金型設計のアイデアで新たな価値を創造―金属プレス部品メーカーの挑戦(佐藤金属工業インタビュー②)

質の高い製品を作り出す技術力の秘訣

佐藤金属工業株式会社は、金型の設計から開発・試作・量産までを一気通貫で行う金属プレス部品メーカーです。主に自転車部品や自動車部品を製造しています。第一回では、佐藤金属工業株式会の現在の業務内容、強みとする技術、会社の歴史について紹介しました。第二回では、高い技術力を実現する、生産設備、金型設計のノウハウ、技術資格制度について掘り下げます。

佐藤金属工業株式会社 佐藤社長(左)とご子息の佐藤貴志氏(右)※撮影場所は金属プレス加工の肝である金型の製造現場

 

高剛性・高性能プレス、サーボプレスを複数台所有

御社が所有されている設備についてお聞かせください。

佐藤社長:当社の設備の特徴は高剛性、高性能なプレス機が複数台あることです。順送加工ができるプレス機では300トンが一番大きいものになります。あとは幅広い加工に対応できるサーボプレスを複数台と、60トンから200トンまでの単発プレス機を保有してます。金型の生産設備は、マシニングセンタ、ワイヤー放電加工機、研削盤、旋盤など一通りのものが揃っています。検査設備も、三次元測定機、画像寸法測定機、3D形状測定機などを所有しています。

プレス機を操作する従業員

 

 

プレス加工の奥深さ―金型設計のアイデアが腕の見せ所

プレス加工で難しいのはどういった点になるのでしょうか?

佐藤社長:金型設計のアイデアが一番大事です。お客さんからの製品図面が届いたら、まずどういう工程で加工しようかなと考えます。全部で5工程であったら、1工程目はこういう加工をして、2工程目はこういう加工をして…、ということを実際に図面に落とし込みます。図面化したものを、それぞれの機械で加工します。それを組みあわせたものが1つの金型になります。どういう形で、これを作っていこうかというアイデアこそが、金型設計で大事なことであり、ノウハウになるのです。同じ形状の部品でも、設計者の考え方によって金型の設計はまったく異なるのです。

加工機械と型場で作業をする従業員

 

 

少ない工程で作れる金型の方が良いのでしょうか?

佐藤社長:そんなことはありません。短い工程で作るということは、1つの工程で金型に大きなストレスがかかります。そのストレスを分散して、寿命の長い金型が良い金型だと思っています。どっちしても、材料を投入して1分間に30回転するとしたら、30個の製品が出てくるわけです。それが3工程でも6工程でも、1分間に30個は出てきます。そのため、工程を過度に集約せず、適切に分散させる設計こそが、順送加工においては優れた金型設計だと考えています。

金型の製造現場の様子

 

金型の設計者として1人前の技術を身に着けるには何年ぐらい必要なのでしょうか?

佐藤社長:一通りの技術は5年ぐらいで身に着けることが出来ますが、やはり1人前として活躍するには10年ぐらいは必要だと思います。金型設計者は金型の設計だけでなく、金型の加工やメンテナンスの知識や技術も必要です。特に板鍛造加工は金型にストレスを与えながらする加工なので、メンテナンスも普通の加工と比べると多くなります。どうしても金型の設計通りに動かない時も出てきます。思うように動かないとは、寸法の規格から外れるということです。こうした場合には現場の作業者と調整が必要になります。金型の設計・加工・メンテナンス、現場の作業者の金型調整能力、これら全てひっくるめて金型設計者として必要な能力だと考えています。

 

金型の設計者は何人いらっしゃるのでしょうか?

佐藤社長:現在2名体制でやっています。1人が私の弟である常務、もう1人は30代の若い設計者で、彼にはこれから経験を積んでもらい技術承継をしていかなければいけません。会社の規模も大きくなってきたので、できれば設計者もあと1~2名は欲しいと思っています。そこはこれからの課題です。

 

試作加工の時も金型は作るのでしょうか?

佐藤社長:試作加工の場合も、簡単な金型を作ります。例えば、7~8工程の順送加工であれば大きな金型が必要になるのですが、試作金型の場合、「この形状が上手く出せるか試したい」という確認が必要な工程のところだけ作ればいいのです。普通、大きな金型であれば、設計も含めて1カ月半、ややこしいものであれば2か月ぐらい金型の製作に時間がかかりますが、試作の金型であれば、必要な部分だけを作るので1週間~2週間程度で完成します。実際に試してみて、「この形状は出ますね」とか、「ここはもうちょっと図面と違ってこういう形状だったらプレス加工で出来ますよ」というようなやり取りをして、それを図面に落としこんで進めていきます。

 

社内技術検定による技術者の育成と評価

社内技術検定について教えてください。

佐藤社長:育成と評価を目的に資格取得制度を設けています。社外の資格では、フォークリフト、クレーン、玉掛けなどの国家資格を、会社が費用を負担して取得してもらっています。一方、社内では部署ごとに異なる資格を設けています。例えば、プレス加工で出来上がったものがきちんと規格の中に納まっているかを、ダイヤルゲージ、ノギス、マイクロメーターを使ってきちんと測れるかという試験で確認する資格や、寸法測定資格、受入れ検査資格などがあります。各工程を担当する者が合格と判断された場合、資格保持者がはんこを押して、次の工程に流すという形でやっています。現在、より公正な評価が出来るように、社労士さんと資格制度の見直しを進めています。機械ごとに、作業の能力に応じたABCDの区分をつくり、もう少し細かく力量の評価をしていこうと考えています。

工場内に掲示される各資格保有者名(※名前は伏せています)


会社名 佐藤金属工業株式会社

業種   金属プレス部品メーカー

設立年月          1974年7月

資本金              2,000万円

従業員数          30人

代表者              佐藤隆幸

本社所在地      大阪府堺市堺区神南辺町5丁152-5

電話番号          072-227-7715

公式HP           https://www.satokk.com/

この記事の著者

豊田裕史

豊田裕史中小企業診断士

2022年11月中小企業診断士登録。医療系のWEBサービス会社に勤務。新規事業の開発に従事。診断士としては区の創業塾に参画し創業を支援。趣味はマラソンと御朱印集め。

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