長寿企業のあゆみとプレス技術の真髄(田中プレス工業株式会社 インタビュー①)

田中プレス工業株式会社は、自動車業界向けの金属加工において技術力に定評のある創業85周年を迎えた老舗企業です。第一回は、同社製造部長の大野康寛氏と営業部主任の木原祐氏に会社の歴史や社是についてお話を伺うとともに、同社の強みである高い技術力に迫ります。

笑顔の木原主任(左)と大野部長(右)


相模原の地で刻んだあゆみと原点

―御社の事業内容と歴史について教えてください。

 木原氏:当社は昭和34年(西暦1959年)設立ですが、創業は昭和16年(西暦1941年)ですので、今年で創業85周年を迎えます。もともとは東京都大田区大森で創業しました。昔から大田区は工場が多い地域で、当社もその中の一社でした。その中で車のオイルフィルターの関連部品を生業にしていた企業同士が相模原に移ってモノづくりをしようということになり、65年前に今の場所に移ってきました。当時、多くの工場が移転してきましたが、今では弊社だけがここに残っています。

 

―御社は社是として「基本理念」があり、それとは別に5つの「指針」があります。その一つの「相手の立場を考える」という点が気になりました。

木原氏:基本理念は「最高の技術と物づくりを追求し良質な製品とサービスをお客様に提供するため、指針を基に継続的な維持・改善活動に常に取組む事とする」です。当社の5つの指針は、基本理念が求める改善活動の基盤を成すものです。社員一人一人が日々これを胸にモノづくりをしています。製造業で働く人々は、自分の仕事や工程を考えることで精一杯になり、周りの人を気遣う余裕がなくなることが多いと思います。当社ではそういった気遣いを大切にする考えがあり、「相手の立場を考える」という指針を設けたのだと思います。例えば、使用後の工具を元の場所に戻すときに、次の工程の作業者が取りやすいように置くようにしています。また、当社にとって量産品の製造に使用する金型は命と言えるものですが、それを次に使う人がスムーズに気持ちよく使用できる状態を保てるよう、常にメンテナンスするようにしています。このように、「相手の立場を考える」という指針により、部署を超えた他者への一つひとつの配慮を行うことで、不良品を作らないことや、スムーズな業務効率につながると考えています。

 

大野氏:外部の協力会社に対しても、同じことが言えます。塗装を外注する業者に油がベタベタの状態の部品を送ると、塗装前の処理液が汚れてしまいます。そのため部品の加工に使用する油を減らすよう取り組んでおり、そういった配慮が輸送や塗装にかかる時間の短縮や効率化に寄与していると思います。

それだけでなく、当社の関係先の皆さんとは常に対等なお付き合いをしたい、そんな気持ちでいつも仕事をしています。お弁当屋さんにも「この物価高ではオタクも厳しいでしょうから、値上げしたらどうですか?」とこちらから言っていますよ。(笑)

 

木原氏:当社は様々な関係先やステークホルダーの皆さんと良好な関係を築いているからこそ、万が一、納期遅延や突然の仕様変更などがあった場合でも、お互いに協力して問題解決する体制ができています。これは日ごろの関係性が生きていると言えます。営業マンである私は特にそう感じますね。

清潔感のある田中プレス工業本社工場

 

「ここでしかできない」技術力と職人技

―御社ならではの特徴や持ち味、こだわっていることなどあれば教えてください。

木原氏:当社の営業品目の大半は金属プレス加工品です。その中でも、絞り加工(金属の板を金型に押し当てて“円筒状の立体形状”に変形させる加工)、特に、製品の直径以上の深さに絞り加工を行う深絞りプレス加工は、業界内でも技術力と品質の面で高く評価されています。トランスファープレスと呼ばれる、複数の金型を組み合わせて、少しずつ何回かに分けて成形していく工法を採用しています。この深絞りプレスを行える会社は国内で少しずつ減少傾向にあります。

深絞りプレスによる円筒状の製品は、自動車のオイルフィルターを覆うケースとして使用されます。オイルフィルターは、エンジン内を循環するオイルをろ過する重要な部品です。当社はそのケースと蓋になる部分を製造してアッセンブリを行う会社経由で、自動車・建設機械メーカーや自動車関連の小売業に卸しています。

ここでの当社の強みは、塗装済みのカラー鋼板の深絞り加工ができることです。他社でカラー鋼板を深絞り加工しようとすると、塗装が剥がれたり傷が付いたりする課題に直面しますが、当社の技術力はそれらを解決しています。

 

大野氏:その上、当社が使用するカラー鋼板には塗装から潤滑被膜が出てくる特性を有しているため、深絞り加工する際に表面に潤滑油を塗る前処理を行うことなく加工できます。あらかじめ塗装がしてあり塗装業者に品物を送る必要がないため、生産効率が良く脱炭素やカーボンニュートラルにも貢献できると言えます。そうした点が当社の強みだと考えています。

 

木原氏:また、金型の設計・製作を社内で行っているのも強みの1つです。金属には一度変形した後に元の形に戻ろうとする加工塑性という特性があります。一方で、当社の設備にも、使い込むうちにプレス精度が変わってきて、癖とも呼べるような特性が出てきます。当社には、これらを複合的に考慮して金型を設計できる技術力があります。また、その金型を設備にセットして、微調整しながら寸分違わぬ形状に加工する、職人技とも言えるオペレーターの技量があります。

こうした強みを長年にわたって自動車業界から評価していただき、おかげさまで、当社のオイルフィルター用ケースは内燃機関をもつ自動車を製造するメーカーの大半に使用いただいています。乗用車、バスやトラックといった商用車、建設機械のほぼすべてのメーカーを網羅しています。

田中プレス工業の技術力のつまったカラー鋼板の深絞り加工

 


会社名:田中プレス工業株式会社

業種   金属加工、金型設計・製作、測定解析

設立年月          1959年7月

資本金              4,000万円

従業員数          34人

代表者              田中雅敏

本社所在地      神奈川県相模原市緑区西橋本4-2-2

電話番号          042-772-1351

公式HP           http://www.tanaka-press.co.jp/

この記事の著者

種本淳利

種本淳利中小企業診断士

東京都中小企業診断士協会中央支部所属。国際部に所属。総合商社で再生可能エネルギー由来の発電事業に従事し、国内の風力発電やバイオマス発電などの新規事業開発からアセットマネジメントを推進中。海外駐在歴は台湾、アラブ首長国連邦、インドネシア。

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