転写シールを文化に(株式会社扶桑 富田社長 インタビュー③)

今後に向けた取り組み、ここからが勝負!

第二回では、株式会社扶桑の現在の代表取締役である富田成昭氏が、入社後に取り組んだことを紹介しました。本編最後となる第三回では、今後の展望、経営理念や経営において大切にしていることを取り上げます。

 

社員と一緒に進み続ける

―将来に向けて取り組んでいることはありますか?

富田氏:昨年から取り組み始めたのは、社員と一緒にデザイン講座などを受講することです。今まで社員に会社のことを説明する機会はあまり持てていませんでしたが、1年間一緒に講座を受ける中で、会社のことを説明したり、ビジネスアイデアを一緒に考えて資料にまとめたりしています。今後も毎年1人ずつ幹部候補生と、講座受講などをきっかけにコミュニケーションやスキルアップを図りながら、会社の方向性のベクトル合わせを図れればと考えています。

 

―1年間の受講となると費用もかかると思いますが、それだけ社員の方に投資をされているということですね。

富田氏:そうですね、受講料ももちろんかかりますし、業務時間外で行うので、その費用負担も発生します。それでも社員と一緒に講座を受講するもう1つの狙いは、社員と一緒に新しい商品を作り出したいからです。現有の自社製品は、私と外部のデザイン会社とで作りだしたもので、社内の人間は企画に一切関わっていなかったんです。自分で企画した製品を世の中に出す喜びを味わってもらいたいですし、それがより良い製品を生みだし続けるモチベーションにもつながると考えています。そのために、“こういう流れで作る”ということをまず学ぶことから始めています。ここ数年で印刷設備の入れ替えがあり新しくなっているので、それらを生かしながら取り組んでくれることを期待しています。

私が代表になって5年目ですが、事業承継の課題などもあり、自分が思った通りの運営をしづらかった面も正直ありました。本当の意味でのスタートラインに立ち始めたのが、去年ぐらいという感じですね。

 

現場で説明する富田社長

 

―講座を一緒に受講することで、社員に何か変化は見られますか?

富田氏:一緒に取り組むと、やっぱり私がリードすることが多いのですが、少しずつでも自分ごとになってきていると思いますし、それが少しあるだけでも会社のためになると思っています。当社を含む5社ぐらいで一緒に受講していますが、その中で他社の方との意見交換や交流は刺激にもなります。当社は「ものづくり」の企業であることから、どうしても内向きになりがちな傾向があります。そこで、意識的に外部との関わりを持つ機会を設けるようにしています。
実は先日、一緒に講座を受講した社員が「ここまで1年間頑張ったのだから、何も作らないで終わるのってもったいないですよね」って言ってくれたんです。それは私にとって、すごく有難いことでしたし、取り組んでいることが間違いではないと自信が持て、私自身のやる気につながっています。

製造現場で作業をする社員

 

これからが自分の会社としてのスタート

―5年後、10年後にこういう会社になっていたいなど、目指す姿はありますか?

富田氏:明確なイメージはないのですが、“転写シールを文化にしたい”と考えていて、最終的に目指すのは、文房具店などの売り場に転写シールのコーナーができると面白いなと思っています。ロールモデルにしているのは、工業製品のマスキングテープを文房具のジャンルの一つとして確立した、カモ井加工紙株式会社です。それに近いことを転写シールで実現できたら、と考えています。
あとは、私たちは葛飾区で事業を行っているので、葛飾区に対して何か返していきたいとか、地域を盛り上げたいという強い気持ちがあります。葛飾区外のイベントにも出ることはありますが、そのノウハウを生かして葛飾区内で何かイベントを立ち上げるとか、そういったことができればいいなと思いますね。

 

―最後となりましたが、御社の経営理念や、経営において大切にされていることをお聞かせいただけますでしょうか。

富田氏:実は経営理念はまだ定めていません。先代の頃からなく、私が定めるのは、まだおこがましいという気持ちがあります。やっぱりまだ自分の会社にできていないと感じているからです。ですから、先ほど申し上げた、社員と一緒に講座を受講することで、コミュニケーションを図りながら、少しずつでも私の考え方を浸透させていきたいです。

私たちが作っているものは娯楽品がほとんどなので、日々を楽しくするアイテムではありますが、本当に必要なものかと問われると、難しいところなんですね。ただ、心に豊かさを与えられるようなアイテムではあり、それを文化にしていけると、ユーザーには喜んでもらえ、それを励みに私たちはより良いものを作る、という好循環が生まれてくると考えています。そういったことを、経営理念としてまとめていきたいと思っています。

経営理念は作った方がいいよ、とはよく言われます。でも、かっこいい言葉を単純につけることはできますが、なんか自分の中で気持ちが悪いので。“これがうちの経営理念でありビジョンである”と社員に自然に感じてもらえるようになってから、言葉におとしたいですね。

版置き場での富田社長


業種   シール・ステッカーの製造および販売(シール印刷業)

設立年月          1964年2月

資本金              1000万円

従業員数          10人

代表取締役      富田成昭

本社所在地      〒124-0012 東京都葛飾区立石8丁目41番2号

電話番号          03-3691-6490

公式HP           https://kkfusou.co.jp/

関連記事

ページ上部へ戻る