- 2025-2-4
- 取材・インタビュー
金型~配合~製造の一貫生産体制で顧客ニーズに応えるトータルゴムメーカー
東京都大田区、雑色駅から徒歩で15分に立地する株式会社ハタダ.の本社工場を訪問しました。同社は1955年の創業以来、多様な顧客のニーズに合わせて、ゴム製品の金型設計から配合設計、製造の一貫生産を行うトータルゴムメーカーです。
第一回目の今回は、株式会社ハタダ.の沿革、一貫生産体制だからこそ実現できる短納期対応や様々な試作方法、情報セキュリティ面での強みについて話をうかがいました。
DNAとして刻み込まれたゴム配合へのこだわり
御社の創業の経緯ついて教えてください。
畑田氏:株式会社ハタダ.(以下、当社)は横浜ゴム株式会社のタイヤの配合技術にいた私の叔父が、69年前に独立して作った会社で、来年(2025年)には70周年を迎えます。その当時のDNAが未だに続いていて、お客様の仕様にあったゴム、例えば電気を通すゴム、金属と同じような性質にしたい、燃えない等、そういったお客様の好き勝手な要求に合ったゴムになるようゴム材を配合して製品にして納めています。

株式会社ハタダ.代表取締役 畑田芳則氏
一貫生産体制を活かして、更なる顧客価値を実現
ゴムとバネの複合製品に代表される、御社の特徴の一つであるゴムと異素材の接着技術について教えてください。
畑田氏:制振ゴムですね。一言で金属といってもいろんな金属、例えば鉄、SUS、真鍮、アルミとかがあるのと同じようにゴムにもたくさんの種類があります。ですから、金属の種類がたくさんあって、ゴムの種類もたくさんある。さらに接着剤も星の数ほどある中で、それぞれがどういう接着剤を使うと一番強固につながるか?というような点で、非常にノウハウがあります。何をチョイスして、焼き付けるのか、といった技術を持っております。
試作受注を取り込んで、高付加価値の製品を提供
試作品受注への取り組みについて教えてください。
畑田氏:だいたい、売上の6割が量産品、4割が試作品です。試作品は付加価値が高いので、私どもとしては試作の売上をもっと伸ばしたいと思っています。今後の日本において価格で勝負して生き残るというのは、私はちょっと厳しいだろうなと思っています。ですので、例えば、1週間という究極の納期で勝負する。多分本気でやったらうちが日本で一番早いと思っています。ポイントは一切アウトソースしないことですかね。あとは他では絶対できないような配合。うちの製品の大体7割はお客様に合わせた配合です。
御社ではどのようにお客様からの試作要求に対応していますか?
畑田氏:試作には大きく4つのやり方があります。1つ目は試作用の金型(以下、試作型という)をアルミや鉄で作る場合です。試作型と本型(量産型)との違いは、試作型が一個取りで一つの製品しか取れないのに対して、量産型では複数の製品が取れます。そこで一個取りの試作型を作って評価するという方法です。2つ目は樹脂型を使う場合で、これは上限温度があり、シリコン材の場合のみ対応できます。3つ目は3Dプリンターを使う方法で、これもシリコンライクですね。積層ですのでデザイン的な部分を見るような場合に使います。そして最後、4つ目が切削加工です。いまは切削技術が非常に高くなってきていて、いろいろなやり方があるので、ゴムを切削で加工します。全部を自社内でやるわけではないんですが、協力工場にも協力していただいて、かなり早いスピードでやります。お客様の試作段階が最初の段階なのか、もう量産間近なのかといったことを、お客様と会話をしながら判断してご提供しています。

同社で製造可能なゴム製品の例
試作品受注において御社ならではの強みを教えてください。
畑田:切削加工をしている会社は、通常、一般の加工材、ゴム板材を購入していますが、当社は金型もミラブルタイプ(※)のゴム材を成形して加工します。例えば、市販のNBRの板材で加工して試作品を作り、その試作品からデータをとって評価をしても、本番で加工するときにはミラブルタイプのゴムを成形するとなると、素材が変わり、データも違ってしまいます。そうなると初めから評価をやり直さないといけなくなってしまいます。うちの場合、量産時と同じミラブルタイプのゴム材で試作品が作れます。ですから、うちではこのことを全面に出していて、試作だけでも結構ですよ、と言っています。
※ミラブルタイプ:加硫材を加えて練り上げるタイプのゴム材、成形加工時の材料として用いる

同社で使用している切削加工機
御社での情報セキュリティ、情報管理について教えてください。
畑田氏:社内で取り扱っている製品は主に開発品ですので、発売する半年、1年前の製品がゴロゴロある状況なんですね。ですので、お客様が絶対にその情報も製品も外に出してほしくない、と思われるのは当然ですよね。うちは全て社内で完結するので、情報セキュリティの面でも非常に評価されているのだと思います。情報セキュリティへの取り組みは、私は生き残るための大きな要素の一つだと思います。
ゴムの配合、ゴム材ごとの収縮率など、かなりノウハウがおありだと感じました。そういった社内情報の管理で取り組んでらっしゃることはありますか?
畑田氏:中国の協力工場には原則すべての材料を日本から送っています。A 練り(促進剤を入れていない状態のゴム材料)の状態で送るようにしています。ゴム材の配合に関する情報が一番のうちのノウハウ、強みです。配合情報を管理しているパソコンには、社長の私ですら入ることができません。また、最終的には、お客様の図面に「メーカー:株式会社ハタダ.」と入れていただくのが大事なところだと思っています。
業種 ゴム製品製造業(精密工業用ゴム製品製造)
設立年月 1955年4月
資本金 1,000万円
従業員数 45人
代表者 畑田芳則
本社所在地 東京都大田区南六郷2丁目38番18号
電話番号 03-5710-2818
公式HP https://www.ha-ta-da.co.jp/