- 2022-2-8
- 取材・インタビュー
社長への道 祖父と父の跡を継ぐ決意
1962年に創業した栄商金属株式会社は、今年8月に創業60周年を迎える。幼いころ、祖父である先代社長がいきいきと働く姿に触発されて、自分も社長になることを意識し始めた同社の取締役開発営業部長 佐山友允氏。学生時代から社長になることを意識して生活を送ってきたというエピソードと、入社後の経験を踏まえて現在感じられていることについて伺った。
先代社長の仕事ぶりを見て育った
ご自身で先代の跡を継ごうと決心されたときのことを教えてください。
佐山氏:物心ついた2~3歳のころに社長になろう、社長になるんだって意識しはじめたと思います。その後ずっと社長になることを意識して生活してきました。実際のところ、子供のころは何の仕事をしている会社かはわかりませんでしたが、パーティー好きだった先代の社長が、いつもその席でお客様に感謝していて、お客様からも感謝されている姿を見ていました。また、弊社が発注の立場となる協力企業様との間柄でも、お客様との間柄と同じように、お互いに感謝し感謝されるという光景をいつも見ていました。そのような感謝の気持ちでつながっている人間関係がとても素晴らしいと思い、ぜひそういった仕事をやりたいと思うようになりました。
小学生の頃には自ら学級委員をやったり、図工の授業を他の科目以上に真剣に取り組んだりしました。卒業文集に将来の夢を書いたと思うのですが、たぶん社長って書いていたと思います。高校は工学系に進学し、選択科目は理工学部系の科目を選び、大学は工学部の経営システム工学科に進学し、経営者になるために必要な科目を履修してきました。
学業以外では、先々経営者に対して営業することを見越して、経営者が集まるゴルフ場でキャディーのアルバイトをして経営者の方々とお会いできる機会を作りました。この時の経験は本当に勉強になりました。加えて飲食店のアルバイト、ロックフェスやゴルフトーナメント会場の設営から交通整理などなど、それぞれの仕事でお客様から求められていることはなんなのか、色々な視点から考える必要を学ぶことができました。
大田区の先輩経営者の方とお話する機会がありましたが、全て社長になることを意識して生活してきたところが珍しいと言われました。
面倒見がいい諸先輩に学ぶ
ご自身が困ったときの相談相手はどのような方ですか
佐山氏:お客様対応上の技術的なことは代表をはじめ社内の先輩の他、500社を超える協力会社様の中で、その分野が得意な協力会社様に相談させていただいています。長年のお付き合いを通じて協力会社様の強みを存じていますので、相見積で選ぶのではなく、この案件にはこの会社様がふさわしいと決めて、心中するつもりでチームを組みます。
また、個人的な新規ビジネスのアイデアや機械類の選定などについての相談は、入社して初めて参加した「下町ボブスレー」のプロジェクト等で知り合った諸先輩方に相談させていただいています。自分が知らなかった業界動向などを教えていただいたり、同じ後継者ならではの悩みだったりも相談させていただいています。
発注者と請負業者という関係についての悩みごとも、諸先輩方や同級生の経営者に相談しています。弊社はどちらというと請負業者ポジションですが、メーカーポジションの会社で社長を務めている友人に、どういう考えで請負業者に発注しているのかといった話を聞いたりしたこともありました。
内容に応じて多様な相談相手が多いことはとても有難いことであり、強みだと考えています。
自社販売の難しさ
今まで難しかった仕事はどんなお仕事でしょうか。
佐山氏:国立研究法人国立長寿医療研究センターと共同開発し特許取得した、F7(エフナナ)という褥瘡(床ずれ)防止用超低圧体圧分散マットレスの製品化と販売です。褥瘡とは、寝たきりなどで自重により圧迫された部分がただれたりすることで、永らく介護現場では大変問題になっています。弊社は、より良い褥瘡予防を目指し、国立研究法人国立長寿医療研究センターの研究チームと共同で長期間にわたり技術開発をしておりました。
寝ている間に体にかかる圧力を分散することは褥瘡を予防するだけではなく、健康な方が使用した場合には快適な睡眠を確保できます。最近は寝具売り場などで耐圧分散性能を謳った商品が増えてきていますね。
弊社の開発したマットレスにはマイコンが内蔵されており、利用者の体型や寝姿に合わせてバランスを調整し超低圧を実現し、現在販売されている大手メーカーの類似マットレスなどと比較しても、優れた体圧分散性を実現したと自負しているとても自信のある製品です。しかし、販売ルートを持たない弊社が介護マーケットにマットレスを販売するには数々の障壁がありました。これまで多くの商品の製造サポートに携わっていましたが、商品を自社が中心になって販売するという経験はありませんでした。このプロジェクトを通じて、新規販売ルート確立に向けた今までと違った形の営業活動など、たくさんのことを勉強させていただきました。
そんな中、商品開発で問題解決をしてほしいと、美容業界のお客様からご相談をいただきました。設計の見直しからプログラム開発、そして量産化までを弊社が中心となりチームでお客様の要望を具現化し、販売開始までこぎつけました。このように近年は、商品化をしようと開発をしているものの、何かしらの障壁で悩んでいる方からのご相談が増えており、いくつものプロジェクトに声をかけていただき、弊社のネットワーク企業の中から最適なチーム編成を構築し対応しています。
自社が中心となっての商品販売において、障壁に直面された時のお気持ちはいかがでしたでしょうか。
佐山氏:今まで大手メーカーさんからの決まった仕事を言われたままに請けていて甘えていたな、そこから脱却して最終消費者に近い領域で製品開発していかないと先はない、と強く感じました。
また、契約締結の交渉について海外ベンチャー企業に勤める友人や自分で起業された方々の話を伺うと、仕事を請ける前に契約書の内容をしっかり確認・交渉しているという話を聞きました。自社に不利を強いられるような仕事は請けない方がいいというスタンスでした。今まで弊社は相手の契約書式を受け入れることが当たり前で、1、2行修正してほしいということとがあっても、修正できないと言われてしまえばそのまま契約してしまうことが多かった。相手の契約書式を受け入れないと仕事をもらえないと思い込んでいましたので、製造業と別の業界ではかなりギャップがあることを知りました。
ものづくりの技術面のネットワークだけでなく、法務などの専門家とのネットワークも必要だと実感し、弁護士等の仕業の方たちと交流を増やして気軽に相談・協力体制を作りました。
業種 電気機械器具製造業
設立年月 1963年4月12日
資本金 10,000,000円
従業員数 10人
代表者 代表取締役社長 佐山 行宏
東京事業所 東京都大田区下丸子1-17-18
栄商ものづくりLAB.
電話番号 03-3759-1207
公式HP https://www.eisyo.co.jp