お客様の“欲しい”がある限り、続けます(久保金属株式会社 インタビュー②)

「考える」力こそ久保金属のDNA

杉並区の住宅街に佇む久保金属株式会社。精密製品製造業ではあるがコア技術を除いて製品を自社では生産しないファブレス企業だ。現在は、まったく質の異なる3つの事業が主力をなす。久保金属はいかにして現在のユニークな立ち位置を築いたのか。第2回目は、久保金属が現在地にたどり着くまでの来歴について、久保社長に語ってもらった。

 

気がつけば…材料屋からファブレス企業に

久保社長は3代目と伺いました。

久保氏:久保金属はもともと祖父が作った会社です。祖父は戦時中、零戦エンジン製造で有名な中島飛行機の荻窪工場に勤めていましたが、終戦で会社が解散したことで仕事がなくなり、鉄や銅の屑を大手精錬に原料を売る商売を東京都杉並区下高井戸で始めました。それが1946(昭和21)年です。1950年に朝鮮戦争が勃発し、資材の需要が高まったことから本格的に問屋を始めました。真鍮や銅を150キロほど自転車に積んで、吉祥寺の大手メーカーに納めていたようです。

シャープペンシルの三ツ割チャックの写真(左)と2代目博一社長当時使用の工作機械(右)(いずれも久保金属株式会社提供)

父が2代目を引き継ぎ、その頃には日本経済の盛り上がりから多くの材料を扱い、商いも堅調でした。父はモノ作りが好きで、省力化に尽力ました。例えばシャープペンシルに使われている三ツ割チャックは3つの部品で作られていますが、その部品を同時に製造する装置や、3部品を1部品にしてしまう製造方法などがあります。お客様の評価は高かったのですが、量産には挑戦しなったようです。
他にも、開発した技術が多くありました。しかし特許という開発者や中小企業を守る制度があることを知らずにいたようで、社内に1人でも特許を取ろうよという人がいたら、技術が守られて継続して事業が発展したんだろうなと思います。


取引先からは「中小企業のまとめ役」と

御社は、純粋な製造業というよりはユニークな会社という印象を持ちました。

久保氏:最初は問屋で始まったので卸売り問屋でしたが、途中から購入している金属を加工するモノ作りを始めました。ハードディスクドライブ向けの部品を100万個切削していた時期もあるんです。作るものは時代時代で変わってきましたが、「考える」という力と経験があったからこそ応用があったと思います。

現在メインの顧客である複写機メーカーからは、中小企業のまとめ役とも評されます。図面通りに削ってくれというような依頼は当社には来ないんですけど、「どうしたら良い?」って相談は多いんですよ。久保金属なら親身になって考えてくれるということのようです。できる・できない、得意・不得意ありますが、多くの仲間がいます。当社でできないことがあれば仲間にやってもらうこともあります。

 

3代目祐一社長は2020年、創業の地である杉並区下高井戸に本社を戻した

顧客の”欲しい”に応えることが、製造業の仲間の”欲しい”の下支えになるようなことを、僕はやりたいと思っています。当社の機械を仲間の会社に置かせていただき、機械の共有化をしています。もちろん当社の注文を優先していただいていますが(笑)。製造業者とお客様の”欲しい”を共有し応えることを通じて、結果として自社のビジネスの再構築にも繋がっているのではと思います。
やっぱり中小企業のおやじたちって経験と知恵が生半可ではないんですよ。だけど取引先の“欲しい”がないから苦しんでいる。本当に“欲しい”と中小企業がマッチングしていないだけだと思います。営業という術(すべ)を知らない中小企業は多いです。これらをマッチングさせれば本当にいい仕事をすると思っていて、目指す志が一緒な仲間が連携していたら強いと思います。

 

「考える」DNAの底流に公の心が・・・

大企業の“欲しい”と中小企業のマッチング、素晴らしいですね。

久保氏:STEINも最初はやっぱりアンマッチでした。北海道でしか営業していなかった松村さんと、世界に“欲しい”があるのを知っている僕たちが融合することによって、アンマッチをマッチングさせたっていうのは大きいかと思います。

この技術は、時代が追いついてきたと思っています。開発した50年前は日本でも需要があったかもしれないけど、それが徐々に要らなくなってきていた。でも、そこへ脱炭素とか環境保全とかが重要視されている中、土を使う重要性に考えがもう一回戻る。土は地球上に人類が生まれる前からあるものです。途上国の“欲しい”にいち早く気づいたのが遅いくらいです。発展途上国に知っていただき興味を持っていただき、触っていただき使っていただく。これから世界のインフラを整備することにより、現地の生活の下支えができるなと思っています。公(おおやけ)に貢献したいという気持ちにも適っていますしね。


会社名 久保金属株式会社

業種   精密製品製造ほか

設立年月          昭和21年11月9日

資本金              1,960万円

従業員数          10人

代表者              久保祐一

本社所在地      東京都杉並区下高井戸4-5-5

電話番号          03-6304-6130

公式HP           http://www.kubo-kinzoku.com/

この記事の著者

田畑正

田畑正プランドゥパートナーズ代表 中小企業診断士/農業経営アドバイザー

大学卒業後、テレビ朝日で約35年間政治記者として活動。この間取材した首相は、中曽根氏以降の20人余に上る。定年を前に、政治記者を志した原点である「日本農業の再生」を目指し一念発起、中小企業診断士と農業経営アドバイザーの資格を取得。現在は独立して「農業と中小企業の経営力を開花させる」をモットーに広く支援活動を行っている。

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