「組み合わせ」と「マーケティング」で成長を続ける(富士セイラ(株)髙須俊行様 インタビュー③)

「組み合わせ」と「マーケティング」で100年、200年続く企業へ
富士セイラ株式会社は、家電やパソコンなどに使用されるねじ部品や精密機械加工部品を製造・販売する企業である。大手企業をはじめエンドユーザーと直接取引をし、多様な要望に応える中で、製品面・営業面のノウハウを蓄積しながら成長を続け、間もなく創業100年を迎える。

本特集では、同社のノウハウ蓄積の過程や今後の展望などについて、代表取締役社長の髙須俊行氏(以下、髙須社長)に話をうかがっていく。第三回は、同社の今後の展望と課題などについて取り上げる。

富士セイラ株式会社 代表取締役社長 髙須俊行氏

 

組み合わせとマーケティングで新たな事業を展開

今後、どのように事業を展開していきたいですか?

髙須社長:ねじ以外で売上を伸ばしていきたいと思っています。国内市場は緊縮しているため、国内でねじ需要が伸びる余地は少なく、需要を同業他社と奪い合うような状況になってきていると感じています。市場が縮小する中で、他社のシェアを奪うことで何とか現状を維持している状態です。このままでは、売上を伸ばし続けることは難しいと考えているので、例えば組立てやサービスなど、ねじを軸にしながらも他の部分を伸ばしていかなければならないと考えています。

その中で進めているのが、調達アウトソーシングです。大手企業の共同組合でのアメリカへの輸出代行経験を活かして、お客さまの調達の代行業務を手掛け始めています。さらに、お客さまの調達コストダウンやキャッシュフロー改善ご要望にも応えることができます。それから、検査機器販売も開始しました。当社では、従来からお客さまのご要望に対応するために、検査装置をメーカーから購入するだけでなく、独自に検査装置を開発しています。代表的なものは、ノートパソコンのプリント基板の接合部品となるめねじスタッドの自動全数検査装置です。アルミ製のねじなので、加工時にバリが出やすい製品なのですが、バリが残ってしまうと障害の原因になるため、確実に取り除く必要があります。この装置を使用すれば、無人で、レーザーセンサーにより微小バリや未加工品を検出できます。機械1台を導入するのは初期費用がかかりますが、年間の人件費を考えたら数年程度で元がとれます。このようなノウハウを活用して検査機器販売を行うことにしたのです。売上に占める割合はまだ少ないですが、顧客関係性強化に貢献しています。

 

自社で開発しためねじスタッドの自動全数検査装置

 

多岐に渡る事業を展開されていますね。すべて自前で立ち上げてきた事業なのでしょうか?

髙須社長:必ずしもそうではなく、M&Aにも取り組んでいます。最初は、1996年の中国での合弁会社設立です。中国にあった会社を合弁という形で買収しました。その後、1998年にフィリピンのダイカスト・金型製造を行っている会社を買収、2001年にはタイで、大手企業でめっきを行っている一事業所を、パートナー企業と合弁で買収しました。直近では2017年に、大阪の三喜鋲螺株式会社(現・大阪支店)と合併しました。ただし、M&Aが必ずしも成功しているわけではないです。中国の会社はすべて売却・解散しましたし、タイは合弁から始まりましたが、現在は合弁を解消し新会社を設立して運営しています。シナジー効果を発揮して、既存事業との組み合わせにより新たなビジネススタイルの確立に成功しているケースもありますが、M&A後も既存ビジネスだけに頼り努力を怠ると、なかなか成長にはつながらないのです。次のステージに向けて、努力をして革新的なことをやっていかないと成長しないと思っています。組み合わせにより、シナジー効果を発揮して、成長につなげる何かを作ることが必要です。これまで合併や買収、合弁解消や売却を繰り返し、得をしているかどうかは分かりませんが、何事もやってみないと分からないと思っています。ねじ以外の新たな事業領域で売上を伸ばしていきたいので、これからもあらゆることに取り組んでいきたいと思っています。

 

さらなる成長に向けて

合併や買収もやりながら、101名の社員のマネジメントはご苦労も多いのではないでしょうか?

髙須社長:あまり気にしていないです。何事も動じないことです。当社では、「全員参加経営」でやっています。

営業では、私が自らお客さまのところに出ていくこともありますし、細かいところまで介入することもあります。ただ、あまり細かいところまでやりすぎても良くないとは思っており、どの程度私が入るのが良いかは、探りながらやっています。

製造については、工場の改善はまだ途中だと思っています。粘り強く言い続けないといけません。事業がうまくいっている時に、工場に対してあまり細かく言わなかった時期があったことを今でも反省しています。

全社の平均年齢も47歳と高くなってきており、若手を入れながら少しずつ変えていく必要があると思っています。

 

若手の採用活動に苦労する企業も多いと聞きますが、御社はいかがでしょうか?

髙須社長:当社も苦労しています。就職活動用のWEBサイトなどで募集もしていますが、直近1~2年は本当に厳しいです。これから若年層の人口も減少していくので、より一層厳しくなるのではないかと思っています。

先日、地元の工業高校の1~2年生の発表会に講評者として招待をされました。その際に、講評ではなく、「3年生のインターンシップの時には、ぜひうちに来てくださいね。NC旋盤ができますよ」とお願いをしてしまいました。大田区の他社の話を聞くと、インターンシップをきっかけに入社する若手も結構いると聞いたので、つい言ってしまいました。若手の採用は課題だと思っています。

 

地元企業とのつながりは強そうですね。地域との連携はどのようなことをされていますか?

当社では基本的にいただいた依頼は断らないようにしています。その結果、当社にはさまざまな仕事が舞い込んできます。例えば、近隣の企業から、自社の機械では加工できないなどの理由から追加工の依頼も舞い込みます。最近、追加工を対応する職人も減っているので、当社に話が来ます。下町ボブスレーにも参加しています。

私は、業界団体である日本ねじ工業協会や地元の城南島連合会の役員も務めています。直近では、東京商工会議所の品川支部の評議員や記念事業の責任者なども依頼され、引き受けています。

このようなこともあり、地元企業とは円滑な関係を築くことができていると思っていますし、仕事にもつながっています。これからも地域とのつながりは大切にしていきたいと思っています。

アルマイト処理を施し、宝石のように輝く電子機器用の部品


業種   金属加工品製造販売業

設立年月          1927年3月

資本金              9,216万円

従業員数          101人

代表者              髙須 俊行

本社所在地      東京都品川区東大井1-3-25

電話番号          03-3471-0911

公式HP           http://www.fujiseira.co.jp/

この記事の著者

関谷由佳理 

関谷由佳理 中小企業診断士

大学卒業後、金融機関に勤務。主に法人営業に従事し、大企業から中小企業まで幅広い顧客層を担当。お客さまに寄り添いながら、課題解決につなげていけるコンサルタントを目指している。2021年中小企業診断士登録。

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