お客様の“欲しい”がある限り、続けます(久保金属株式会社 インタビュー①)

お客様の“欲しい”に応えて79年。気がついたら事業の柱は3本に

京王線の上北沢駅から北東に徒歩7分。商店街を抜け、多くの車が行き交う甲州街道を渡ってすぐのところにその会社はあった。久保金属株式会社。路地一本隔てた隣はマンションである。精密製品製造業ではあるが製品のほとんどを自社では生産しないファブレス企業だ。現在は、まったく質の異なる3つの事業が主力をなす。久保金属はいかにして現在のユニークな立ち位置を築いたのか。2011年から社長を務める3代目の久保祐一代表取締役に話を伺った。第一回目は現在の主力3事業の概要について紹介する。

 

取引先から絶大な信頼を寄せられる「異種材料接合」工法

現在の御社の事業について一つずつお聞かせください。

久保氏:1つめはiMPACT(インパクト)工法という異種材料接合工法を使った事業です。機械的強度の異なる素材の特性を活かし、塑性流動させることにより、機械的に異種材料を接合する技術です。もともと存在した異種材料接合という技術が、時代とともに軽量化のニーズを受け、特許化されるなど変化して現在のインパクト工法になりました。この工法を使って当社が主に製造しているのは、コピー機の部品です。コピー機の中には色ごとにトナーが配置されており、このトナーを搬送するローラーの両端部品を製造しています。この部品の精度が低いと印刷時に不具合が発生することから、
非常に高い技術を伴う精度が求められます。

久保金属株式会社 代表取締役社長 久保祐一氏


フランジシャフト部品のステンレスのシャフトに細工が施され、フランジ部のアルミを圧し潰し塑性流動をさせ異種材料の接合が完成します。

ステンレスを圧し込んでもアルミが溢れ出すことはない(久保金属株式会社提供)


大手複写機メーカーには、月に多くの関連部品を採用していただいています。他には、軽さを要求される大手釣具メーカーさんの釣り具のリールの中にもインパクト工法を用いた部品が採用されています。クルマの部品も採用試作を提出するなど調整中ですが、慎重に検討されています。これから普及が期待される電気自動車は、軽量化のニーズは顕著で、そちらも着手したいところですね。

iMPACT工法により形成された異種鋼材による棒材(久保金属株式会社提供)

 

50年前の技術で途上国のインフラ整備

2つめはどのような事業でしょうか?

久保氏:2つめは、STEIN(シュタイン)という土壌硬化剤事業です。もともとSTEINは北海道の旭川で開発された土木資材です。土90%、STEIN10%を混ぜて固めることができます。この技術は50年前の1975年に開発され、舗装率15%の日本で多く使われていました。特に地方は、国道こそ舗装されていていましたが、一歩脇道に入れば道路は土舗装や砂利舗装でした。STEINは、土の持つ電荷とセメントの持つセメント反応を利用して土を固めます。状況にもよりますが、3日程度で大型トラックが通れる道路として利用できるようになります。見た目は土と同様できれいとは言えませんが、舗装率の低い途上国ではニーズが高い状況です。

我々は、このSTEINを用いてJICA(国際協力機構)の事業や国連などに知っていただき、土を固めることにより生活の下支えができれば良いなと考えて行動しています。

 

最初はどこの国で実施したのですか?

最初はカンボジアでした。JICA(国際協力機構)から事業採択を受け、ニーズ調査や、STEINが現場で技術実証され普及が可能かなどの調査を実施しました。スリランカでも灌漑向けに挑戦しました。現地の農家の方々と共に水路を施工し、専門家がいなくても施工ができることを実証しました。現在ではアフリカにも挑戦しています。

私はSTEINを知っていただくために国際機関や関係するコンサルタント、あるいはメディアに向けて活動をしています。最終目標としてはSTEINの現地製造となります。簡単ではありませんが挑戦を続けます。

STEIN(土壌硬化剤)を使って固めた土の見本

 

環境への興味が生んだ「燃やさずに分解」

3つめの事業を教えて下さい。

久保氏:有機物分解装置です。固形や液体の有機物を、酸素の力を最大限に利用して、安全な気体に分解する技術を持つ装置です。これは東京都中小企業振興公社から支援を得て開発をしたものです。酸化チタンを熱して有機物に接触させることにより有機物がガス化されるという技術です。分解されたガスは二酸化炭素(CO2)や水(H2O)などの気体になります。当初は被災地の衛生問題を解決するために開発しました。また老人ホームで出る紙おむつの処理ができればと考え開発に従事しました。コロナがあり実験もできなくなり止まっています。これらの基礎と経験が事業に取組むきっかけでした。地球に棲ませていただいている私たちは、棲む場の保全をするべきと考えています。


会社名 久保金属株式会社

業種   精密製品製造ほか

設立年月          昭和21年11月9日

資本金              1,960万円

従業員数          10人

代表者              久保祐一

本社所在地      東京都杉並区下高井戸4-5-5

電話番号          03-6304-6130

公式HP           http://www.kubo-kinzoku.com/

この記事の著者

田畑正

田畑正プランドゥパートナーズ代表 中小企業診断士/農業経営アドバイザー

大学卒業後、テレビ朝日で約35年間政治記者として活動。この間取材した首相は、中曽根氏以降の20人余に上る。定年を前に、政治記者を志した原点である「日本農業の再生」を目指し一念発起、中小企業診断士と農業経営アドバイザーの資格を取得。現在は独立して「農業と中小企業の経営力を開花させる」をモットーに広く支援活動を行っている。

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