- 2025-10-14
- 取材・インタビュー
製造部門の組織変革と、技術者育成に注力!
東京都目黒区にある富士精器株式会社は、旋盤加工による金属切削加工を得意とする、精密部品製造業の会社です。今回は、同社の取締役製造統括部長であり、代表取締役社長のご子息でもある藤野開斗様にお話を伺っています。第二回は、藤野様の入社までの経緯と、入社後現在までに行った社内の改革について展開していきます。
専攻は文系だったが、工作機械の面白さに気づく
-ご入社の経緯や現在までの歩みを教えてください。
藤野氏:富士精器に入る前にヤマザキマザックという当社がメインで使っている工作機械メーカーに入社させていただき、そちらで4年ほど勤めてから、家業である富士精器株式会社に2018年に入社しました。
思い起こせば、幼少期からここにいて、まさに機械に囲まれて生活していましたが、あまり工業的なものに興味があるタイプではありませんでした。大学では文系の経済学部に進みましたし、当社を継ぐか継がないかは特に考えずに過ごしていました。
ところが、就職活動のときに、転機がありました。就職説明会である企業さんから、工作機械はマザーマシーンというのだよという話を聞きました。マザーマシーンは「母の機械」の意で、そこからいろんな部品が生まれて行く一番原点の機械で、それ次第で世の中のあらゆる精度が決まっていくという話でした。それを聞いて、工作機械は工業製品の結構根底にある分野で、それに携わることが面白そうだと感じました。それで、家業に興味が湧くようになったのです。
富士精器入社後は、製造部に配属となり、5年程経った2022年頃に課長職になり、製造部門のマネジメントをやるようになりました。役員になってからは、まだ1年弱ですが、会社全体も見るようになっています。

工作機械のスペックについて語る藤野様
製造部門のマネジメントに着手
-現在、製造統括部長として取り組まれていることについて紹介してください。
藤野氏:一つ目には、生産開発システムを導入したことです。
それまでは、全て人の手で、エクセルや文書で生産管理業務をしていました。例えば製品1個あたりの加工時間やトータルの工数を計算するのにとても時間がかかってしまうなどのムダが発生していました。現在はペーパーレスにして、製品のデータをすべてこのシステムの中に取り込みました。それにより、生産管理に必要な計算が短時間でできるようになり、各作業員は当日の作業について、それをみて動くことができますし、またタブレット端末で、いつどこの作業場からでも進捗を確認することができます。
二つ目には、新しいデータ管理ソフトであるBIダッシュボードを入れたことです。
当社では加工高の達成度の低さや不良率の高さに悩みを抱えていました。それらに対する目標数値は、一応あったのですが年単位かつ全社一律のものでした。そうすると自分がいくら頑張っても到底及ばなかったり、逆に全然頑張らなくても達成する時もあったりしました。今では、機械ごとに加工高達成率や不良率をタイムリーに更新して「見える化」をしました。担当者は機械ごとに割り振られていますが、毎日みんなでそれを見るので、現状の数値を確認して一体何が原因なのかといった議論がすぐできるようになりました。
-そういった生産現場の改革の背景には、藤野様にどのような考え方があったのでしょうか。
藤野氏:属人化せず、なるべく誰がやってもいいような仕組みにしようという考え方をもってやっています。
例えば、複雑な形状の製品が増えてきている中で、品質チェックに必要な画像寸法測定機を導入したのですが、実際の製品が設計とどのくらいずれているかについて、特定のプログラムを組んでおくと、製品を置いてボタンを押すだけで測定が始まるものです。これを入れた背景も、測定する技術者による誤差をなくし、どの技術者が担当しても一定の精度を保つためです。

画像寸法測定機の説明をする藤野様
技術者とのコミュニケーションや人財育成に腐心
-機械を動かす技術者が大切になってきますね。教育や人財育成はどのようにされていますか。
藤野氏:当社では20年以上の経験を積んだベテランもいますが、うまく機械を使えるようになるのはそれなりに時間がかかります。そこで新人の方向けに、富士学校という社内教育制度を設けています。講師も日替わりで、ベテラン技術者が担っています。カリキュラム内容は、一般知識をベースにしながら、社内独自の手法に対する習熟を取り入れています。
また、機械を動かすためのプログラミング教育もやっています。プログラムは対話型なので、比較的やりやすいです。例えば「外径は何φですか?」など、聞かれたことへの返答を打ちこんでいくだけでそのプログラムが出来上がるので、ゲーム感覚でスキルを身につけることができます。
あとはOJTです。最初は、リピート品という、会社で実績のある製品のうち、比較的簡単なものから先輩と一緒に担当してもらって、何回かできたら次は一人でやってみて、徐々に独り立ちしていく。それができるようになったら、機械のグレードを上げて、機械を担当者がローテーションするのですが、あえてそのローテーションを促して、ステップアップするように担当者を変えていきます。実践が本番になってしまうのですが(笑)。
また、その人各々の熟練度をスキルマップという形で「見える化」しています。そのスキルが定期的に上がっていくと、モチベーションにつながると思います。管理職になってくると、部下メンバーの習熟度の上がり方が管理者の評価になってきます。その技術者が最大限できるレベルの仕事がどこか、といった会話を普段からしています。
-メンバーとのコミュニケーションで気をつけていることは何ですか。
藤野氏:組織風土はもともと保守的で、それまでやっていた仕事しかやらないぐらいの雰囲気がありましたし、教育についても、新人は見て覚えろという昔ながらのやり方が残っていました。そこから私が役職をいただいたときに、若返りも含めて社内の雰囲気もだいぶ変えました。
今は、新しいこと難しいことにチャレンジするような雰囲気に徐々になってきました。みんなそれぞれ自分なりの課題をもって、新しいことを定期的にやっているので、難しい仕事が来ても、自分だけでなく他の方もやっているから、文句は言えないなという話を実際聞きます。また、かつては新しいことをやろうとしない社員もいました。担当や配置を変えて、一番新しい機械を担当させたところ、現在ではすごく前向きになって、新しいことも学ぶし、現場のカイゼンも率先してやるようになりました。現場の雰囲気は変わるものだということを実感しました。
1日1回最後に集まって、夕礼を実施して明日の予定や課題などを話し合っています。あとは製造会議をやっていて、今までは上のトップ数人だけで話し合って決まっていた内容を、ブラックボックスにせず数字などを積極的に開示して、みんなで話す場を設けたのは意識して実施しました。技術を支えてくれているメンバーの意見も取り入れながら、業務改善や会社への提言を行っています。

設備を操作する若手技術者の様子
業種 精密部品製造業
設立年月 1936年2月26日
資本金 1,200万円
従業員数 17人
代表者 藤野雅之
本社所在地 東京都目黒区碑文谷1-12-15
電話番号 03-3715-5401
公式HP http://www.fujiseiki.co.jp/














