お客様の願いに応えて、従業員と共に成長していく(株式会社松浦製作所 松浦社長インタビュー第3回(最終回))

従業員と共に歩んでいく

株式会社松浦製作所 松浦社長

第三回目は、株式会社松浦製作所の代表取締役である松浦貴之さんに従業員への思いや、雰囲気がよく自由闊達な社風のために行なっていることをうかがった。さらに松浦製作所の将来の展望についてもお話をうかがった。

 

自由闊達な社風

従業員の方それぞれが専門分野をお持ちなのですか。

松浦氏:基本的には多能工になってもらいたいので、一人ひとりが複数の機械を扱えるよう業務を配分していますから、ひとつの機械しか使えない社員はいません。ですが、得手不得手はありますので一通り機械を使ってもらった後に、どの機械をメインにやってもらうかを割り振ります。

 

今後、従業員の方にはどのような役割を担ってほしいですか。

松浦氏:現場のスタッフにやってもらっているのは加工と検査で、営業や見積もりなどを私が一人で担当しています。この会社の将来を見据えると、経営の面で私の右腕になる人材が必要になってきています。現場以外の仕事をスタッフに教えていくことが人材育成の課題です。

しかし、従業員が仕事に取り組む様子を見ていると現場の仕事に没頭させてあげたいと思ってしまいます。仕事中におしゃべりに夢中になっているように見えるのですが、話の内容を聞いてみると真剣に仕事の話をしています。3、4人で集まって「この加工はこうした方がいい」とか、みんなで知恵を出し合って仕事をしています。従業員が自主的に、仕事を進めるため打ち合わせや進捗管理を行なっているのです。私はこの「自主的にやっている」ということが理想的だと思っています。この社風を大切にしたいので、現場以外の仕事を頼みたくないと考えてしまうのです。

妻が週に二度ほど会社に顔を出すのですが、会社の雰囲気がよいと、率直な感想を言ってくれます。今の明るい社風を大事にしたい、そう思うわけです。

 

社長と従業員の方とはどのようにコミュニケーションを図っているのですか。

松浦氏:朝礼でのコミュニケーションが中心ですね。

あまりトップダウンのようなことはやりたくないので従業員が自主的にワイワイやっている中にはあえて入っていかないようにしています。あえて入っていかないことが、従業員の自主的な活動を引き出すことになっているのかもしれません。

ある従業員は年休を取って自分で東京インターナショナル・ギフト・ショーに行って色々なことを吸収してきたり、新しい横のつながりも作ったりして仕事に活かしてくれています。

他にも従業員からこういうサンプルを作りたいとか、こういうデザインの腕時計のケースを作ってみたいという話が自然に出てきます。腕時計のケースを作ってみたいという従業員からの話をきっかけにして東京都中小企業振興公社の多摩支社の方とケースのサンプルを作りましょうという話にもなりました。出来上がったサンプルは、来年2月に開催される第26回おおた工業フェアに出品する予定です。今は出品に向けて従業員がいきいきとデザインに取り組んでいます。

ツイッターも従業員の一人が担当していますが、潜在的なニーズを持っているけれども工業的な知識がなく、これまでつながる機会がなかった方と町工場が直接つながって受注する仕組みを作りたいと考えているようです。私は応援しつつもなるべく口は出さないようにしています。

加工の様子

従業員に対する私の役目は、彼らが自由闊達に活躍できる環境を用意して、従業員から上がってきた思いをできる限りかなえてあげることだと思っています。

 

松浦製作所のこれから

経営上のこれからの夢はありますか。

松浦氏:今の社風を維持しつつ、経営規模も私の目の届く範囲でやっていきたいので従業員数も多くなくていいと考えています。弊社はこれからも大量生産を目指すのではなく、少量でもいいものを作っていきたいと思っています。

製品は、工芸的なものをどんどんやりたいと思っています。個人のお客様が興味を持って手に取り喜んでいただける製品を作るのが夢です。個人に密接なものであれば、そこには松浦製作所の名前が出なくてもいいとさえ考えています。例えば、軽い、硬い、金属アレルギーが出にくいなどのチタンの特性を活かしたオーダーメイドのキャンプ用品なども、ニーズがあればやってみたいですね。

そのほかにもうひとつ夢があります。それは週休3日制です。試しに短期間だけでもやってみようかなと10年以上前から思い、従業員にも言っていますが、踏み出せないでいます。

 

将来の方向として海外進出は考えていらっしゃいますか

松浦氏:積極的に進出したいと考えています。大田工業連合会さんや大田産業振興協会さんなどから海外視察のお話をいただいた時にはなるべく参加して、海外の展示会に出展したり商談会に出てみたりしています。展示会以外にも年に2、3回程度ですが、ホームページを通じて海外からのお問い合わせをいただいているので、見積もりを出しています。実際に取引まで至ったことはまだないので、なかなか難しいのかなと思います。しかし諦めずに地道にできる範囲で続けていくつもりです。

取引まで至らないのは、おそらく中国の低価格で品質もさほど悪くない製品との競合が原因です。だからその先を行かないといけないし、価格や品質以外の部分で中国の企業とは違う特色を出せるように技術力を向上させていきます。


業種   金属製品製造業(マシニング加工、微細穴加工、フライス加工、旋盤加工、ワイヤー放電加工、画像測定)

設立年月          昭和40年5月8日

資本金              2,500万円

従業員数          9人

代表者              代表取締役 松浦貴之

本社所在地      東京都大田区南蒲田2−25−16

電話番号          03-3739-5621

公式HP           https://e-matsuura.co.jp

この記事の著者

重谷亮

重谷亮中小企業診断士

大学卒業後、独立行政法人に勤務。職業能力開発業務を中心に従事し、中小企業の教育訓練体系構築の支援、職業訓練コースの新規開発、運営、民間教育機関による職業訓練運営の支援などを手がけた。

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