お客様の願いに応えて、従業員と共に成長していく(株式会社松浦製作所 松浦社長インタビュー(第2回))

お客様とのつながりが力に

今回は株式会社松浦製作所のお客様とのつながりを中心にお話を聞かせていただいた。

株式会社松浦製作所 松浦社長

若手時計師とのコラボレーション、展示会へ積極的に参加して技術力の発信を行なっていること、ツイッターを通して一般の方々ともつながっていきたいという想い、ものづくりのまち大田区に拠点を構えることのメリットなどについて、前回に続き代表取締役の松浦貴之さんにうかがった。

 

フェイスブックからつながった腕時計のケース

前回の話でもうかがった腕時計のケースについてお聞かせください。

松浦氏:腕時計のケースは、生産の規模としては最大でも20個ぐらいまでです。お客様はメーカーではなく個人事業主の時計師さんがほとんどですので、オーダーに対して1個だけ作るとか、ロット4個とか、そういう数量のものに今はとどまっています。

 

時計師さんは、どこから松浦製作所さんを見つけてこられたのですか。

松浦氏:腕時計に関しては10年ぐらい前にツイッターでつながったのです。ある時計師の方が、弊社のアカウントをご覧になり微細加工に関心を持ってフォローしてくださいました。そして、オファーをいただいてからのお付き合いです。

その方が、弊社が納品した製品をフェイスブックで、「松浦製作所で作ってもらいました」とアップされた記事をご覧になった同業の方から、「フェイスブックをみた」と問い合わせが広がりました。取引のある時計師のところから独立された方も自分のモデルを作りたいと注文をしてくださるなど、口コミでも広げていただいています。今では腕時計関係のお客様も5社ぐらい取引しています。

 

時計師さんから信頼を得て伸びてきているのですね。

松浦氏:腕時計関連は売り上げで言うとまだ1割にも満たない程度です。

ただ、我々が普段作っている部品は、世の中に出回る形としては見えませんが、腕時計はケースをやっているので我々の作った部分が製品として見えます。雑誌の広告や世界最大の時計宝飾フェア「バーゼルワールド」で弊社製のケースを使った腕時計の展示を見ると、私や従業員のモチベーションが上がります。ですから腕時計のケースにはこれからも力を入れて伸ばしたいところです。

現在は若手時計師さんたちとコンソーシアムを組み、作品の製作に協力しています。

 

大田区を拠点としていることは大きなメリット

展示会にも積極的に参加していらっしゃいますね。

松浦氏:そうです。2021年7月にも大田区加工技術展示商談会という、自社で加工を行う中小製造業しか出展できない、非常に大田区らしい展示会に出展しました。新型コロナウィルス感染症が流行している中での開催でしたので、弊社のブースには感染症対策のため従業員は常駐せず、興味のある方にはお電話をいただくようお願いをしました。展示会に来られた方には直接説明をできず大変申し訳なかったのですが、それでも1件の発注をいただくことができました。

展示会では、弊社が小さい物の製造を得意にしていることが分かるよう、普通のA4サイズの会社パンフレットだけではなく、名刺サイズのパンフレットもブースに置いています。小さなパンフレットだと持ち運びに便利だということで、結構持って帰っていただいています。

(写真右)A4のパンフレット、(写真左)名刺サイズのパンフレット

展示会のブースにはどのようなものを展示されているのですか。

松浦氏:弊社の技術力を伝えられるようなサンプルを展示しています。例えば1.0mm×1.0mmのスペースに、マシニングセンタで道の幅が0.03mmの小さな迷路を描いたものなどです。

ホームページ(https://e-matsuura.co.jp/technic)には、弊社の技術力を知っていただくためにサンプルを掲載していますので、精密加工や微細加工を必要とされている方にご覧いただきたいと思います。

医療関係部材の成形に使用するために削り出した円錐のサンプル

 

パンフレットにも旋盤で削った直径φ0.05mmの削り出し加工の写真を掲載しています。これもサンプルであって、このようなものを作成する仕事が来るわけではありません。しかし直径φ0.05mmの削り出し加工が可能だと伝われば、直径φ0.1~0.2mm程度の精度は容易に満たせる技術があることは伝わります。サンプルを通じて技術力をご理解いただければ仕事につながると考えています。

 

お客様が松浦製作所を選ぶ理由を聞いたことはありますか。

松浦氏:普段はあまり聞かないのですが、10年ぐらい前にアンケートを取ったことがありました。

その時には製品が綺麗だとお褒めいただきました。きれいなモノを作ることを心がけていますので、認めていただきうれしかったです。一方で、ちょっと高い、そして高くて遅いとお叱りの言葉もいただきました。

 

ほめ言葉かもしれませんね。いいものを高いかもしれないけど適正な価格で売るというのは一つの理想だと思います。

松浦氏:そうですね。お叱りですが、そのお客様とのコミュニケーションがとれているということですし、買ってくださっていますから。

 

展示会以外に大田区で製作所を開くことのメリットは何ですか。

松浦氏:大田区の特性として、加工に必要な材料から工具までとにかく身近に何でもある。

例えば材料を買うのでも、材料屋さんがたくさんあって仕入れ先に困りません。工具の購入も穴を開けるためにドリルを買おうと思えば、電話1本で30分もかからずに持ってきてくれます。加工した製品の錆止めに急ぎでメッキをかけたいとなれば、はす向かいがメッキ屋さんですから2時間も預けておけばできます。おそらく地方に行ったらメッキ屋さんに行くだけでも時間が必要だと思います。そうすると今の納期ではお受けできなくなる可能性が高くなります。

さまざまな企業が集まっていて、さらに短納期で「いいもの」ができるというのは大田区で製造業を営む上での魅力ですよね。


業種   金属製品製造業(マシニング加工、微細穴加工、フライス加工、旋盤加工、ワイヤー放電加工、画像測定)

設立年月          昭和40年5月8日

資本金              2,500万円

従業員数          9人

代表者              代表取締役 松浦貴之

本社所在地      東京都大田区南蒲田2−25−16

電話番号          03-3739-5621

公式HP           https://e-matsuura.co.jp

この記事の著者

重谷亮

重谷亮中小企業診断士

大学卒業後、独立行政法人に勤務。職業能力開発業務を中心に従事し、中小企業の教育訓練体系構築の支援、職業訓練コースの新規開発、運営、民間教育機関による職業訓練運営の支援などを手がけた。

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