中小製造業が押さえるべき「健康経営」の基本(会社の健康研究所 屋代勝幸)

中小製造業が押さえるべき「健康経営」の基本

こんなことはないですか?

「キンコンカンコン」始業のベルが鳴りました。一日のはじまりだというのに、従業員の何人かは、眠たそうにあくびをしていました。

社長 「山田君、鈴木君、なんだい、朝からあくびかい?」

山田 「社長、最近疲れが取れないんですよ。」

社長 「朝ごはんは食べているのかな?」

山田 「朝ずっと寝ていたいので、朝飯なんてずっと食べてないです。」

鈴木 「俺もなんだか面倒くさくて・・・。」

社長(心の声) 「より高い生産性を求められる現場のオペレーターだが、これでは「ポカミス」も避けて通れない。重大なケガなど起こさなければいいが。とは言え、「朝ごはんくらいは食べてこい」とは言いづらい・・・。どうしたらいいだろう???」

良くないこととは思っても、個人の生活のことまで指示することもできない、こうしたことにお困りの中小企業経営者も多いです。最近、耳にする「健康経営🄬」にその解決の糸口がありそうです。

「健康経営」ってなに?

企業経営の大切な資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の中でも、最も大切なヒト(従業員)を取り巻く環境は、少子高齢化などを背景に特に中小企業において、さらに厳しいものになってゆくことでしょう。また医療費の増大は日本社会全体の問題でもあります。

大切な従業員の健康を管理するこれまでのやり方は、もっぱら健康診断が中心であり、診断結果に対応する対症療法的なものでした。これからは、企業が従業員の健康に配慮し、仕事で大きな成果を期待できる健康面の基盤作りのため、健康管理を経営的視点から戦略的に実践するが求められます。

この取組みは公器でもある企業の果たす役目にもつながっていくものです。国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)の3「すべての人に健康と福祉を」にも関連づけられます。

冒頭で紹介した朝食を抜くような体調のすぐれない生産性の上がらない状態のことを「プレゼンティーズム」と呼び、こうした損失は、医療費や病気休業における損失よりも大きいことがわかっています。(出典:東京商工会議所、健康経営エキスパートアドバイザー共通テキスト)

 

「健康経営」の推進はまさに、“攻め”の健康管理であり、生産性の向上はもとより、創造性の向上、企業イメージの向上などの他、リスクマネジメントにも通じるものです。

現在、健康経営に優れた企業を認定する制度として、「健康経営優良法人認定制度」があります。2020年にはこの中小企業部門にさらに優良企業の証であるブライト500(大企業の呼称はホワイト500)が新設されました。多くの保険者[健康保険を運営主体で、全国保険協会(協会けんぽ)、主に同業者で構成される健康保険組合]が、「健康宣言事業」を実施し、企業の健康経営推進の支援をしています。

「健康経営」キックオフ!

では、どのように「健康経営」に取組めばいいのでしょうか?

健康管理の基本は、なんといっても“健康診断”です。まずは、従業員全員の健康診断受診状況を確認してください。意外と社長の健康診断がおろそかになっているケースがあります。

そして、加入している健康保険組合が推進する健康経営のプログラムに参加してみるのが、健康経営に触れ、理解を進めるのに役立つでしょう。

多くの中小企業が加入する協会けんぽ(東京支部)を例にすると、同支部では「健康企業宣言」を推進しており、無料の専門家派遣(東京都職域健康サポート事業)も連携しています。

まずは、この宣言をしたことを社内外に発信し、「健康経営」の取組みを進める意思表示をしましょう。こうすることで、社員の健康への関心を高め、自身の健康増進が会社の経営にも役立つことが意識づけられます。冒頭の事例でも、経営基盤を強化するために、社員の食事に意味を持って関与することができるようになります。

あとは、このプログラムを推進するのもよし、さらに上位の「健康経営優良法人」認定を目指すのもよし、自社の状況に合わせて、健康経営を推進していきましょう。

中小製造業の取組み事例から学ぶ

健康経営の取組みの一つとして、従業員の健康への課題解決があります。製造業では、勤務時間はおおむね一定ですが、ラインでの身体を使っての作業が多い

ため、高カロリー・高塩分の食事を好む傾向があります。飲み物も炭酸飲料、缶コーヒーといった糖分を多く含むものが好まれ、多飲されています。事業所全面禁煙の割合も製造業が他業種に比べ最も低くなっていることから、一定数の喫煙者が存在しています。(出典帝国データバンク2020年調査)

社員食堂・仕出し弁当のメニューを見ると、カレーライス、丼ものが多く用意されていて、同僚につられて量が増えることも多いようです。炭水化物過多、高カロリーになりがちで、糖分の多い清涼飲料も加わり、若いうちから肥満傾向で血圧も上がりやすくなります。

喫煙の害は言わずもがな、肺がんなどの疾患のリスクに直結します。

対応としては、健診100%受診の上、「健康企業宣言」をした健康経営に取り組む企業として、これら食事のメニューを見直し、野菜を取り入れたり、カロリー・塩分・糖分摂取過多の注意喚起をしたりする。また、禁煙プログラムを導入する、などが挙げられます。

健康経営のメリットは?

中小企業は外部に向けたPRが得意ではないことが多いです。健康経営に取組む企業として、社外へアピールすることは、それが一つの強みになり、選ばれる要素になるということです。

事実、就活生とその親の調査(経済産業省平成28年度「健康経営と労働市場の関係性」)では企業選定の理由として、「従業員の健康・働き方への配慮への関心が高い」結果が出ています。

また、社内に目を向けると、健康への取組は、誰もが関心のあることであること、テーマとして社内横断的に取り組めることができるため、他部署との交流など、普段生まれないコミュニケーションのきっかけになることが多くなっています。取組の推進メンバーにあえて若手を起用し、社員教育の一環としての活用も可能です。こうしたことを契機に、社員間の結束が高まることで、経営力の強化へ結びついていきます。

「健康経営」で従業員を元気にして、また一歩「いい会社」に近づいてみませんか!

お役立ち情報リンク

日本健康会議                 https://kenkokaigi.jp/

健康経営優良法人          

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html

健康企業宣言

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/tokyo/cat070/collabo271210-1/

東京都職域健康サポート事業         https://www.tokyo-cci.or.jp/kenkokeiei-club/06/

健康経営倶楽部                          https://www.tokyo-cci.or.jp/kenkokeiei-club/

「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

この記事の著者

屋代勝幸

屋代勝幸株式会社 会社の健康研究所 代表取締役 中小企業診断士

食品製造業に17年勤務し、営業・営業企画・販売促進・宣伝広報・商品企画・調達など多様な業務を経験、その後、外資系消費財販売卸業で人事総務に従事する。 現在は経営コンサルタントとして、健康経営推進支援、組織力向上、業務改善コンサルティングの傍ら、葛飾区経営相談員、同インキュベーションマネージャー、次世代リーダー職研修等講師、事業再構築補助金・ものづくり補助金をはじめとした事業計画書作成支援、執筆などの活動を行う。 <執筆>「月刊総務」特集記事、「企業診断ニュース」特集記事、中小企業活力向上ネクスト専門家コラム、ミラサポ特集記事、Jnet-21など多数 <資格>中小企業診断士、経営革新等認定支援機関、健康経営エキスパートアドバイザー、経営ゲーム「ビズストーム®」認定インストラクター、第一種衛生管理者ほか

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