- 2022-5-20
- 経営全般
成果をアップさせる経営理念活用のポイント
経営理念は策定がゴールではなく、活用して成果につなげることが目的です。経営理念の効果や策定のポイントについては前回の記事(https://mono-sozo.com/archives/947)でお伝えしました。今回は、成果を引き上げる経営理念活用の方法についてお話します。
1. 理念活用の効果
経営理念は仕事をする上での大切なことを言語化したものです。経営者にとって経営理念は、会社のビジョン実現を加速化させるツールと言えますが、働く社員にとっては、自分の職業人としてのビジョンや夢をカタチにするためのヒントと捉えることができます。つまり、経営理念は会社と社員個人の両方に効果的であるということです。経営理念は社員を会社の思い通りに動かすためのものではなく、会社と社員個人のビジョンを共に実現するために活用されるものです。まずはこの認識をしっかりと持ち、社内で共有することから始めましょう。
2. 目指す理念活用レベル
経営理念に基づいた判断を行うことで、行動の質を上げることができます。そのためには、経営理念に基づいた判断が習慣化されていることが必要です。意識せずとも行動に表れている、その状態が理想といえます。
上の図は学習の段階を表したものです。レベル1の無意識的無能は「知らないしできない」状態、レベル2の意識的無能は「知っているけどできない」状態です。経営理念を策定しそれを社内で共有しただけの状態は、理念を活用できているとは言えず、理念を知ってはいるけど行動が変化していない、意識的無能の状態といえます。レベル3の意識的有能は「意識しているとできる」状態です。理念の活用が進み、日常の行動や業務に前向きな変化が表れている状態です。最高レベルであるレベル4の無意識的有能は「意識せずともできる」状態です。経営理念のことを特に意識せずとも、仕事を進めるうえでの判断軸として経営理念が根付いており、行動の質が常に高くなっている状態と言えます。一朝一夕で到達できるレベルではありませんが、理念活用を進める上では目標にしたいゴールです。
3. 理念活用の具体的方法
ではレベル4の無意識的有能をどのように目指していけばよいのか、具体的にどのようなやり方があるのかをお伝えします。ポイントは、経営理念を高邁な存在にしてしまうのではなく、日常業務における「行動」と「思考・感情」にどのように関連付けるかです。
一つ目の方法は、朝礼等を活用した短時間での意見交換です。日常の行動指針となるバリューをテーマに、そのバリューに対して感じたことを意見交換する方法です。社員が毎朝一堂に会す機会がない場合は、チャットアプリ等を活用し、オンライン上でバリューに対する意見交換を行う形でも効果があります。進め方の一例としては、リーダーがその日のテーマとなるバリューを一つ選び、メンバーに「このバリューのポイントは何でしょうか?」「このバリューを実践して良かったことは何ですか?」のような問いかけを行います。その問いかけに全員が回答しその内容が全員に共有される、このような流れになります。同じバリューでも、社歴やこれまでの人生経験などからコメント内容は千差万別で、そこからの学びや気づきはとても大きなものになります。また他の仲間がどのような考え方や価値観を持っているかを知ることは、チームビルディングの観点からも効果的です。
二つ目の方法は、社内研修・勉強会の形で少し時間を多めにとり、バリューについてのディスカッションを行う方法です。ディスカッションの対象とするバリューを一つ決めて、「このバリューの要点」「実践した時のステークホルダー(利害関係者)への影響」「現状でできていることと、できていないこと」「できていないならその理由」「これからすぐに取り組めること」のそれぞれに対して検討とシェアを行います。例えば、すべての問いに対して各自が考えていることを書き出し、その後質問ごとに記載内容をペアもしくはチームで発表しあう形で進めます。実施上のポイントは、実際に発生したエピソードと紐づけることです。あるバリューを意識して業務を行っていたらこんな良いことがあった、などの形でバリューと日常をつなげることが大切です。このディスカッションを繰り返すことで、バリューを身近に感じ、無意識でもバリューに沿った行動をとれるようになります。
いずれの方法にしても、意見を出しやすい雰囲気作りが欠かせません。否定的な言葉を使わず、相手の考えを認めることから始め、「正解、不正解のないディスカッションである」ことを、全員と事前に共有しておくことが重要です。
経営理念が社員にとって自分事になるよう、策定して終わりではなく、積極的な活用をぜひ進めてみてください。