転写シールを文化に(株式会社扶桑 富田社長 インタビュー②)

会社の認知度をあげる活動と、展示会の位置づけ

第一回では、株式会社扶桑の歴史と事業内容、強みなどについて紹介しました。第二回では、3代目代表取締役である富田成昭氏が、入社後に取り組んだことを取り上げます。

歴史の長さだけではなく、信頼される会社へ

―入社後に取り組んだことを改めて教えてください。

 富田氏:私の入社当時は、4次請け、5次請けの仕事がほとんどでした。メーカーがいて、代理店がいて、大手印刷屋がいて、中堅印刷屋がいて、商業印刷屋がいて、うちがいるみたいな。うちはシールだけ納める形です。そういった商流だと、私たちのシールはどうあがいても安くなる。なので、間をぶっ飛ばして、広告代理店から直接仕事をもらえる位置にいくことを狙いました。そのために必要となるのが、データ処理も含めてデザインができる人材で、その採用に取り組みました。

また、3年ぐらいかけて、外注の内製化やコスト削減に徹底的に取り組みました。私が入社して驚いたのはリース契約の多さで、不要なものはすべて解約しました。また、当社の原価の内訳として、資材の製版費用が大きなウェイトを占めますが、それを3分の1に削減したりとか、当時新電力が流行り始めた頃だったので、電力会社を変えただけで年間30万円下がったりとか、そういうことを積み重ねて入社後1年で黒字化を図りました。

 

―広告代理店から直接仕事をもらえる位置にいくにあたり、会社の認知度を上げるために、どのような活動をされたのでしょうか?

富田氏:最初は、ホームページがちょっとお粗末だったので、まず見てもらえるようにリニューアルから行いました。また、私たちはお客様の製品を作ってはいたものの、自社のことを直接PRできるものがなかったため、自社のサンプルを作り始めました。その際、例えば肌に貼るシールは、安全性の成分やパッチテストの結果が必要となりますが、お客様が実施したデータは持っているものの、自社名義ではなかったんですね。したがって、そういったものを自社名義で整備したりしました。私たちは社歴は長いのですが認知度が低いため、会社としての信頼度は決して高くなかった。それを克服したかったですね。

あとは、展示会に出展をして、そこで集客しました。私が昔就職活動をしていた時、ベンチャーで展示会出展が選考項目の一つに入っている企業があり、ちゃんと準備をすれば学生でも契約がバンバン取れる、といった成功体験がその時にあったんですね。その成功体験から、話を聞きたいという人に来てもらえるように、自分たちで仕向けていく必要性を感じていました。

株式会社扶桑玄関にて 代表取締役社長 富田成昭氏

 

 

―いろいろな賞を受賞されたり、葛飾ブランド「葛飾町工場物語」にも認定されていますね。

富田氏:はい、2016年度に「葛飾町工場物語」に製品認定されています。会社の信頼度向上には、行政からのバックアップが大きなアドバンテージになると考え、応募し認定いただきました。私と父は50歳の年齢差があるので感覚がまるっきり異なり、私がやろうとすることはすべて噛み合わないんですね。でも葛飾区からの認定というのは、父にも理解されやすいと思ったんです。取り組みは私が進めるけど、当時の代表は父だったので、父に表彰式に立ってもらうなどの配慮もしながら、会社としての認知度を上げつつ、社内のベクトルも合わせていきました。

また、2017年度「東京ビジネスデザインアワード」で最優秀賞を受賞し、自社初のBtoC向け製品「irodo」の商品化をスタートさせました。2019年度には「KIDS DESIGN AWARD」でキッズデザイン賞や、「おもてなしセレクション」で最優秀賞を受賞しています。

2017年度「東京ビジネスデザインアワード」受賞式 (前から2列目、左から5番目が富田成昭氏)

 

 

展示会は新しいものを生み出す機会

―どのような展示会に、年に何回くらい出展されているのですか?

富田氏:小さい規模のものも入れると年に4回くらいですね。単独で出展するのは、プレミアム・インセンティブショーやギフト・ショーです。小さいものとして、共同出展ですが葛飾区の支援により、雑貨エキスポなどがあります。あと年1回は全然関係のない展示会に出そうとしています。今までに出展したのは、「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW」などで、次に考えているのはウェディング関連の展示会です。どこでどんな出会いがあるのか分からないので、新たな需要を生む可能性があると考えています。

私たちはファクトリーブランドなので、展示会ではOEMの話が来ることもあり、それはもともと狙っていたところですが、それ以外にも、これをもうちょっとこうできないかという相談だったり、単純に仕入れたいっていう人たちもいますし、一般の方から意見を聞く機会にもなっています。

―展示会出展において、どのようなことを意識されていますか?

富田氏:お付き合いのある会社などからすれば、私たちが作っているものは何も新しくないのですが、知らない人たちに私たちの技術を届ければ、そこからきっと新しいものが生まれるのだろうなと思って、それを狙って展示会に出しています。業務に慣れ、知識が身についてくると、お客様のご要望に対して「何とかやってみよう」といったチャレンジ精神が薄れ、「これは当社の領域ではない」と思考が固定化しがちです。そうした凝り固まった発想をあえて打ち破るためにも、あえて全く関係のない分野の展示会に出展することが有効だと考えています。その中でも、展示会ごとにテーマを決めて押し出す製品をはっきりさせて出展することを意識しています。

展示会には私と1〜2名のメンバーで対応し、毎回異なる部署から選出しています。ただし、従業員の約7割が女性であるという背景もありますが、私を除き全員女性のメンバーで構成しています。これは、女性向けのアイテムが多いという理由に加え、気づきのポイントが男性とは異なるため、ユーザーにとっても当社にとっても多くのメリットがあるからです。

自社製品がユーザーに受け入れられる喜びを実感してもらうと同時に、展示会で得たフィードバックを各自の業務改善に活かしてもらいたいと考えています。

展示会でirodoを出展


業種   シール・ステッカーの製造および販売(シール印刷業)

設立年月          1964年2月

資本金              1000万円

従業員数          10人

代表取締役      富田成昭

本社所在地      〒124-0012 東京都葛飾区立石8丁目41番2号

電話番号          03-3691-6490

公式HP           https://kkfusou.co.jp/

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