独自のものづくり技術を軸に、地域とともに未来を創る(株式会社玉川パイプ 玉川大輔社長インタビュー③)

「和をもって貴しとなす」

展示会への出展に努める玉川社長は、自分たちの技術を広く知ってもらうことの大切さを説く。確固たる技術があるからこそ、それをビジネスに結びつける努力も行う。そして玉川社長の計画は、人と情報の交差する場として工場をオープンにする計画へと発展する。地域と一体となって強みをアピールし、自分たちもまた誇りをもって働ける。地域貢献が相乗効果を生む将来を見据えている。

株式会社玉川パイプ 代表取締役 玉川大輔氏

 

将来のための3本柱と地域貢献

積極的に自社技術を知ってもらうことで、今後どのような展開をお考えですか。

玉川氏:自社技術を知ってもらって需要を作り出すことで、仲間まわしの成立にもつながります。一方で、内製化していくことは利益の根幹になるので、これもしっかりやらねばならない。両方やっていかないと会社はジリ貧になっていくのではないかと思っています。

売上高の分類でいえば、完全な内製、仲間まわしの外注、エンドユーザー向けBtoC商品と、すべてをやっている会社は大田区には他にないのではないでしょうか。ナンバーワンになりたいという訳ではなく、オンリーワンとして、弊社にしかできないことをやっていければいいですね。もともと玉川パイプが培ってきた技術をまず幹として、さらにBtoCのビジネス展開、それに仲間まわしの部分も、大きくはその3本の柱で、それぞれを太くしていきたいと考えています。

 

3本の柱から地域貢献にも広がっていますね。

玉川氏:大田区のものづくりや仲間まわしの文化は、担ってくれる若い人が育たないと廃れていくものです。文化が廃れると、自分がやりたいと考えている3本の柱が崩れてしまいます。それを防ぐためにも、若い人や地域の人がものづくりにもっと興味をもってもらうようなことを、積極的にやっていきたい。

地元の工業高校からインターンを受け入れたり、駅前商店街のイベントに自社製品の消毒液スタンドを持っていって手伝ったり、大きな意味での地域貢献を行っています。大田区の中でも、ものづくり以外の商店などを含めて、つながりがある方がいいと思っています。

特に若い人がものづくりを面白いと思う仕掛けを、地域全体でやっていきたいですね。例えば、新潟県の燕三条地域では、「ものづくり学校」を作って情報発信拠点とし、洋食器の研磨に欠かせない「バフ研磨」の職人の仕事を若い人に見せて関心を呼んでいるそうです。こういった面白い取り組みを、地域全体でできればと思います。

 

地域イベントとオープンファクトリー

具体的な地域活動のイメージはありますか。

玉川氏:多摩川河川敷で屋外カフェのようなイベントをやりたいというアイデアがあります。最近、弊社でアウトドア用品のタープを開発しているので、タープを張って、商店街の飲食店には食品を出してもらいます。ものづくりのイベントも行いたいですね。せっかく多摩川という遊べる場所があるので、地域のいろいろな人たちと一緒にイベントを実施できたら面白いと思います。
この、いわば「多摩川フェアー」では、職人の技を見てもらいます。木工教室というのは時々各所で行われていますが、そういったものづくりイベントを参考にして、金属加工業で何か手作り体験ができないかと考えています。子どもたちが金属加工の技を見ると「職人さんはすごい!」と驚きます。職人は仕事にプライドをもつでしょう。そして会社のことも多くの人に知ってもらえる。2つのメリットがあるのです。

アウトドアギアのタープポールの可能性も探る(株式会社玉川パイプFacebookページより)


会社の立地は工場見学にもいいですね。

玉川氏:中期的な計画なのですが、本社工場をオープンファクトリーにしたいと思っているのです。一般の方も予約があれば入れるような工場です。それにはいろいろなメリットがあって、ひとつには、お客様が工場内を歩けるように動線を安全に確保しないといけないので、それによって社内的にも作業効率が良くなります。

また、「玉川パイプにはいろいろな人が来ますよね。ちょっと異様です」と従業員から言われたことがあります。確かにこれまでも、ホームページを見てバイクのパーツを作ってほしいという人が来たり、羽田の漁師さんがこんな杭を作りたいと来たり、人が集まっていたようです。なるほどと思いました。人が集まるところには様々な情報も集まる。そういった人と情報が集まる拠点をきちんと作れたらいいなと思います。

私が幼いころは付近はほとんど町工場でしたが、いまではマンションが多く、我々の肩身が狭くなっている。地域の方にものづくりと工場のことを知ってもらえれば、ものづくりに携わる人間もやる気が出るし、もっと地域全体によい効果があるような気がします。私たちはいつでもお見せできますよ、というオープンファクトリーにしたいなと思います。

大通りに面する株式会社玉川パイプ

 

「和」を大きくして可能性を広げる

大切にされている社是がありますね。

玉川氏:創業者が残したスローガンが「和をもって貴しとなす」という聖徳太子の17条憲法の言葉です。社内外を含めて調和を大切にする人だったのです。これは、会社全体として我々も大切にしていきたいと考えています。人の集まるオープンファクトリーも「和」に通じています。どんどん「和」を大きくしていくことができれば嬉しいです。

大田区の工場の技術力は、まだまだ優位性があると確信しています。羽田空港もあるし、魅力に満ちたエリアです。場合によってはコスト競争力が弱いかもしれませんが、専門家のアドバイスなどももらいながら、技術力をビジネスに結びつけたいと願っています。


<会社概要>

業務内容  引抜鋼管製造および各種鋼管販売・金属加工

設立年月  1959年11月

資本金   1000万円

従業員数  10人

代表者      代表取締役 玉川 大輔

本社所在地  東京都大田区南六郷2-21-11

電話番号    03-3738-3538

公式HP     http://tamagawa-pipe.com/

この記事の著者

宮田昌尚

宮田昌尚中小企業診断士

熊本県出身。早稲田大学政経学部卒業後、メディア企業に入社。出版部門の広告営業や企画運営等を長年担当し、CSR推進部門で各種事業の推進に携わった。現在はグループ会社に勤務。中小企業診断士として、信念をもった経営者の取材・執筆を多く行っている。

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