製造業のWEBマーケティング「②市場を理解する」(リアライズ総合研究所 延島隆裕)

製造業のWEBマーケティング「②市場を理解する」

技術力や自社製品を武器にBtoBの取引先を開拓したい中小製造業向けに、WEBマーケティングを戦略的に活用して事業拡大を実現する方法をお伝えするシリーズ。前回の第1回目では、「1.目的を明確にする。」をテーマに、HPを制作する際にまず取り組むべき【目的明確化の3ステップ】をお伝えしました。この3ステップを実践すると中小製造業のHPに必要な情報や機能が具体的になるので、すぐにでもHP制作に取り掛かろうと考えがちですが、そのままでは独りよがりのHPになる可能性があるので要注意です。一旦、3ステップで出てきたアイデアや意見を客観的に評価し、現時点でのベストなWEBマーケティング戦略を練りましょう

この客観的な評価に役に立つのが、今回のテーマ「2.市場を理解する。」です。

ここでいう「市場」とは、自社の製品を販売する場のことであり、取引先となる「顧客」と置き換えることができます。しかし、その顧客は必要な製品を全て自社から購入してくれる、こんな素晴らしいことありませんよね。当然ながら、顧客(群)は自社と競合他社を比較し、最適な相手と取引をします。そのため、顧客だけではなく競合他社の動向にも注意を向けておかないと、片手落ちとなるでしょう。すなわち、市場を理解する際には、「顧客」と「競合」の両方の理解が必要となります。

まず、顧客を理解することから考えていきましょう。ここでいう顧客とは、これまで取引実績はないがこれから取引したい会社を指します。WEBマーケティング戦略を立案する際に、なぜ顧客の理解が必要なのかと申しますと、新規取引先を開拓するためです。顧客が購買活動を行うための情報収集手段の1つにインターネットで検索することが想定されます。その際に、顧客ニーズに応える情報や顧客が抱える課題を解決できる情報を自社のHPで発信していないと、購買候補先として認識されず販売機会を逸してしまいます。また、問合せに必要な機能をHPに備えておくことで、顧客がスムーズに問合せすることができます。そのため、顧客を理解しニーズや課題を把握した上で、新規取引先開拓に必要な情報は何か、必要な機能は何かを考え、自社のHPで満たしていくことが重要です。

では、顧客のニーズや課題は、何を調べれば理解できるのでしょうか?いくつかの例をご紹介します。

顧客の理解に役立つ情報

・顧客が属する業種・業界の市場規模と推移、業界動向、直面する課題など

・顧客の製品、各製品の売上構成比、製造設備、売上規模、業界内でのシェア、経営戦略など

・顧客の購買特性(いつ、どこで情報収集し、どのように購買するかなど)

・購買する際に重視するポイント(納期、コスト、品質、ロット、納入実績、技術力の証明、企業規模など)

・購買決定プロセス(社内での検討方法、決済権限者、購買担当者、決済までに要する期間など)

これらの情報は、業種・業界の統計データ、企業のIR情報、帝国データバンク等、公開されているものもあります。一方、公開されていない情報も多いと思います。その場合は、これまで取引実績がある顧客情報、過去の問合せ履歴、営業担当者の知識や経験、業界内の取引先へのヒアリングなどを基に推察することが有効です。定量的な情報に加え定性的な情報を広く集め、顧客の理解に努めましょう。

次に、競合を理解しましょう。ここでいう競合とは、自社と同製品を製造可能な技術力を有し現在競合関係にある会社、今後新規取引先開拓を進める上で競合になりそうな会社を指します。WEBマーケティング戦略を立案する際に、なぜ競合の理解が必要なのかと申しますと、新規取引先開拓において自社の優位性を発揮するためです。顧客はインターネットを利用して購買活動時の情報収集を行う場合があることを説明しましたが、その際、自社のHPだけでなく競合のHPも訪問し、必要な情報を探索します。その際、競合が自社よりも的確に顧客ニーズを満たす十分な情報発信をしていた場合、あるいは競合が自社よりも十分な機能を備えていた場合、購買候補先として競合がリードしてしまう可能性があります。また、競合が何を差別化要素として顧客に向けて情報発信しているか、どのようなマーケティング戦略を展開しているかを理解しておくことで、自社の強みをどのように発揮し優位性を築いていけば良いかの方向性を見出すことができます。そのため、競合の動向を理解し訴求内容やマーケティング戦略を把握した上で、競合に対し自社が優位性を発揮できる情報や機能を考え、自社のHPで満たしていくことが重要です。

競合の理解に役立ついくつかの例をご紹介します。

競合の理解に役立つ情報

・競合が属する業種・業界の市場規模と推移、業界動向、直面する課題など

・競合の製品、各製品の売上構成比、技術力、売上規模、業界内でのシェア、経営戦略など

・競合の取引先、各取引先の売上構成比、取引先内でのシェア、マーケティング戦略など

・競合の得意なこと、苦手なことなど

・競合のHPの掲載情報、ページ構成、備えている機能など

 

これらの情報は、顧客の情報と同様に公開情報を参考にし、またこれまで相見積もりで競合した競合情報などの公開されていない情報などを基に推察することが有効です。競合を理解する際にも、定量的、定性的な情報を広く集め、競合の理解に努めましょう。

ここまでお伝えした内容を振り返ると、経営戦略を立案する際に行う3C分析と同じだとお気づきの方もいらっしゃると思います。WEBマーケティング戦略の立案方法は、経営戦略の立案方法と同様です。そのためにはまず、Customer(顧客)、Competitor(競合)を理解することが重要です。なお、顧客と競合の理解のためには、情報を広く調査することが必要ですが、客観性を持つことに注意しましょう。情報収集の際、自社に不利な情報に目をつぶり有利な情報だけを集めたり、自社に都合の良い解釈をしたりすると、誤った判断につながります。それを防ぐ意味でも、戦略を展開した際の成功確率を上げるためにも、第3者に調査を依頼するなど、客観性を保った調査を行いましょう。

顧客と競合の理解を通じて、自社が行うべきWEBマーケティング戦略がより明確になっていきます。次に行うのは、3C分析のCompany(自社)の理解です。第3回目、「3.自社を理解する。」を是非ご覧ください。

この記事の著者

延島隆裕

延島隆裕(株)リアライズ総合研究所 代表取締役 経営コンサルタント 認定経営革新等支援機関 中小企業診断士

船井総合研究所在職時から約15年間、中小企業の経営力向上コンサルティングに従事。特に小売業、製造業においてインターネットマーケティングを活用した売上向上・収益改善の実績多数。新規事業を責任者として立ち上げた経験も活かし、経営者と従業員の双方の目線で、現場で手を動かし成果を生み出す支援には定評がある。プロの気概、現場主義、成果主義がモットー。

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