技術力の証明 デザイナーからの難題への挑戦(有限会社本間製作所)

売り物は「技術力」

有限会社本間製作所は、1988年の創業から現在まで、旋盤加工・フライス加工・複合加工を行っている会社です。多品種中量を特徴として、お客様の幅広いニーズに対応できるその対応力、高い技術力で完成品を内製で仕上げることができるのが自慢。支えているのは、種類豊富な旋盤をはじめとした設備とその設備を取り扱う社員の習熟度の高さです。

旋盤は自動盤と主軸固定型旋盤(ターニングセンタ)を備えるほか、自動給材機(バーフィーダー)を使った複合加工機で金太郎あめのような連続加工を可能としています。また、多品種中量屋で多台持ちは難しいと言われる中で、3台のターニングセンタを扱っている者もいたりと、多台持ちの習熟度の高さをうかがえます。最新ツールも積極的に導入して、いろいろな加工条件を試すことを繰り返し行い、習熟を上げることに余念がありません。

このように当社が最新鋭の設備を取り揃え、社員の習熟度を高めているのは、売り物が「技術力」になるからにほかなりません。当社は決まった製品を生産しているわけでもなく、自社製品があるわけでもありません。お客様のニーズに忠実に応え、お客様の期待を上回るものを提供できる「技術力」こそ、当社の売り物なのです。

今回の匠の一品は、この「技術力」を体現した数々の製品のうちの一例をご紹介します。

 

本間製作所の技芸が息づく 手のひらサイズの独特な形状の花瓶

2017年、世界最大規模の家具見本市「イタリア・ミラノサローネ」での展示会に向けて、本間氏が挑戦します。単なる展示品以上の意味を見いだすため、技術の粋を集めた一品を創り出すことに挑戦しました。その結果、生まれたのが手のひらサイズの非常に小さく、細長い首の独特な形状の花瓶です。

手のひらサイズで細長い首の独特の形状をした花瓶


この花瓶はデザイナーとともに進められました。デザイナーの自由な発想から生み出されたもので、加工のしやすさを一切考慮していません。それゆえに、本間製作所の技術力が試されることになりました。

「お客様から欲しいと言われるたび、その一つ一つを大事に考え、立ち上げていく」と本間氏は語ります。こうした情熱と匠の技が込められたこの花瓶には、その姿勢が反映されています。特に、一体型での削り出しが求められ、通常ならば、部品を分割し、後から組み合わせることで容易につくれるところを、一体であることの重要性を優先し、それに見合った技術的な解決策を追求しました。

このプロジェクトは、物理的な限界に挑むものでした。ターニングセンタでは、材料の直径の3倍、4倍を超えると精度を保つことが難しくなります。この花瓶は、その限界を超えた細長い「首」を持ち、さらにその「尻」まで一体型で削り出すという、技術的難題に直面していました。しかし、試行錯誤と治具の製作によってこの困難を克服し、一時期は寝る以外会社でずっと開発にいそしみ、1か月の懸命な努力の末に実現することができました。

1か月の懸命な努力の末に花瓶は完成した

モノづくりの根底にあるのは、形状の美しさや実用性だけではなく、製作者の魂が宿ることで、その価値は計り知れません。この花瓶は、本間製作所の技術力と創造性の結晶です。

ですが、これはあくまで本間製作所の技術力の一部に過ぎません。同社の技術と創造が織り成す一品は無限大なのです。

この記事の著者

山崎貴彦

山崎貴彦中小企業診断士

群馬県出身、群馬県在住。大学卒業後、地元の農業協同組合に就職。融資審査、債権管理、経営企画、各種会計、リスク管理など幅広い業務に従事する。2023年に経営コンサルティング会社へ転職し、中小企業を中心とした経営支援に従事。2022年中小企業診断士登録。趣味はサッカー・旅行。

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