レーザー加工機導入を機に、効率化、高付加価値化を追求(有限会社尾熊シャーリング 代表取締役 尾熊稔文様 インタビュー③)

ものづくりへの想い

有限会社尾熊シャーリングは、長きにわたり板物の切り・曲げ加工を行っている会社である。特に厚物や長尺物の加工に強みを持ち、サイズの大小やロット数にも柔軟に対応し、多くの顧客の支持を得ている。
本特集では、同社の強みやものづくりへの想い、将来への展望など、代表取締役の尾熊稔文氏にお話をうかがっていく。第三回では、ものづくりへの思いと、同社の今後の展望について取り上げる。

 

同社代表取締役 尾熊稔文氏

 

製造業の現実を知って欲しい

世界情勢もあり、材料費や光熱費など、製造コストが上昇しています。ものづくりに携わる経営者として、現状に対するお考えをお聞かせ下さい。

尾熊氏:いまは原材料価格が高騰していますが、今後下がることはないと思っています。テレビでは食料品の値上がりばかりクローズアップされますが、食料品は価格が仮に倍になったところで、どれだけ各家庭で使うか、量は知れていますよね。でも、我々が使う材料の価格も、実は平均で4割強、中には倍以上になったものもあり、極端な上がり方をしています。そういうことをメディアではあまり扱わない。一般消費者の方が使う物でないと、取り上げにくいのかもしれませんが、もっと取り上げてくれれば、当たり前のように納入価格を上げてもらえるのではないかと思っています。

例えば自動車だって、これだけ材料が上がったから、200万円の自動車が220万円になりました。それでいいわけです。しかし、末端価格を上げられないから何とかしなさいと、こちらが押さえつけられてしまいます。それでは経済が回るはずがないですし、賃金が上がるはずがないと思います。

景気が悪くなったり仕事がなくなったりしたら、みんなで給料下げて頑張りましょうといった日本の悪い癖は、良くないと思っています。ものづくりをする私としては、あるひとつの仕事で材料費がドンと上がった場合、それを価格に転嫁できないから、「今はみんなでこらえましょう」「我慢して乗り切りましょう」ってやることが良くない、そう思います。

最低賃金の話とか、賃上げ何パーセントとか、官製賃上げではないですけれども、政治主導の動きがここ最近は強いような印象です。そうではなく、もっと自然に給料を上げていけるような状況を作ってもらいたい、ということです。

今回のガソリン価格や電気代の高騰も、ただお金を投入するのではなくて、もっと景気そのものを底上げする具体策を政府が出していかないと、ただ企業が耐えているだけになってしまう。それが良くないと思います。そこがうまくいけば、もっと工場も元気になるし、工場が元気になれば従業員の給料も上がっていくし、もちろん景気も良くなっていく。そういう流れになるはずです。だから、政府をあげて、日本のものづくりを盛り上げていかないといけない。日本は製造業の国、ものづくりの国ですからね。モノを作って売っていかないといけない国です。その点を、政府の方でもっと考えてもらいたいと思いますね。

 

将来のことを常に考える

最後に、今後の展望、将来についてお聞かせ下さい。

尾熊氏:今のレーザー加工機は4年前くらいに入れ替えたものです。前のレーザー加工機も使おうと思えばまだまだ使えました。しかし、私としては、このままだとすぐに競争力がなくなってしまう、より一層競争力のある機械が必要だと考え、4年前に入れ替えました。その頃、レーザー加工機の主流はCO2レーザーというものでしたが、当社は新たにファイバーレーザー加工機を導入しました。私にとって、ファイバーレーザーの切断の速さは大変魅力的でした。ファイバーレーザーが今後主流となれば、CO2レーザーだと敵わなくなるという危機感もありました。当社のように生産力をいかに上げるかということが重要な会社にとって、この変化は大きいと思い、決断したのです。

会社経営は、未来のことを常にいろいろと考えていかないと止まってしまうのではないか、どこかで行き詰まってしまうのではないかと思っています。だから今年も、補助金を活用してCADをもう1台導入しました。今後、レーザー加工機をもう1台、さすがに既存の機械と同じ大きさのものは入れられませんが、コンパクトな機械の導入を考えています。実際に導入する、しないは別として、そういうことも視野に入れておかなければいけない、というのはありますね。

これから先、さらなる業務拡大は考えていません。シャーリングは、もう時代にそぐわないと私は思っています。より少し効率が上がり、利益を上げられる機械に変えていくのも、ひとつの考え方だと思っています。シャーリングって、要は「ただ切る」だけです。そうすると、お客様から価格を叩かれてしまう。付加価値を付けられない。まっすぐ切るだけなら、レーザーで切るよりもはるかに安くできます。しかし、それに対する付加価値がない。だからもう、時代にそぐわないのかな、ということです。あればあったでお客様からは依頼が来ますが、安さを求められて儲からない。そこに従業員を充てなければならないとなると、むしろこの機械がない方がいい、ということです。プラスアルファの加工ができるレーザー加工機の方が、付加価値をつけられますし、生産力も上がります。従業員はいまのままで、新しい機械を導入し生産力を向上させ、売上も伸びていく。そのような流れを作っていきたい。それが理想です。

複雑な曲げ加工の段取りを短縮する、最新のベンダー加工機


業種   金属加工業

設立年月          1963年6月1日

資本金              3,000,000円

従業員数          5人

代表者              尾熊 稔文

本社所在地      東京都大田区西六郷4-35-13

電話番号          03-3733-6977

公式HP           https://ogumashearing.co.jp

 

この記事の著者

浜田健嗣

浜田健嗣

2021年中小企業診断士登録。大学卒業後,鉄道会社に入社。主に経理・財務を担当し,再開発事業やショッピングセンターの運営にも携わる。「○○で地域を元気に」をモットーに活動中。

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