生産性を上げる幸せなコツ、教えます!(IRODORIコンサルティング 藤垣 強)  

生産性を上げる幸せなコツ、教えます!

みなさんの経営する、あるいは働く職場は幸せでしょうか?

いや、そんなことは考えたこともないよという方も多いかもしれません。でも、「幸せな職場は生産性が高い」と聞けばどうでしょうか。

今回は、「幸せな職場」「あしたも働きたくてたまらない職場」とはどのような職場なのか。そしてどのように生産性に結びつくのかについてご紹介します。

 

 

◆カネ・モノ・地位による幸せは長続きしない

まずは、「幸せ」についてです。みなさんはどのようなときに幸せだと感じますか?

経済的な豊かさ、仕事での成功や出世、社会的な地位や名誉でしょうか。確かに戦後の高度経済成長期からつい最近までは、これらに幸せを感じる人が大多数でした。

しかし、バブル崩壊や大震災、コロナ禍蔓延といった時代の変遷とともに、最近ではこうした「カネ・モノ・社会的地位」に本質的な幸せを見いだせないことに気づく人も増えてきました。

そうなのです、「カネ・モノ・社会的地位」(これらは「地位財」と呼ばれます)は他人と比べることではじめて幸せが感じられるものです。ですので、給料が上がったり、昇格したり、欲しかった物が手に入ったときなどに得られる満足感や幸福感はそのとき限りのもので長続きしないのです。しばらくするとまた次のものが欲しくなったりします。

 

これに対して、それ自体に価値があり、他人とは関係なく得られるもの、「心・安全・健康」(これらは「非地位財」と呼ばれます)などは、たとえば家族や友人と共に過ごしたり、趣味に没頭したり、自然の中でゆったりとした時間を過ごすことで、長期的な幸福感が持続するといわれています。こうした「非地位財」に幸せを見いだす人が最近増えてきているのです。

 

 

◆幸福度の高い人はそうでない人に比べ生産性が31%高い

米イリノイ大学エド・ディーナ-名誉教授らの研究によれば、

幸福度の高い人はそうでない人に比べて、

創造性は3倍
生産性は31%
売上げは37%

高い傾向にある、というのです。

さらに、幸福度の高い人は、職場において良好な人間関係を構築しており、転職率や離職率、欠勤率のいずれも低いという研究結果もあります。

翻(ひるがえ)って日本の2017年の調査では、58.3%と半数以上の労働者が現在の仕事や職業生活に関し、強い不安や悩み、ストレスを感じることがあるというのです。

※平成29年(2017年)「労働安全衛生調査(実態調査)」(厚生労働省)

 

また同じく2017年のOECD(経済協力開発機構)のデータでは、日本の時間あたり労働生産性はOECD加盟国(36カ国)中20位と低位にあります。

これらのことから言えるのは、一般的に「勤勉」で「働き者」と言われる日本人が、実は労働生産性の観点からは非効率な状態にある、そして労働者の半数以上の方が仕事や職業生活に関しストレスを感じながら、非効率な労働を強いられているともいえます。

 

とても残念なことです。ではどうしたらよいか?どうしたら労働者のストレスを減らし、生産性も高くなるのでしょうか?

 

◆従業員満足度から従業員幸福度へ

もうみなさんもここまでお読みいただき、うすうす感じられたかと思いますが、生産性向上のカギは従業員さんがいかにストレスなく、幸福度を上げていくかということが重要になります。

ですので、これからは「従業員幸福度」を高めていくことに注力すべきなのです。

ここで、対比されるものとして、「従業員満足度」という概念があります。ご存じの方も多いと思います。わたしもよくコンサル先様へアンケートと称して「従業員満足度」調査を実施させていただくことがあります。

 

この「従業員満足度」とは、仕事内容への満足、職場環境への満足、福利厚生への満足など、部分的な充足を指しています。一般的に満足感はその感情が起きた瞬間のことを表しています。

これに対して「従業員幸福度」は、部分的な満足だけでなく人間関係や家庭環境、余暇の楽しみなどまでをも含む、人間としての人生全般に関わる満足を測る指標とされています。また、従業員満足度よりも、従業員幸福度のほうが生産性に寄与しているとの研究結果も出ています。

 

◆従業員幸福度を上げるには?

「従業員幸福度を上げる」ためにできることの

ひとつは、従業員の「働きがい」「生きがい」を一緒に考えることだと考えます。下の図をご覧ください。

    出典:「未来を築く、健康経営」(NPO法人健康経営研究所)

 

こちらは、2021年7月19日にNPO法人健康経営研究所が深化版として「健康経営」を再定義した際の概念図です。

「人」はコスト(資源)ではなく、資本(投資)とする考え方へと深化させたものです。

経営者の方が経営戦略に基づき事業を進めるにあたり、まずはピラミッドの土台となる従業員の健康管理や心と身体の健康づくりを行ないます(いわば、守りの健康管理)。でもそれだけではVUCAの時代には企業として生き残れません。

「人」を資本として新しい企業価値を創造するためには、これからは「働きがい(ワーク・エンゲージメント)」「生きがい(ウェルビーイング)」が重要であり、その先に企業の成長や社会の発展があるということを表しています。

 

「働きがい」や「生きがい」を充足するためには、経営者の方が、創業時からの「事業への想い」や「経営理念」を、従業員の方々と地道な対話を通じて共有していきます。

そして、自分の会社は「何のために存在しているのか(Purpose)」「自社で創る製品が社会にどんな貢献をしているのか」「強みを活かしてどうありたいのか(Being)」といった根源的なことを、従業員が腹落ちするまで対話してみるのです

目指したいのは、従業員が主体性をもって、自分から考えて取り組む「自立型組織」です。

 

 

◆「月曜に会社へ行きたい」会社

最後に、毎朝1時間の朝礼が従業員さんへの会社理念の浸透や強い信念につながっている、全国的にも有名な企業の例をご紹介します。

その会社は、徳島県にある「西精工株式会社」です。高品質かつ高精度、さらに極小のネジ製品で、日本中の大手自動車などを取引先に持ち、国産車では、当社の製品が使われていない車はないと言われるほどの会社です。

毎朝1時間の朝礼では理念と行動規範を唱和し、その行動規範について3~4人のグループで40分かけてフィロソフィーを話し合ってから仕事に入ります。従業員の方々は毎日とても楽しみにしているそうです。自分たちの作るネジを使った車が今もまさに世界中を駆け回っているという誇りややりがいを感じ、それが明日へのモチベーションアップにつながっていると言います。

(おもてなし経営企業選 経済産業省中小企業庁ミラサポPlusより)

https://www.meti.go.jp/policy/servicepolicy/omotenashi-keiei/kigyousen/pdf/25-24.pdf

 

ご参考にされてみてはいかがでしょうか。

 

参考文献:「幸せな職場の経営学」(前野隆司著)(小学館)

    :「未来を築く、健康経営」(2021.7.19 NPO法人健康経営研究所)

この記事の著者

藤垣 強

藤垣 強IRODORIコンサルティング 代表  中小企業診断士

群馬県出身。慶應義塾大学商学部卒業後、群馬銀行入行。36年間勤務し、大半を融資、審査・管理業務に従事。2021年10月定年退職と同時に経営コンサルタントとして独立。現在は、群馬県よろず支援拠点コーディネーター主体に活動。群馬県中小企業診断士協会所属。 企業も人も健康から。「幸せファースト」なウェルビーイング・コンサルタント その他保有資格:健康経営エキスパートアドバイザー、1級販売士、事業再生士補(ATP)

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