- 2021-7-1
- ものづくり営業・販売促進
製造業のWEBマーケティング「①目的を明確にする」
「ホームページをリニューアルしたのですが、問合せが全然来ません・・・。」という相談を受けることがあります。これまでのホームページ(以下、HP)を刷新し、主要製品、設備情報、加工技術の紹介などはもちろん、写真や動画も豊富に掲載したのに・・・、というケースがほとんどです。HPを拝見すると、確かにコンテンツは充実しているように見えます。しかし、その後に私がする質問で、相談者は困惑します。「ところで、このHPに来た方に何を期待しているのでしょうか?」
中小企業の経営コンサルティングに従事して約15年、インターネット黎明期から今日に至るまで、インターネットを活用して売上を創出する、いわゆる「WEBマーケティング」を専門にコンサルティングを行ってきました。当然、成功ばかりではなく多くの失敗も繰り返してきました。しかし、成功事例・失敗事例を振り返ると、戦略的に取り組んでいるかどうかが成否に大きく影響すると言えます。このシリーズでは、技術力や自社製品を武器にBtoBの取引先を開拓したい中小製造業向けに、WEBマーケティングを戦略的に活用して事業拡大を実現する方法について、全5回に渡りお伝えしていきます。HPの戦略的活用の見直しや、HPのリニューアル、新規製作を検討している事業者様の参考にしていただければと考えます。
第1回目の今回のテーマは、「1.目的を明確にする。」です。
冒頭の例のように、目的が曖昧なままHPを制作していないでしょうか?いや、新規取引先開拓という目的を念頭に制作したという反論がありそうですが、その目的を達成できる具体的な施策をHPに反映できているでしょうか?…というのも、情報伝達に終始してしまい、その後の行動を促す仕掛けがないHPが出来上がってしまった結果、目的を達成できないケースを数多く見てきたからです。
具体的に考えていきましょう。「新規取引先の開拓」という目的の達成が意味するのは、HP経由での受注です。ただ、受注手続きがHP上では完結せず、ほとんどのケースで営業マンによる商談が必要になることを考えると、その前には必ず、ページ訪問者に「見積り依頼」、「問合せ」という行動をしていただく必要があります。それにも関わらず、その行動を促す情報が不足している、またはその行動を相手任せにしている、のいずれかになっているHPが多いのです。
なぜそういったHPになってしまうかというと、高い技術力、ものづくりへの想い、高性能な機械設備、これらの情報を相手が理解してくれれば、(勝手に)問い合わせてくるだろうという過信が強いからではないかと推測します。確かに、問い合わせてくれる取引先もいるでしょう。一方で、何も行動に起こさずにページを離れてしまう、いわゆる見込み取引先を何の接点も持たずに逃してしまっているケースが多いのではないでしょうか。こういったケースは、HPを活用する目的が明確でないことが原因です。
では、こういった事態を回避する方法について、次の3つのステップで考えてみましょう。「新規取引先の開拓」という目的を明確化していきます。
【目的明確化の3ステップ】
ステップ1:目的達成のために、HP訪問者に期待する行動は何か?を考える。
まずはHP訪問者に期待する行動を整理します。ここでのポイントは、固有名詞を用いた具体的な言葉で考えること、HP訪問者側の言葉で表現することです。
・〇〇技術に関する問合せをする。
・△△製品のカスタマイズに関して見積りを依頼する。
・□□技術の自社技術への応用可能性に関して相談する。 など
ステップ2:HP訪問者がその行動を起こすのに必要な情報は何か?を考える。
行動に至るには、その前に情報の認知と理解が必要です。その認知と理解が容易にできる情報を多面的に考えます。ここでのポイントは、自分がHP訪問者の立場に立ち、どのような情報が欲しいか?どのような疑問を持つか?を考えることです。自分ならどんな情報があれば、安心して問合せられるか?と考えるのも有効です。
・技術力の高さを証明する製作例
・これまでにオーダー対応した製品事例
・問合せから納品までの流れや日数の目安
・最小ロットや参考となるコストについて
・試作品の提示を用いた技術提案事例 など
ステップ3:HP訪問者にその行動を促すのに必要な機能は何か?を考える。
情報を理解したHP訪問者が、次の行動を起こし易くなる機能を考えます。簡単・便利・手間なく、このポイントを意識してアイデアを出しましょう。
・問合せフォーム(問合せ種別・緊急度を選択できる、入力項目は最小限に)
・見易い位置に電話番号表記(営業曜日、応対時間の明記)
・社内稟議に使えるPDF資料ダウンロード など
この3ステップは、取引先対応を行う全ての従業員が参加して行いましょう。実際の商談の流れを理解している、あるいは取引先とコミュニケーションをして仕事を進める役割の従業員の意見を聴くことで、これまでに自社で取引先ニーズを基にアイデアを考え出すことができるからです。また、より効果的に行うために第3者にファシリテート役を任せるのも有効です。戦略の方向性を決める上で最も重要な工程のため、確実に行いましょう。
HPを製作することは、費用を費やす以上、経営にとって投資です。投資であるならば、そこから儲けを生み出して回収することが当たり前です。
HPを、ただの情報発信ツールとして終わらせるのか、「見込み客を連れてくる営業マン」として機能させるのか、全ては戦略で決まります。今回紹介した【目的明確化の3ステップ】を実践していただき、WEBマーケティングの一歩を踏み出していただければ幸いです。
第2回目は、「2.市場を理解する。」です。是非ご覧ください。