ドラム缶部品製造で培った品質を強みにゴム製造へ挑戦!~人を大切にする経営を貫く~(みずほ金属インタビュー②)

会社の成長と存続による「家族経営」から「組織経営」への変遷

第一回では、ミズホ金属株式会社の経営理念・ビジョン、事業、強み(品質)など紹介しました。第二回では、先代からの事業承継、ゴムパッキンメーカーとのM&A、福島県南相馬市の新工場設立についてお話を伺いました。

 

苦しい経営状況下で先代から事業承継

2013年に先代から事業を引き継いだ時の状況をお伺いできますでしょうか。

岡田氏:2009年から債務超過の状況であり、事業を引き継いだ当時は父親のことをとても憎んでいました。1997年頃から日創研で経営のことを私が少しずつ学んでいくうちに、父親の経営が雑で戦略が練られていないことに気づき、父親のことを全く尊敬できなかったんです。ただ、事業を継承して約12年が経過して、昨年他界した父親のことを今となって考えてみると、感謝と尊敬の念しかありません。「経営の神様」と呼ばれていた稲盛和夫先生を超えて、私にとって父親はもっとも偉大な存在です。

 

ゴムパッキンメーカーとのM&Aで製造業へ参入

2016年にM&Aをされた時はどのような状況だったのでしょうか。

岡田氏:ドラム缶パッキン市場で約30%のシェアを占める主要な仕入れ先のゴムパッキンメーカーから廃業したいという申し入れを受けました。当社としては、廃業されたら困るので、「御社の事業を当社で引き取るからミズホ金属の社員としてゴム製造を続けてくれないか?」と打診すると、それを快諾してくれたんです。私はM&Aは結婚だと思っていて、今までお互い異なる事業を営んできて、運命のタイミングで2つの会社が一緒になる。最初はお互いに気を遣って、良い関係性を築いていくんですが、時間が経つにつれて段々とその関係性に慣れてきて、朝礼など基本動作が疎かになっていくんです。改めて、M&Aは結婚生活と一緒で、相手を思いやり、感謝の気持ちを忘れずに、凡事徹底することが成功の秘訣だと思います。

 

M&Aは結婚そのものなんですね。それではM&Aされた後、どのような苦労がありましたか。

岡田氏:買収するには大きなリスクが伴いました。いままで商社でやってきた当社は、製造に関するスキル・ノウハウが全くなく、社内に製造に詳しい人材がいなければ、設備の操作方法や材料の知識など全くなかったので、不安しかなかった。ただ、そんな状況でも私はドラム缶のパッキンは社会インフラにとって重要な部品であると心の底から思っていたので、迷わずに製造業へ飛び込みました。

 

福島県南相馬市に新工場(福島スマートファクトリー)を設立

2024年に新工場を設立された経緯をお聞かせください。

岡田氏:当時は南相馬市に特別の思い入れもなく、震災からだいぶ時間が経ち、復興は既に終わっているものだと思っていました。そんな中、南相馬市に向かう国道6号の道中で、バリケードや残置された建物を目の当たりにした時、復興ではなくまだまだ復旧の段階にあると痛感しました。そして、この復旧段階から脱するため、南相馬市に工場を新設することで少しでも復旧の一助になれればと思ったんです。

福島スマートファクトリーの外観(上空から撮影) (ミズホ金属株式会社から提供)

 

まだまだ復興から程遠い南相馬市を助けたかったんですね。工場の新設には莫大な投資が必要だったと思いますが、どのような意図があったのでしょうか。

岡田氏:工場の新設には3つの目的がありました。まず1つ目は、社会貢献です。被災地へボランティア活動の一環として復興支援には関わったのですが、地域支援を真剣に考えたら、地域経済の活性化の側面で関わりたかった。次に2つ目は、従業員満足です。新工場の製造工程をオートメーション化することで、これまで人海戦術により、繁忙期では多くの残業(約100~200時間)を強いられてきた労働環境を変えることで、給料を維持したまま、作業の生産性を高めたかった。最後3つ目は、お客様満足です。品質と価格は相関関係があり、価格を下げると品質も下がり、価格を上げれば品質も上がるのですが、最新技術を備えた設備で運営する新工場で、生産性と品質を向上させながら、価格低減を図りたかった。

 

工場の新設を社会的意義も込めて決断されたのですね。続いて、新工場で保有されている設備や機能ついて教えてください。

岡田氏:新工場には最新技術を備えた多くの設備があります。具体的には、タッチパネルで操作が簡単なインジェクションプレス機(2台)、自動プレス・脱型・材料仕込みの工程をボタンひとつで操作可能なコンプレッションプレス機(8台)、いままで手作業でバリ取り1時間あたり500個の生産能力だったものを3,000個まで向上(6倍)させた自動バリ取り機(2台)、旧設備では外観検査に1個あたり4秒かかっていたものを0.5秒まで短縮(1/8)させた自動外観検査機(2基)など保有しています。また、これら一部の設備が組み込まれたバーコード式の生産管理システムを遠隔でコントロールすることで、24時間365日フル稼働できるオートメーション工場を目指しています。そして、新工場に関連する機能として、2023年にゴム製品を販売する会社(ミズホゴム株式会社)を南相馬市に設立し、その社長として、当社の常務取締役である宮澤政江氏に任せることにしました。

福島スマートファクトリーの外観(正面から撮影)(ミズホ金属株式会社から提供)

 

ミズホゴムの社長に就任された時はどのような心境でしたか。

宮澤氏:急転直下というより自然な成り行きでした。私も被災地の復興支援の一助として、ゴム製品の販売を通じて、誰からも「いい会社だね」と言われる会社を目指し、南相馬市の地域の皆様に頼られる存在であり続けたいと考えています。

(キャプション)ミズホゴム株式会社 代表取締役 宮澤政江氏(左)と岡田氏(右)(写真番号2-3)

 

組織経営としてのあるべき姿を模索

創業から現在に至るまで会社の規模が大きくなり、従業員も増えてきていますが、事業の運営についてどのようにお考えでしょうか。

岡田氏:創業当初は数名だった会社が、創業46年目の現在では約30名規模の会社となり、これまでの家族経営から脱却し、組織的な経営のあり方や回し方が非常に難しいと感じています。そんな中、以前、日創研で学んだバーナード組織論にある「共通の目標」「貢献意欲」「コミュニケーション」の3原則に照らし合わせて、組織経営のあるべき姿を現在も模索しています。


業種   ドラム缶部品の製造・販売およびゴム製品の製造

設立年月          1979年8月

資本金              1,000万円

従業員数          30人

代表者              岡田 真一

本社所在地      東京都葛飾区堀切1-25-9

電話番号          03-6657-6400

公式HP           http://mizuho-k.co.jp/

この記事の著者

秋田謙作

秋田謙作中小企業診断士

2022年5月中小企業診断士登録。東京都在住。現在は大手通信会社の管理職としてデータ分析・生成AIなどDX関連や組織人事業務などに従事。趣味はドライブ、テニス、ランニング。

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