防衛省に認定された銘板製造の技術力(有限会社アート銘板工業)

耐久性に優れた機器銘板類

有限会社アート銘板工業は、アルマイト銘板の製造を主に、ステンレス・真鍮の銘板の製造、スクリーン印刷等も行う加工業です。同社の強みは、難易度が高い0.1mmの薄型アルマイト処理板のエッチング加工を高品質で実現する技術力です。1976年2月に、最終顧客である防衛庁(現・防衛省)より、航空機等における銘板類の陽極酸化被膜処理について、認定工場として認められました。以降は3年ごとに関連会社による監査にて各種検査規定に合格しており、技術力の高さが裏付けられています。そんな同社の製品を紹介します。

アルミニウムの厚さが0.2mm〜0.006mmまで圧延したものをアルミ箔と定義していますが、同社はアルミ箔でもエッチング処理が可能で、品質が高いことが強みです。薄くなるほど穴が開きやすくなるため、他社が同様の品質で実現することが難しく、0.3mmでも敬遠されることが多いようです。創業者の相田深吾氏と現工場長が研究を重ねながら手法を作り上げ、以降50年近くにわたり、技術優位性を確保し続けています。薄板で実現できると、軽量化につなげられるため、重量制約が厳しい機器向けに適しています。

エッチング銘板は耐久性に優れ、長期間使用する機器銘板や屋外用銘板として使用されることが多いです。写真にもある通り、同社では、防衛省(旧 防衛庁)向けの機器銘板や、各種輸送用機器の銘板などにも採用されています。

有限会社アート銘板工業が手掛ける銘板群

 

 

冨嶽三十六景 東海道江尻田子の浦略圖をモチーフにした銘板サンプル

 

銘板で再現した浮世絵

葛飾北斎が描いた冨嶽三十六景。その内の一枚である、「東海道江尻田子の浦略圖」をモチーフにした、田子の浦港管理事務所の銘板サンプルです。現在の静岡県田子の浦港の風景であるとされており、場所を示すイメージとしてぴったりの浮世絵の選定です。左上の題名記載もオリジナルを忠実に再現していて、遠くの小さい人も精密に描かれ、波の線も細やかです。また、富士山の青や、松原の緑が再現されていますが、色については、四色(Cyan(シアン)、Magenta(マゼンタ)、Yellow(イエロー)、Key plate(キープレート))のフィルムを重ね合わせることで様々な色を実現できており、四色(CMYK)のフィルムをズレのないように精密に貼り合わせる作業を経て完成しています。作成にはおよそ3日を要しました。

自社試作のピックガードを装着したギター(写真協力:相田氏)

 

自社製品参画への取り組み(ギターピックガード)

同社は受注生産のみですが、自社製品への参画を目指して製品対象を検討し試作を続けています。その内の一品として、相田氏の趣味であるギターから着想したのがピックガードです。PCで絵柄データを作成し、アルミエッチングしたものを加工して完成させました。デザインから一貫生産できるため、所有者のこだわりに寄り添うことが可能です。

この記事の著者

木内義貴

木内義貴中小企業診断士

愛知県出身。大学卒業後、自動車部品製造業で車載用組み込み制御機器のソフトウェア技術者として従事。今後のキャリア形成と日本経済活性化に貢献すべく中小企業診断士を目指し、2022年5月に登録。現在は、企業内診断士として各種支援活動や執筆活動を行う。愛知県中小企業診断士協会所属。

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