顧客が満足する粉砕品を提供することを喜びとする粉砕機メーカー(槇野産業株式会社 槇野社長インタビュー②)

付加価値を生み出す従業員育成の秘訣
葛飾区東四つ木にある槇野産業株式会社は粉砕機メーカーでありながら、顧客が理想とする粉という最終製品を顧客とともに考えながら提供する課題解決型に近い企業である。本特集では槇野産業株式会社の4代目社長 槇野雄平氏にお話を伺った。第二回目の今回は、顧客の満足する粉を生み出す機材をコーディネートできる従業員育成の秘訣について語っていただいた。

長年会社を支えてきた大切にメンテナンスしながら使われている工作機械


故きを温(たず)ねて新しきを知る

ホームページで触れられている「温故知新」という言葉にはどのような思いがあるのでしょうか?

槇野氏:古い技術や過去のデータも我が社の大切な資産ですが、だからといって同じ物だけ売っていても「槇野産業はいつも同じ機械で進化がない」という評価になってしまいます。今後、まったく新しい仕組みの粉砕方式は当分出ないと思いますが、利便性が向上した改良品が他社から出てくるとうちも負けてしまいますので、洗浄性を高めてみたり、従来鉄製だった機種を全部ステンレスにしてみたりと新たな工夫はしています。また、顧客ニーズに幅広く応えるために自社の機械だけではなく、他社と協業して何か作れるのではないかと提案ができるように努めています。ですからマキノ式粉砕機だけを売っていた時代は昔です。今は新しい技術やシステムを柔軟に取り入れながらやっているということですね。例えば、粒体や粉体の自動搬送機やふるい機、破砕機などを代理店販売もしていますし、業界の様々な企業と繋がっているという感じですね。

付加価値を提案できる人材を育てる秘訣

付加価値のある最終粉砕品に関するコンサルティング力も御社の強みだと認識したのですが、個々の能力を向上させるための人材育成や従業員満足度を上げるための工夫はありますか?

槇野氏:4年程前にものづくり補助金でマシニングセンターを一台導入しましたが、利用する社員にバラつきが生じていました。そこで、20代の若い子に毎週水曜日に勉強会をやらせて、同時に人に伝える工夫を覚えてもらうのも狙いです。マシニングセンターの稼働率も日によって差がありましたので、それを平準化・活性化する狙いもありますね。時間がかかっている非効率な手作業を少しでも改善することにも役立っています。外部研修は、最近は利用していませんが、会社の時間内での研修も費用を出していますし、社内で必要な資格取得は本人にも自覚や自信にもなりますし、手当を出して取得を推奨しています。

 

社内勉強会を行い、積極活用を促しているマシニングセンター

 

人に教えるというのは、自分の勉強にもなりますし、コミュニケーションの活性化にもなりますよね。その他にはありますか?

槇野氏:以前は、名刺交換の仕方等から始めるコミュニケーション講座もやっていました。時間も経って若手社員も何人も入ってきているので、もう一回やろうかなと考えていますね。ほかにも勤続10年、20年、30年の節目に、表彰などもしています。その他には福利厚生で夏は暑気払いとしてバーベキューをやったり冬には納会としてみんなでご飯を食べに行ったりしていますね。でも最近は夏にバーベキューをやったら具合が悪くなるじゃないかと言われたりもしました。 今年は3台の冷房機が入っている工場の中でやろうかという話も考えています(笑)。

 

ホームページで「粉体業界のコンビニエンスストア」という表現を使われていますが、それを実現するためにどのように人材を育成していますか。

槇野氏:本格的な全体研修はしていませんが、今年2月には新任の営業職社員に千葉工場へ3ヶ月入ってもらい、機械に直接触れ学んだ後に営業部に配属にしました。社員間で多少の得意不得意が存在したり、他社製品は担当制にしたりしているので、社員同士で情報交換をしながらわからないことはすぐ聞くなどして補完しているようですね。

先輩が後輩を見ながら教えていくという社風が自然に受け継がれているのですね。

槇野氏:そうですね。何種類かの専門性の高い機械以外は、基本的に他の従業員に聞きながら自分で覚えていってくれているようです。工場の現場の方では、習いながら、でも、見ないと覚えませんので、その合わせ技で仕事、作業を習得しているようです。

様々な機械や部品が置かれた工場全体の様子

 

社員のITリテラシーについてはどうですか?

槇野氏:事務方の話であれば、昔は伝票や帳簿は全部手書きでしたが、今はほぼ請求書も全部デジタルに変えてできるよう進めています。また、デジタルツールに慣れる目的もあり社員全員にiPadを渡しています。月一度社員全員を集めて行う全体会議で、テーマは自由に設定しiPadを使いながら3分間スピーチをやってもらっています。デジタルツールに慣れるための入り口としての意図もありましたが、コミュニケーション能力を社員に身に着けてもらいたいという会長の思いもあります。営業ではないのに資料を細かく作る人や、写真だけ流す人などいろいろな方がいるのが面白いです。営業はお客様と話す機会がありコミュニケーション能力を高める業務上の必然性がありますが、製造現場を担当する社員も部品機械修理で出張へ行った時に、「なんかちょっとうまくやって来ました」という漠然とした報告ではなく、何がうまく出来たのか分かりやすく説明できるようにコミュニケーション能力を向上させる社内研修の一つとして実施しています。


業種   粉砕機メーカー

設立年月          1943年6月8日(株式会社改組)

資本金              20,000,000円

従業員数          31人

代表者              槇野雄平

本社所在地      東京都葛飾区東四つ木2丁目11番8号

電話番号          03-3691-8441

公式HP  https://www.mkn.co.jp/

 

この記事の著者

栗秋 幸裕

栗秋 幸裕中小企業診断士

2022年1月中小企業診断士登録,東京都中小企業診断士協会城東支部所属。中央大学経済学部国際経済学科卒業後,大手通信業で約10年間営業を経験した後,本社で事業企画や委託会社運営を経験。2005年から維持しているITコーディネータと両立しITで経営の効率を目指す企業の支援をする企業内診断士として活動中。

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