- 2025-1-7
- 取材・インタビュー
精密機械部品加工の圧倒的な知識と経験~お客様の期待を超える成果を追求する精神~
大田区大森中にある王大工業株式会社は、精密機械部品加工の高い技術力を武器に、部品の設計から製造、組み立てまでの多種多様の完成品を提供している町工場です。創業以来受け継ぐその高度な技術・技能、人や町に優しい経営が評価され、過去に2度(1997年、2016年)大田区優工場に認定されています。本記事では、専務取締役 中村大樹氏にお話しを伺いました。第一回の今回は、王大工業株式会社の歴史と事業内容、ものづくりへのこだわりについて紹介します。
金属加工一筋の技術と信頼~創業以来の歩み~
―創業から現在に至るまで御社の沿革についてお聞かせください。
中村氏:王大工業としては、今から約50年前の1973年に機械部品製造および電気配線・組立・販売を目的として創業しました。しかし当社のルーツはもう少し古く、前身は私の妻の祖父が大田区山王で始めた小型金属部品の加工業で、小型の工作品の平面や溝を削るセーパーという機械で加工を行っていました。現在の本社工場は1990年に完成し、これを機に精密機械部品の加工業務を拡大しました。今では複数のマシニングセンタや汎用旋盤、三次元測定機などの最新の機械も取り揃え、これまで一貫して金属加工を中心に事業を行っています。
熟練の技術と豊富な経験を有する従業員による精度の高い金属加工
―現在の主な事業内容と特徴についてお聞かせください。
中村氏:精密機械部品の加工・製造を行っています。加工対象は主に小~中物サイズで、約9割がA4サイズに収まります。多品種少量生産でさまざまな分野の製品を生産しています。単品受注や試作品の製作がほとんどで、最も多いご依頼は1個単位の制作です。私たちが作る部品は普段の生活で目にする機会はほとんどありませんが、一例として、印刷機の紙を巻き取るローラーの一部を製作しています。このローラーの両端には突起があり、それらを同軸に加工する必要があります。当社では、この加工精度を公差0.01mm以内に収めています。用途が分かる部品もあれば、最終的に何の機械の一部になるのか分からない部品も少なくありません。
―さまざまな分野から注文を受けているようですが、他にはどのような製品があるのですか?
中村氏:カメラを構成する部品を加工しています。その他には、測定機器、航空機関連、医療設備、食品加工機械など、さまざまな分野から注文を頂いています。毎月の売上は分野によって変動しますが、一年を通して安定した需要があります。
―御社の強みを教えてください。
中村氏:加工に関する知識と経験です。現在、工場で働く従業員は30~50代の4名で、皆この業界で10年以上のキャリアがあり知識も経験も豊富です。工場内では、各従業員がマシニングセンタや旋盤に向き合って、何工程もある一連の加工を非常にスムーズに施していきます。図面通りの精度での加工はもちろんのこと、図面がない場合は現物やお客様へのヒアリンリングから図面を起こして対応することもできます。複雑な構造の部品が段階的に形成されていく様子には、長年の経験に支えられた熟練の技術を感じます。私たちはお客様から頂いたご注文に対して常に「お客様からの要望以上のもので納品する」ことを意識して取り組んでいます。
―すばらしいものづくりの精神ですね。「お客様からの要望以上」とは、具体的にどのようなものでしょうか?
中村氏:図面にある矛盾に気づき、まず確認する。これが、私たちの現場で起きていることです。例えば、お客様から送られてきた図面を見て、この寸法だと部品がうまく機能しないのではないかと違和感を覚え、すぐさまお客様に問い合わせたところ、設計が変更されたことがあります。誤った寸法の部品を納品せずに済みましたし、お客様は無駄な注文・無駄な時間を回避できました。
また、納期の短縮にも強いこだわりがあります。お客様の注文に効率的かつ迅速に対応するために社内外の段取りを整える工夫を常に行っています。少しでも早くお客様に納品するため、当社では対応しきれない工程は、大田区のネットワークを活用して地元の会社と連携して取り組んでいます。こうした取り組みの積み重ねにより、お客様からの信頼獲得にもつながっています。
汎用旋盤からマシニングセンタまで多様な機材により精度の高い機械加工を実現
―2019年に新たに旋盤を購入されていますが、複合旋盤ではなく汎用旋盤を購入されたのはなぜですか?
中村氏:私たちが受注する部品は単品物が多いため、数物の加工を得意とする複合旋盤よりも汎用旋盤の方が適しています。複合旋盤の場合、プログラム入力や刃物のセット、座標計算など加工以外の時間をとられてしまい、むしろ効率が悪化してしまうんです。
―新型のマシニングセンタ導入に至った背景を教えてください。
中村氏:オークマ製のマシニングセンタを導入したのは2019年です。当時は徐々に展示会に出展しだした頃で、新しいジャンルの加工を始めたいと思って購入しました。従来のマシニングセンタよりも加工精度・速度・操作性が向上し、これまでよりも大型のワークが加工できるようになりました。新しく搭載されたタッチパネルにより、使い勝手もとても良いものになりましたよ。最もよい影響があったのは加工精度で、従来よりも大幅に向上しました。これにより、従来は精度を補うためにもう1工程必要であった作業が不要となり、コストダウンと作業の効率化が実現し、お客様の要望にもより迅速に対応できるようになりました。
―キーエンス製の三次元測定機を導入されています。そのメリットや特徴を教えてください。
中村氏:当社がこの測定器を導入したきっかけは、お客様から三次元データによる製品検査証明書の要望をいただいたことです。この測定器は、他の測定器と比べてコンパクトで場所を取らず、温度管理が不要という特徴があります。その結果、これまで当社の検査体制では対応できなかった測定が可能となり、大きなメリットをもたらしました。
(撮影:保科彰治)
会社名 王大工業株式会社
業種 精密機械加工
設立年月 1973年2月
資本金 1000万円
従業員数 6人(2024年11月現在)
代表取締役 中村みさ子
本社所在地 〒143-0014 東京都大田区大森中1-5-8
電話番号 03-3762-7515(代表)
公式HP http://ohdai.co.jp