未来に向かって走り続ける 人がつなぐ企業永続のリレー(有限会社アート銘板工業②)

トップランナーであり続けるために

今回紹介する有限会社アート銘板工業は、京王線つつじヶ丘駅から北西に向かった中央自動車道に程近い住宅街に位置します。同社の強みは、難易度が高い0.1mmの薄型アルマイト処理板のエッチング加工を高品質で実現する技術力です。お話をお伺いしたのは、専務の相田智克氏(以下、相田氏)です。相田深吾氏(相田氏の父)が同社を創業してから60年を超え、永続的な発展のため家族内承継を進めている最中です。

第二回目の今回は、社内のコミュニケーションと、製造に関するお話をお伺いしました。

有限会社アート銘板工業 専務 相田智克氏

 

 

連携を高めるコミュニケーション

貴社内のコミュニケーションについてお伺いします。現在、従業員の皆様とどのようなコミュニケーションの場があるでしょうか?

相田氏:1ヶ月に1回、全従業員が集まる会議を実施しています。そこでは、方針などの決定事項の周知や、製造・営業・経理のそれぞれで問題として挙げられていたり改善したことを話し合い、アイデアを出し合ったりして、その場で解決しないことは議事録に残すようにしています。全従業員が関与することで、メンバー間で情報伝達有無による温度差が生じないように心がけています。他にも月曜の朝一番に、代表取締役と営業と製造のメンバーで営業会議を実施しています。

 

製造と営業の連携は製造業として重要ですが、営業会議はどのように進めていますか?

相田氏:製造と営業の週次の予定を共有し、それぞれの情報を踏まえ、どう見直すと相互にやりやすいか、などを話し合っています。例えば、営業が獲得した業務内容を、既存の計画を踏まえて製造でどう計画を見直すか、などです。また、製造や営業のそれぞれの部署で完結する内容もこの場で話し合います。例えば、製造で、この作業はまとめて実施した方が効率的ではないかや、営業で二人が同じ訪問先に向かうならどちらかに任せるとか、二人で一緒に2ヶ所行くなら一人1ヶ所ずつにする、などを話し合っています。少人数なのと、事務所が2階、製造現場が1階なので、連携が必要な内容については直接会話しているので、機動力ある対応ができていると思います。

 

強みを維持し続けるためのトライ

ここからは、製造に着目してお話をお伺いしたいと思います。製造の人員構成を教えてください。

相田氏:アルマイト処理チームが工場長含めて3人、プレス処理チームが2人、シルクスクリーン印刷チームが2人です。

 

多能工化は、生産の柔軟な対応などにつながりますが、貴社はどのような状況でしょうか?

相田氏:工場長は、プレス処理もシルクスクリーン印刷もできますね。他の方については、狙ったというよりは、高負荷な状況下で手伝ってもらうことで、できるようになったというのが実際ですね。シルクスクリーン印刷ができる方はプレス加工ができるというように、全員ではないですが、兼任できる方もいます。 ただ、アルマイト処理については、他チームメンバーが担当できるかというとノーです。他チームのメンバーも流れは理解しているのですが、詳細な手順などを滞りなく実施するためには、普段から従事しないと難しい面がありますね。それはなんとかしたいと思っています。

 

なるほど、これまでに試みた施策はあるのでしょうか?

相田氏:以前、勉強会を実施したことがあります。各作業チームの人が先生役になって、作業手順や作業にかける時間などを教え、数日間に分けて全ての作業について入れ替わりで実施しました。しかし、メモを取ったとしても、実際に数ヶ月従事しないとできない、というのが正直なところです。ただ、全てが無駄だったわけではありません。一例ですが、アルマイト処理の担当が、プレス処理の担当に加工した品を渡すときに、プレスの苦労のしどころがわかったので、プレス担当が対応しやすいように工夫するようになったなど、前工程や後工程を意識できるようになったという効果はあります。

 

貴社の強みである、薄型アルマイト処理板のエッチング加工はいつ頃確立されたのですか?

相田氏:私が子供の頃に、父と若い頃の工場長とで研究を重ねてできたと聞いています。顧客の要求として薄板のエッチングを具体的に要求されたわけではなく、顧客の要求仕様の意図を読み取ったときに、その要求を満足する手法として薄板のエッチングが必要との考えに至ったようです。最終顧客から作業標準も求められており、AMS(アート銘板スタンダード)という当社の作業標準を作り上げました。それが文書で規定されていますが、残念ながら、万人が読んだだけですぐに対応できるものではないのが現状です。

 

アルマイト処理について、技術伝承につなげる必要がありそうですが、現状はいかがでしょうか?

相田氏:最終顧客の皆様は、当時のやり方を基準として考えているようです。例えば、当時のやり方と違うやり方に変えてしまうと想定と異なるものが納入されるおそれがあり、受け入れ不可になる場合があるため、やり方を変えないことが求められます。当社は最終顧客と直接やりとりしているわけではありませんが、やり方を変えることの障壁は高いと感じています。そのため、当時のやり方を熟知している工場長が、若手従業員に、保有する知見を伝える必要があると考えます。一例として、手順として確立されているが伝えることが難しいもの、具体的には、エッチング液が使用の度に性能劣化するので、液に浸して引き上げるタイミングを劣化具合に応じて変える必要があるので、そのコツなどです。引き続き、対応方法を考えているところです。

エッチング作業の一部

 

貴社の技術が着実に技術伝承されることを期待しています。次回は営業のお話をお聞かせください。


業種   金属製品製造業

設立年月          昭和46年6月17日

資本金              6,000,000円

従業員数          14人

代表者              代表取締役 相田光子

本社所在地      東京都調布市深大寺南町3-7-1

電話番号          042-487-1251

公式HP           https://www.art-np.com

この記事の著者

木内義貴

木内義貴中小企業診断士

愛知県出身。大学卒業後、自動車部品製造業で車載用組み込み制御機器のソフトウェア技術者として従事。今後のキャリア形成と日本経済活性化に貢献すべく中小企業診断士を目指し、2022年5月に登録。現在は、企業内診断士として各種支援活動や執筆活動を行う。愛知県中小企業診断士協会所属。

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