世界初! 防水・防油機能つきねじ「シールアップ®スクリュー」(富士セイラ株式会社)

パッキンがポイント

「シールアップ®スクリュー」は、当社がオリジナルで開発したシーリングパッキンを組み込んだ防水・防油機能つきねじである。同社は、大手企業に対して携帯電話向けのねじを提供している。携帯電話は、水に落としても内部に水が浸入しないようにする必要がある。この製造経験を活かして、同製品の開発に至った。
ねじは、止める際に接触面にぴったりと接触し、摩擦により外れなくなる仕組みで、どのような環境下でも、外れないような構造であることが必要だ。
「シールアップ®スクリュー」は、ステンレス製のねじにゴム製のパッキンが組み込まれており、水深11,000m相当の耐水試験もクリアするほど、防水機能に優れる。主に、防水スマートフォンや、LED、医療機械、自動車部品などに使用されている。

 

採用されるための工夫

しかしながら、発売後すぐにお客さまに採用されたわけではない。販売開始当初は、ステンレスねじの座面の下にゴム製パッキンをつけた形で(0リング:丸タイプ)、パッキンと介在物の密着量が少なく、介在物が片側に寄った場合には、防水機能を十分に発揮できなかった。さらに、お客さまの製品側にパッキンを受け入れるためのポケットを作る必要があり設計変更を要した。そのため、なかなか採用に結びつかなかった。

開発当初のシールアップ®スクリュー(0リング:丸タイプ)(左)・ リニューアル後のシールアップ®スクリュー(シーリングパッキン:平タイプ)(右)の相違点 (出所:同社製品説明資料)

 

そこで同社は思考錯誤し、パッキンをねじ座面の環状溝部分に組み込んだ製品を開発した(シーリングパッキン:平タイプ)。これによりパッキンと介在物の密着量が大きくなり、介在物が片側に寄った場合でも防水機能を発揮できるようになった。さらに、ユーザー側ではねじ座面が水平になるため、設計変更は不要でこのねじを使用できるようになり、採用が進んだ。

今では、栃木事業所に自動組立機やロボットを導入し量産だけでなく少量多品種生産にも対応している。また、大手機械商社のWEBサイト経由でも販売をしており、売行きは好調だ。

 

開発当初のシールアップ®スクリュー(0リング:丸タイプ)(左)・ リニューアル後のシールアップ®スクリュー(シーリングパッキン:平タイプ)(中央・右)

 

組み合わせとマーケティングによるオリジナル製品開発

リーマンショック、東日本大震災、タイ洪水後の苦労を乗り越える中で同業他社と差別化を図るためにオリジナル製品開発の必要性を感じ、生み出された「シールアップ®スクリュー」。同社の強みを活かした、世界初の完全オリジナル製品である。さまざまな素材と加工方法の組み合わせでお客さまの要望に応えるノウハウが、ステンレスとゴムの最適な組み合わせによる製品開発につながった。また、マーケティングを通じて得たお客さまの要望を的確に捉えた丸タイプから平タイプへの製品のリニューアルが、多くのお客さまからの採用につながっている。

同社の組み合わせとマーケティングが、これからもオリジナル製品を生み出し成長につながる鍵となるに違いない。

2023年2月「テクニカルショウヨコハマ2023」に出展時の様子(出所:同社Facebook)

この記事の著者

関谷由佳理 

関谷由佳理 中小企業診断士

大学卒業後、金融機関に勤務。主に法人営業に従事し、大企業から中小企業まで幅広い顧客層を担当。お客さまに寄り添いながら、課題解決につなげていけるコンサルタントを目指している。2021年中小企業診断士登録。

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