地域を支える曲げ加工のプロフェッショナル 〜川端製作所 川端修敬社長インタビュー②

コロナ禍で踏み出した一歩

川端製作所は地域の曲げ加工を一手に担う町工場である。大田区内での曲げ加工のニーズに応え幅広くものづくりに関わってきた同社は、昨今のコロナ禍の影響を受け新たな一歩を踏み出そうとしている。第2回は、コロナ禍での新たな取り組みと苦悩についてお話を伺った。

コロナ禍での厳しい経営について語る川端社長

 

コロナ禍での取り組みと苦悩

現在はどのような製品の加工をおこなっていますか。

川端修敬社長(以下社長):曲がった形状を有する製品を作る上で曲げ加工は必須で、用途は多岐に渡ります。例えば、自動車、産業用装置、建築関係やモニュメントなど、さまざまありますね。曲げ加工は、製造工程のごく一部にしか使われないので、依頼する企業は内製で曲げ工程を持つよりも外部に依頼する方が効率的なんです。そのため、多様な企業のさまざまな製品の曲げ加工を一手に引き受けています。また、曲げ加工を専門で行なっている会社が少ないことも理由の1つです。嬉しいことに、近隣地域では、「曲げと言ったら川端製作所」と言っていただけており、多数の企業の製品の曲げ加工を担っています。詳しい用途は各企業の機密に関わるため、最終製品の情報は開示されないことも多く、正確には把握できませんが、大きく分類すると機械関係の依頼が半数程度の割合を占めます。

 

コロナ禍での影響について教えてください。

 社長: 他社と同様に弊社でも影響がありました。年間で売上が3割程減少しましたね。月ベースでは最大5割ほど下がる月もありました。売上減少の理由は半導体や電装品の不足によるものです。弊社は製品の外側の部品の加工に関わることが多いですが、半導体や電装品などの内部の部品がなく受注が減少しました。売上の半数が機械関係であるため、影響は大きかったですね。ただ、現在は各社の生産が平準化し回復基調にあります。

大小さまざまなサイズに対応した曲げ加工工程

 

コロナ禍において、新たに始めたことはありますか。

社長:1人の社員が複数の加工装置を使えるよう教育の仕組みを作りました。弊社では3種類の装置で加工するのですが、技術習得の促進・習熟や作業の効率化を図るため、コロナ禍以前は各装置に一人ずつ配置する専任担当制を採用していました。しかし、それでは1人でもコロナウィルス感染症に罹るとその加工が滞るリスクがあるため、少なくとも1人で2台の装置を動かせるようにしました。コロナ禍で売上が減少している中で、さらに減らすわけにはいかないですからね。

 具体的には、3人の社員の中で、教える人と教わる人で互い違いになるように3組のペアを組み、それぞれが担当する装置で教えあう仕組みです。日々の加工は止められないので多くの時間を教育に割くことはできませんが、最低でも月に1度は時間を設けています。もともと長い時間をかけて教育しても習得までに何年もかかる技術ですから、進捗状況はまだ道半ばですが、継続的に装置を触ることが大事ですので今後も継続していきます。

また、加工事例の発信のためにInstagramも始めました。ホームページは10年ほど前に作成しましたが、更新の手間がかかり十分には使いこなせていませんでした。

Instagramは商談時に加工事例をお見せするカタログとしても機能しており、とても重宝しています。
それに加えて、予想外に新規顧客の獲得もできました。これまでに4件の新規受注があり、遠方では、三重県から受注いただきましたね。自動車関係の部品で、同一部品内に多くのアール形状を有する複雑で難易度の高い加工ができる工場を探していたそうで、Instagramの加工事例を見てご相談いただきました。

宣伝効果を創出しているInstagram

https://www.instagram.com/kawabata_seisakusyo_mage/

 

コロナ禍での経営に対する、今の気持ちを教えてください。

社長:「苦しいな」の一言に尽きますね。将来を楽観視できない状況が苦しいです。コロナ禍による売上減少もありますが、高齢化や後継者不足により大田区の町工場自体が減少していることも苦しさの一因です。何もしなければ確実に売上は低下するので、長期的な視点で取り組みを考えなければいけないという切迫感がありますが、人員や生産キャパを考えると踏まえるとなかなか動き出せないのが実情です。例えば新規顧客の開拓を行うにも、受注拡大の余地が少なく現実的ではありませんし、自社で遠方への配送対応ができないため、条件に合致する新規顧客を獲得することも難しい状況です。

社長として、長期的な視点での事業計画を策定しなければいけませんが、現場作業から、配達、営業、見積りをやる日々で、時間が取れないですね。あと一人でもいれば違うかもしれませんが、簡単に人員を増やす判断はできませんからね。まずは、事業計画の立案から始めようと考えています。


業種   金属加工業

設立年月          1960年2月12日

資本金              300 万円

従業員数          7人

代表者              川端 修敬

本社所在地      東京都大田区南六郷2-4-15

電話番号          03-3739-1211

公式HP           http://www.kawabata-seisakusyo.com

この記事の著者

佐々木剣太

佐々木剣太中小企業診断士

2022年中小企業診断士登録。神奈川県診断士協会所属。精密機器製造業にて、設計・開発プロセスのデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進。趣味の家庭菜園においてもセンシングとAIの構築によるDXを推進中。日々、生産性を高めることを追い求めている。

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