- 2026-1-6
- 取材・インタビュー
難削材への挑戦と一貫加工体制で、顧客の「困った」に応える
株式会社蟹谷精密研削社は、精密研削加工を得意とするプロフェッショナル集団です。第一回は、同社の事業内容や、他社が敬遠するような難削材加工にも果敢に挑むその強み、そして「断らない」ことから生まれた企業文化について、代表取締役の蟹谷雅彦様にお話を伺いました。

工場内で笑顔を見せる蟹谷雅彦社長
「工場長屋」から始まった軌跡。「一貫加工」へ舵を切るまで
-まずは、御社の創業からの歩みについて教えていただけますか。
蟹谷氏:最初は、父と叔父(父の弟)の二人で始めた「町工場」です。もともと父は研磨会社に勤めていましたが、そこから独立し、神奈川県川崎市に蟹谷精密研削社を立ち上げました。「町工場」と言っても一軒家ではなく、昔よくあった「工場長屋」のような場所から始まりました。一つの大きな建て屋の中に仕切りがあって、真ん中の通路の両サイドに各会社が1~2人でやっているような小さな工場が何軒も入っているような場所です。
-そこからどのように事業を拡大されたのでしょうか。
蟹谷氏:当時は「工場付き住居」というスタイルがはやっていて、一階が工場、二階が住まいという物件に移り住みました。そこから少しずつ機械を増やしていったのですが、高度経済成長の波にも乗って、仕事が増えるにつれて手狭になり、第二工場、第三工場と拠点を増やしていきました。大きな転機となったのは「第四工場」を立ち上げた時です。ここで初めてマシニングの切削機械を本格的に導入しました。「研磨屋」でありながら「切削」もやる。これは父の先見の明だったと思います。その当時導入したマシニング機械は今でも使っています。

現在の蟹谷精密研削社
強みは「難削材の加工」と「一貫加工」。常識にとらわれない体制で顧客の要望に応える
-現在の御社の事業内容と、強みについて教えてください。
蟹谷氏:私たちは社名の通り、金属の「研削(研磨)加工」を専門としています。旋盤などで削り出された金属部品の表面を、砥石を使ってミクロン単位で整え、鏡のように仕上げたり、寸法を極限まで合わせたりする仕事です。その中でも特に強みとしているのが、ステンレスや耐熱鋼、あるいは超硬といった「難削材」と呼ばれる素材の加工です。
-難削材、ですか。やはり加工は難しいのでしょうか。
蟹谷氏:非常に難しいです。特にステンレスは「粘り」が強いんです。削ろうとすると熱を持って歪んでしまったり、刃物に溶着してしまったりする。だから多くの加工業者は敬遠しがちです。当社は、半導体製造装置関連のお仕事をいただくようになったことがきっかけで、多くの仕事を受けられるようになりました。半導体の現場では錆びないステンレス部品が大量に使われます。来る日も来る日もステンレスと格闘する中で、最適な砥石の選び方や、熱を逃がす研削条件などを試行錯誤しながらノウハウを蓄積していきました。他がやりたがらない仕事から逃げずに挑んできたことが、結果として「蟹谷に頼めばなんとかなる」という独自のポジションを築くことにつながったのだと思います。
-研磨だけでなく、切削から丸ごと請け負う「一貫加工」も特徴だと伺いました。
蟹谷氏:そうですね。創業当時、金属加工の世界は分業制でした。「旋盤は旋盤業者」「フライス加工はフライス加工業者」「研磨は研磨業者」とそれぞれ別の会社に発注するのが普通でした。しかし、例えば「フライスして、研磨して、またフライスする」というようなことがあると、お客様にとって管理の手間もかかります。そこで当社では、マシニングなどの切削機械も導入し、材料の削り出しから最終的な研磨仕上げまでを社内で完結できる体制を整えました。

フライス工程で稼働するマシニングセンタ
「できない」とは言わない。父から受け継いだ「お客様のために汗をかく」DNA
-お話を伺っていると、御社には「難しいことにも挑戦する」という企業文化が根付いているように感じます。
蟹谷氏:「断らない」というのは、父の代から続くうちのDNAかもしれませんね。他社さんが「やったことがないから」「難しそうだから」と断ったような案件でも、相談をいただければ「まずはやってみましょう」と引き受け、できる方法を探す。自分たちでできることはやるし、専門家の力も借りる。もちろん、最初は失敗することもあります。でも、そこで諦めない。例えば、初めての形状なら、それを固定するための「治具」から自分たちで設計して作ってしまう。一方で、砥粒の大きさや硬さが千差万別な砥石の選定においては、仕入業者に相談して最適な製品を見つけます。そうやって難しい宿題をクリアするたびに、職人たちの引き出しが増え、技術力が一段階上がるんです。お客様の「困った」を解決するために汗をかく。その泥臭いプロセスの積み重ねが、今の蟹谷精密研削社を作っているのだと自負しています。
-企業理念である「お客様の喜ぶ顔を見てその何倍も喜べる企業でありたい」にも通じますよね。
蟹谷氏:そうですね。私の信念ですが、商売繁盛の秘訣は「お客様を喜ばせること」です。やはり、「お客様に喜んでもらえる」ということが、そのままこちらの喜びにもなるということですね。仕事だからといって割り切るのではなく、最大限相手のために尽くす。どうすれば一番喜ばれるかを常に考えています。そうした喜びの積み重ねが、また次の仕事へと繋がっていきます。仕事における一番の報酬は、お客様からの感謝であり、それが次の信頼を生むのだと考えています。

商売繫盛の秘訣が載っている日めくりカレンダー
業種 諸機器部品研削加工、諸機器部品製造加工
設立年月 1969年(昭和44年)1月10日
資本金 1,000万円
従業員数 12人
代表者 蟹谷 雅彦
本社所在地 神奈川県川崎市川崎区江川1丁目11番2号
電話番号 044-287-2135
公式HP https://kaniya-seimitsu.co.jp/













