現場のアイディアから生み出された、難しい洗浄を効率化する一品(株式会社開明製作所)

世の中にないものを実現する開明製作所

株式会社開明製作所は、旋盤加工技術に強みを持っているが、「世の中にないものは、自分で作る」という会社のスピリットから、さまざまなものを自作してきた。NC旋盤のプログラムをパターン化して効率化を行った「自動プロ」や、切子を集塵するための「エアブロー装置」、そして、Microsoft Access をもちいた先進的な「生産管理システム」といった、現場の悩みを解決するためのアイディア満載でとても実用的なものばかりである。その中で、最近の展示会で紹介したところ社内外からの評判が高く、製品化を求められている商品が、今回ご紹介する「袋穴洗浄機」である。

袋穴洗浄機

 

袋穴の洗浄を効率化

袋穴とは、タッピング加工したねじ穴などの、貫通していない加工穴である。袋穴にはタッピング加工後の切子などの残留物がたまりやすく、袋穴の径が小さくなるほど洗浄が困難になる。この洗浄の難しさを克服し確実に洗浄された製品を届けることは、開明製作所だけでなく、多くの加工業者において大きな課題である。

超音波式、ナノバブル式、ブラシ式、高圧式での洗浄が主流であるが、開明製作所の製品のような小物製品の洗浄は、超音波によるキャビテーションや水流の圧力で汚れを排出することが難しかった。ブラシで洗う場合でも、1つの穴当たり数十秒かかってしまうため、生産性が悪い。

そんな中、生産現場のアイディアをもとに生み出されたのが、この袋穴洗浄機である。水流の圧力に頼らず、穏やかなバブルの流れで洗浄を行うため、指でつまむくらいの小さな部品でも安定的に洗浄が可能で、2mm以下の径でも洗浄できる。

袋穴洗浄機の構造

洗浄機の構造は非常にシンプルで、内蔵されているギヤが水と空気を混合し、バブル水流を生成する。このバブルが割れるときに袋穴に残留する汚れを浮かして巻き込み、排出するメカニズムだ。洗浄機には、①液体の吸水口、②オーバーフロー(余った液体を外に出す)③液体の吹出口があり、②オーバーフローを調整することで、③吹出口の圧力を調整できる仕組みとなっている。

液体の吹出口を水槽に取り付ければ、両手で製品をもち洗浄ができるため取り回しもスムーズである。

10秒以内で、ブラシ洗いに比べて時間も大幅に短縮できる。

上図:袋穴洗浄機を水槽に取り付けた状態(開明製作所で実際に使用しているもの) 下図:洗浄機を稼働している状態。細やかなバブル水流が発生している

今後の展開

袋穴洗浄機は、もともと30年ほど前に自社開発し、販売を試みたが、人員やノウハウが不足しており、販売を断念したという苦い経験がある。その後自社内の洗浄工程で活用していたが、最近の展示会に出展したところ、いまだに袋穴の洗浄に悩む加工業者が多いことが分かり、販売ノウハウやネットワークを整理し、再販の準備を進めている。

また、入手困難になっている電気部品があることから、今年中にリニューアルを行う計画だ。ユーザーの新たな要望も取り入れた製品を携え、全国行脚したいという目標を掲げる。そのために、週に一回、関係者を集めてミーティングを重ね、戦略を練っている。水のほか、アルカリイオン水や鉄向けの洗浄液でも使用できることが分かっており、適用の幅も広がっているため、幅広い顧客に訴求できる見込みだ。

現場での実績から有効な製品であることは明白だが、具体的なメカニズムは未解明の部分があり効果の説明に感覚的な部分が含まれるため、客観的にわかりやすく効果を伝えられるように、展示方法や検証動画作成などを検討中である。

頑固な残留物に対する洗浄の救世主として、活躍を期待したい。

この記事の著者

齋藤宏晃

齋藤宏晃

中小企業診断士 2021年中小企業診断士登録。神奈川県在住。3児の父。 得意分野は製造業×管理会計。日本の産業を盛り上げたい想いで、プロボノを中心に診断士活動を行う。

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