを貼るようにしたり、古くなったページには動画を貼ってみたりとか、ちょっとでも更新するように心がけていますね。

Webマーケティングの重要性を力説する槇野社長

将来に向けたビジョン

5年後や10年後の将来の展望やビジョンを教えて下さい。

槇野氏:近年頻繁にニュースにもなっていますが、現在は物価高の中、製造業などの現場の人の給料は安いところが多いので、従業員が楽しく生活できるような給料水準までは持って行きたいですね。あとはワークライフバランスですね。仕事だけだと視点が固まってしまうので、趣味を持って普段の視点を広げてもらいたいと思っています。話の幅も広がりますし、新しい視点を仕事に取り入れたてもらいたいと考えています。普段の生活の中で子供と買い物行った時に「うちのお父さんはこういう商品を作る機械を作っている会社で働いているんだよ」と笑顔で話せるようになってもらいたいですね。そのために現場の古い機械の更改や、営業支援が可能なシステムの導入などやれることは沢山あると思いますので経営改善したいと考えています。


業種   粉砕機メーカー

設立年月          1943年6月8日(株式会社改組)

資本金              20,000,000円

従業員数          31人

代表者              槇野雄平

本社所在地      東京都葛飾区東四つ木2丁目11番8号

電話番号          03-3691-8441

公式HP  https://www.mkn.co.jp/

 

この記事の著者

栗秋 幸裕

栗秋 幸裕中小企業診断士

2022年1月中小企業診断士登録,東京都中小企業診断士協会城東支部所属。中央大学経済学部国際経済学科卒業後,大手通信業で約10年間営業を経験した後,本社で事業企画や委託会社運営を経験。2005年から維持しているITコーディネータと両立しITで経営の効率を目指す企業の支援をする企業内診断士として活動中。

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