未来に向かって走り続ける 人がつなぐ企業永続のリレー(有限会社アート銘板工業③)

「人」が永続のエンジン

今回紹介する有限会社アート銘板工業は、京王線つつじヶ丘駅から北西に向かった中央自動車道に程近い住宅街に位置します。同社の強みは、難易度が高い0.1mmの薄型アルマイト処理板のエッチング加工を高品質で実現する技術力です。お話をお伺いしたのは、専務の相田智克氏(以下、相田氏)です。相田深吾氏(相田氏の父)が同社を創業してから60年を超え、永続的な発展のため家族内承継を進めている最中です。

第三回目の今回は、営業に関するお話や、社内連携力の秘訣、今後の抱負などをお伺いしました。

有限会社アート銘板工業 専務 相田智克氏

 

創業時の開拓者精神を取り戻す

それでは営業についてお伺いします。相田氏含めて3名とのことですが、担当企業の棲み分けの基準はありますか?

相田氏:厳密な基準はありませんが、基本的には最初に企業様と仕事をした人を担当とする方針です。後に、どの技術に詳しいかで担当を変更するなど、企業様に合わせて最適化を図ることがあります。

 

そのうちのお一人は、中途採用で入社されたようですが、社内に変化はありましたでしょうか?

相田氏:ありました。その方は、同業他社で数年前に働いた経験があり、開拓専門の役割だったそうで、当時のお客様のコネクションを持っていて、飛び込み営業に強みがある方です。入社後も引き続き開拓を進めていただいています。父の時代には1日100件回ったりしていたようですが、最近は、昔からのお客様や紹介で満足してしまっていたこともあり、開拓者精神が薄れていたかもしれません。入社いただいて当社に新しい風が吹いて良かったと思っています。

 

そのような状況下でも、貴社として大事にしている営業スタンスなどがあれば教えてください。

相田氏:その中途入社の方には、前に在籍していた会社さんに迷惑がかからない範囲で仕事を受けるように、と伝えています。当社では同業の方もお客様になることが多いです。そのため、そのお客様が取引している会社さんに営業しないよう気をつけています。同業者同士の関係性も重要だと思っていますので。

 

なるほど、同業他社との関係性も重視されて素晴らしいですね。それでは、営業面の今後の課題を教えていただけますか?

相田氏:新規開拓に向けては、展示会への出展が重要と認識していますが、そのためのサンプル作成が必要で、今後アイデア出しや制作を進める必要があります。また、価格改定をしたばかりですが、原材料費などの上昇が激しく、改定の利益を打ち消されている状況ですので、再改定できるかも含めて検討が必要と考えています。

 

緊急対応で見える機動力

営業・製造の両方にまつわる話をお伺いできればと思います。営業会議を実施しているとのことですが、その上でも苦労されていることはありますでしょうか?

相田氏:事前に計画立案しても、飛び込みで仕事が入ることがあります。さらにその仕事の希望納期が翌日など、緊急案件をいただくことも多くあります。

 

そのようなときに貴社はどのような取り組みを実施していますか?

相田氏:緊急案件は、従業員に残業をお願いすることになるので、特急料金をいただくようにしています。加えて、営業がお客様にご用聞きをするなど、前もって依頼を伺うことで緊急案件を減らす努力をしています。しかし、それでも突然当社に問い合わせをいただくことが多いです。ただ、それはお客様が困っていることの証しでもありますし、応えることでつながったご縁もありますので、可能な限り対応力を上げていきたいと思っています。

プレス作業の様子

 

お話をお伺いしていると、貴社内の機動力の高さを随所に感じられますが、秘訣があるのでしょうか?

相田氏:秘訣かはわかりませんが、近くにボーリング場があったときは、みんなでボーリングをしていましたし、新年会などの飲み会を定期的に実施しています。他には従業員全員で旅行積立を実施していますね。コロナ禍では自粛していましたが、以前は、北陸新幹線が開業するタイミングで、新幹線に乗りたいね、という話になり金沢に行ったり、伊豆の船宿に行ったり、みんなで行き先を話し合いながら旅行していました。そういう家族のような感覚を以前から大切にしています。どうせ仕事で毎日顔を合わせるなら、しかめっ面でいるより楽しく仕事をした方がいいと思いますから。それが製品に現れるし、怪我なく仕事に励めるのではないか、と考えています。

 

永続のために大事なこと

それでは、今後の抱負を教えてください。

相田氏:製造技術の確立を図りたいと思っています。具体的には、製造チーム全員が工場長の持つ技術レベルまで底上げさせて、工場長に頼らず自立できることですね。目先のことを考えると売り上げ至上主義に陥りそうになりますが、長期目線で考えて、売り上げを多少度外視してでも、技術の土台を底上げして、対応力を向上させたいと考えています。

 

最後に、改めて相田氏が貴社で大事にしていることを教えてください。

相田氏:自慢できるような良い製品を作ることはもちろん大事ですが、一番は人を大事にすることだと思います。従業員もそうだし、お客様にも誠心誠意対応すること、まさにそれだと思っています。それが製品にも現れますし、いろんなお客様とのつながりもそうで、お客様同士がつながっていたということもあります。また、頻繁にご注文いただけるお客様も、年に1枚注文されるお客様も同等に、誠心誠意対応する。そういう一連の対応が、お客様からの信頼獲得につながるし、従業員にも愛される会社になると考えています。

有限会社アート銘板工業 専務 相田氏


業種   金属製品製造業

設立年月          昭和46年6月17日

資本金              6,000,000円

従業員数          14人

代表者              代表取締役 相田光子

本社所在地      東京都調布市深大寺南町3-7-1

電話番号          042-487-1251

公式HP           https://www.art-np.com

この記事の著者

木内義貴

木内義貴中小企業診断士

愛知県出身。大学卒業後、自動車部品製造業で車載用組み込み制御機器のソフトウェア技術者として従事。今後のキャリア形成と日本経済活性化に貢献すべく中小企業診断士を目指し、2022年5月に登録。現在は、企業内診断士として各種支援活動や執筆活動を行う。愛知県中小企業診断士協会所属。

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