ボトムアップをトップが作る!営業職が活きる環境づくり(ワタナベコンサルティング 渡辺日菜子)

ボトムアップをトップが作る!営業職が活きる環境づくり

営業職とは、お客様と会社を繋ぐ連結ピンの存在

そもそも、営業職という存在は御社に必要でしょうか?

「必要だ。絶対にいてもらわないと困る。」と考える方も「いや、人件費ばかりかかっていて、費用対効果も見えにくく、不要かもしれない」と考える方もいらっしゃると思います。人との接触を減らさざるを得ない環境で、今こそ改めて営業職の在り方を考える必要があります。

先行きが不透明なコロナ禍での経営のかじ取りを求められ、不安に陥っている経営者も多くおられることだと思います。このような環境で、営業職に期待するのは、過去の経験に囚われない発想力で小さなニーズを発掘し、会社の秘めたるシーズを引き出して新たな商品や事業を形にすることです。

有名な「連結ピン・モデル」という言葉があります。小さな人の集まりを組織の構成単位とし、構成単位間を「連結ピン」で連携するという考え方です。(下図参照)

これは組織論での考え方ですが、営業職もお客様と会社を繋ぐ「連結ピン」として機能すれば、売上を稼ぐという役割に留まらず、会社の経営に好影響をもたらします。そのためには、営業職が「連結ピン」としての機能を自覚して会社の代表となり、お客様という社会との接点で最大限の力を発揮すること、また会社は営業職が自社を支える重要な存在であると信頼することが必要です。

「社内営業」という言葉の罠

営業研修を通じて、様々な会社の営業職の方からお話を伺い、多くの会社で営業職の方が最大限の力を発揮出来ているとは言い難いと感じます。「勇気を振り絞って提案したにもかかわらず、社内で取りあってもらえなかった。」「いつもダメ出しばかりで、自分は営業としてダメだと思う。」このような声を聞くことも稀ではありません。会社が「言ってもムダ」「自信を失ってしまう」場所になってしまうと、営業職の方は会社での失敗を回避することに焦点を当て、現場で得たアイデアを会社に還元するどころではありません。

「社内でさえ、うまく営業できない人間がお客様に対してきちんと営業できるはずがない。」、「根回しもままならない、あいつは営業としてだめだ。」このように思われたことはありませんか?社会人1~3年目の社員であれば、その言葉は正しい部分もあるかもしれません。しかし、営業職に何を意識して欲しいのかを考えた時に、社内ばかりを気にするような環境では、新たなものを生み出すことは困難でしょう。社内は営業職の力試しの場ではなく、応援する場であることが理想なのです。社内営業が必要ない環境作りこそ、営業職が力を発揮するためには重要です。

経営者が今から必要な「受け止める力」

では、営業職を社内が応援する環境を作っていくにはどうすれば良いでしょうか?大切なことは、組織のトップである経営者自身がまずその空気を作っていくことです。トップで見えている景色と現場で見えている景色は全く違います。経営者が判断せねばならないことは、現場には分かりません。同様に、現場の声は経営者に届きにくくなっていることに、常に意識を払わなければなりません。現場の本音をストレートに話してくれる人は希少であり、大体は押し黙ってしまう、もしくは小さな嘘をついている可能性もあります。それは、経営者の普段の態度や判断を回りはつぶさに見ていて、「自ら本音を言うことで損をする」事態を避けるためかもしれません。

 

だからこそ、まずは経営者自身が、意見を言ってくれる人の言葉に動揺せず“受け止める力”を持つ必要があります。経験や実績を手に入れると、周りの言葉を受け止めることは難しくなってきます。積み重ねた大変な苦労は自分だけが分かっていて、その苦労で今があると感じるのは当然です。「何も分かってないくせに」「偉そうに何を言っている」と瞬間的に感じる意見もあるかもしれません。それを感情に任せてそのまま言葉に出してしまえば、二度とその人から意見は出てこないでしょう。一方、「なるほど」「そういった考えもあるのか」と感じ言葉にできれば、言った側は聞いてもらえた感覚を持ち、また伝えようと思うのです。話しやすい空気を作って活発な意見交換を促すことで、皆で売上を伸ばそうという上昇志向の雰囲気を醸成できれば、営業職は“応援されている”と実感するでしょう。

商品提供だけが営業の役割ではない

会社が安心かつ話しやすくて応援してくれる場所に変わるには、社内の人たちが営業職を「応援したい」と思えることも重要です。営業職が現場でのお客様の声を社内に伝えることは、そのきっかけにもなります。ポイントは、お客様の声の伝え方です。例えば、「○○さんが対応してくれたことで、お客様はすごく嬉しかったと言っていた。」「この商品を購入したことで、お客様はこんなに喜んでくれて、地域にこんなに良い影響があった。」このように具体的なお客様の声を、お客様と直接の接点がない社内の人が営業職から聞けば、“お客様とのつながりと社会への貢献”を感じお互いにやる気を高められます。営業職の方が商品提供で売上を稼ぐだけではなく、「どのようなコミュニケーションを取っていきたいか」という意識を持つことが、結果として社内の好循環を生み出し楽しく営業活動を継続していけることにつながるのです。

最後に

「どのような営業職が御社には必要でしょうか?」

この記事が、御社の営業職と組織についての考えるきっかけの一端になれば、幸甚です。御社の営業活動が実りあり、コロナ禍を乗り越え、更に発展していくことを心よりお祈りしております。最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。

この記事の著者

渡辺日菜子

渡辺日菜子ワタナベコンサルティング代表/中小企業診断士

大阪府出身。保育士資格保有。医療介護用品製造業で営業職に6年従事後、中小企業診断士として香川県にて独立。現在は、福岡県を拠点に活動中。企業特性に合わせた営業研修やコミュニケーション研修などを企画し、30社以上で導入。心理学を学び、「営業職の教育」について研究し続けている。

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