お金を借りる前の、金融機関との付き合い方3か条(公認会計士・税理士の曽我勝一)

お金を借りる前の、金融機関との付き合い方3か条

はじめまして、公認会計士・税理士の曽我勝一です。会計事務所で働いた後、現在は事業会社で働いています。

さて今回は、社長さんが「お金を借りる前の、金融機関との付き合い方3か条」についてお伝えします

 

事業を継続・成長させるのにお金は必要ですよね。ただ、そのお金を必要な時に金融機関に行って借りようとしても、借りることはできません。

大切なのは、「お金が必要となる前に」金融機関と関係を作っておくことです。

 

その際のポイントは、ズバリ

1.お金が必要となる時の「遅くとも6か月前に」、金融機関と接触を始める

2.日頃から「複数の金融機関と」接触しておく

3.「日頃から」「資金繰り予測」を作っておく

の3つです。

 

1.「遅くとも6か月前に」、金融機関と接触を始める

これは金融機関内の融資審査とその準備に約3か月+新しい金融機関の場合の取引開始審査に約3か月=合計約6か月の期間を想定したほうが良いからです。

金融機関が融資を実行するにあたり、担当者は稟議を作成し行内で「融資審査」を経て決裁を得る必要があります。その際に、金融機関の担当者は社長さんに「返済能力を示す書類」の提出を求めます。具体的には会社の概要説明資料や決算書、後に述べる資金繰り表などです。事業をやりながらこれらの資料を用意するには、それなりに時間がかかりますよね。だから時間の余裕を持っておく必要があります。

また、金融機関の担当者は行内の上司や審査部から追加の資料を求められ、社長の皆さんに追加資料の提出をお願いすることがあります。その資料の準備や対応の時間にも余裕を持っておく必要があります。普段付き合いのある金融機関から融資を受ける場合には、これらを併せて3か月程度見積もっておくと良いでしょう。

さらに、頭に置いておく必要があるのは、金融機関が融資してくれるかどうかは、金融機関・支店の融資に対するスタンスに大きく影響を受けるため、普段付き合いがあり返済能力が十分あったとしても融資してもらえるとは限らないということです。

仮に普段付き合いのある金融機関の支店から融資を断わられた場合には、融資してくれる別の金融機関を探すことになります。新しい金融機関との取引開始には書類の準備や金融機関での審査に時間がかかるので、さらに3か月程度の時間が必要となります。

この新規取引の審査期間を短縮する方法として、前もって帝国データバンクに会社の情報を掲載しておくというのがお勧めです。理由は2つありまして、客観的な立場から会社の情報を提供しているので、その提供する情報は信頼性が高いため、金融機関担当者も帝国データバンクの情報を活用するため、融資の申し込みを行う際に、金融機関担当者への説明の手間を軽減できるためです。

 

2.日頃から「複数の金融機関と」接触しておく

これはズバリ、

  • 複数の金融機関に競わせることで、有利な融資条件を引き出すため、
  • 融資してくれる金融機関を、最低でも1行は確保するため

です。特に2番目が大切です。

金融機関との付き合いで常に念頭に置いておくべきことは、「金融機関によって」そして「同じ金融機関でも支店によって」さらには「同じ支店であっても担当者によって」融資に対するスタンスが異なるということです。

会社は金融機関を選べますが、金融機関の支店には担当エリアが割り当てられているため、会社は支店を選ぶことはできません。ですから、普段付き合いのある金融機関の支店・担当者が融資に積極的ではないと、融資に時間がかかる、あるいは融資を実行してくれないという事にもなりかねません。

こういった事を避けるために、日頃から複数の金融機関と接触しておくことをお勧めします。

普段付き合いのある金融機関が、融資に積極的かどうかを調べる時や、皆さんが会社をやってらっしゃる地域で融資に積極的な金融機関を探したい時に役立つ資料があります。それは、中小企業庁が公表している「保証実績の公表(信用保証協会別の金融機関別、信用保証協会別、金融機関別)」です。

これは金融機関ごとに融資にかかった保証承諾額を示した資料で、ここから金融機関ごとの融資の実行額、そして融資に対するスタンスについて大まかな傾向を読み取ることができます。

また、千葉県信用保証協会のように、月次でウエブサイトに公表する「保証概況」の中で、金融機関の支店ごとに保証承諾額を公表している機関もありますので、会社をなさっておられる近くの金融機関・支店が融資に積極的かどうかを見ることができます。10分程度時間を取って一度目を通すことをお勧めします。

 

3.「日頃から」「資金繰り予測」を作っておく

これはズバリ、

  • 金融機関担当者への融資相談と金融機関内での融資審査を進めやすくするためと、
  • 先を見据えた経営を行うため

です。

 

当たり前ですが、金融機関に融資をしてもらうためには、「何のために」「いくら」「いつ欲しいか」「いつ返せるか」を具体的に説明する必要があります。これを数字や時期で表すために丁度良い資料が、資金繰り予測です。

資金繰り予測は、「今後の月ごとに」、「大きな入金と出金」を、「裏付けのある概算で示す」ものです。特に大事なのは、「裏付けのある概算で示す」ことです。

このご時世、事業を取り巻く状況は急激に変化していきます。その変化に対応して経営を続けていくには、時間をかけて資金繰り予測を精緻に作るよりも、裏付けのある概算値を用いて短い期間でタイムリーに更新するほうが適しています。

こういった資金繰り予測を作成し、将来の大きなお金の流れを日頃から把握することで、先を見据えた経営を行うことも可能になります。

 

今回は、お金を借りる前の金融機関との付き合い方3か条

1.お金が必要となる6か月前には、金融機関に接触を始める

2.  複数の金融機関に接触する

3.   日頃から資金繰り予測を作る

についてお伝えしました。

読者の皆さんの資金繰り改善にお役に立てれば幸いです。

この記事の著者

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曽我勝一公認会計士・税理士・公認不正検査士

早稲田大学商学部卒業。4大監査法人にて監査業務に従事後、日本およびオーストラリアのコンサルティング会社にてM&A関連業務や不正調査業務、新規顧客開拓業務に従事。 ベンチャー企業に転じて、新規事業の立ち上げ推進責任者を務めた他、経営戦略策定や事業計画作成、資金調達、上場準備を遂行する その後、東証一部上場企業の執行役員や、東証マザーズ企業の取締役を歴任し、現在に至る。

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