- 2024-11-19
- 取材・インタビュー
自動化で人に余白を!メカトロニクスへの挑戦
第二回では、創業当時の様子や松橋社長が入社されてから取り組まれたこと、継続的なイノベーション創出をするための工夫などについてお話頂きました。本最終回では、現在の課題、そして今後の未来に向けた想いについてお伺いします。
「メカトロニクス」の推進、その肝となる考え方とは
―海外展開もとても好調ですね。現状の課題についてお聞かせ頂けますでしょうか。
松橋氏:おかげさまで利益率はとても高いです。ただ、現在の製品力だと足元では足踏みしてしまっているように感じています。なので、更なる飛躍をするため無線や通信などの「電子化」を組み合わせ、製品自体のレベルを上げていこうと考えています。
例えば「無線通信技術」。装置内のセンサモジュールがバッテリー駆動のため、定期的に充電のための保全作業をしなければならない。こちらの課題に対し、無線通信技術を用いた充電方法を行い、完全自動化を目指す。これができれば充電をしなくて済むので、保全が必要なくなるんです。こういった画期的な提案を行うためには、自社で「自動化」を上手く導入していく必要があると思っています。まずは自分たちで試す。私たちはユーザーであり、サプライヤーだと思っています。
このように、今はまさに「会社が変わろうとしている時期」だと感じています。そしてその「変化」には「人」が絡んでいる。イノベーションの肝は「人」なんです。
―「電子化」を軸に更なるイノベーションを起こすということですが、やはりそこでも大切なのは「人のつながり」なのでしょうか。
松橋氏:その通りです。今、ランクやヒエラルキーで人を判断するようなことが様々な問題の根底にあると思います。現代社会においては左脳でコミュニケーションを図ることが染み付いてしまっているんですね。役職とか学歴とかキャリアとか。そうすると人間の生存本能が働き無意識に「本音を言ってはいけない」となるんです。左脳の世界は論理の世界なので人と人が繋がることができないんですよ。なので右脳を使って相手の感情をまず受け取る「共感」ということを重視しています。社員は全員、コーチに指導してもらいながら、この「共感」を学ぶ研修を少なくとも18時間受けてもらうようにしています。人によっては36時間ぐらい受講してもらっていることもあるんですよ。あとは、全社員総当たりで「1on1」をやっています。普通だと全く知らない社員と1時間何を話そうか戸惑いますよね。でもこの「共感」を通じ、相手のキャラクターをまず受け止める訓練をすることで世代間ギャップやポジションの違いなども乗り越えて話ができるようになるんです。
「共感」が生む人の繋がり、「自動化」による人の余白
―「共感」の考え方が根付いているからこそ、継続的なイノベーションに繋がるのですね!そもそもどのようなきっかけでこの取り組みを始められたのでしょうか?
松橋氏:きっかけはスーパーマンみたいな父親がいなくなったことです。父親は開発者としてとても偉大だった。そのような人がいなくなり、普通の人間がどうやってクリエイティブなものを作っていけばいいのかと考えていた時に思いついたんです。「新しいこと」はいつでも異端です。多くの人が考える今までの常識があって、ある開発者がそれを常識じゃない、って発言した時にちゃんと肯定してあげなかったらその開発者は迫害されてしまう。「君にはそう見えるんだね」とお互いに肯定し合う環境じゃないと面白いものって見えないんです。集団対話ができるように個人同士がつながらないとだめ。そのためには、個人のメンタルを進化させないといけないと思いました。人はそれぞれキャラクターが違う。OSの違いによって見え方が違うからこそ、新しいものが見えてくると思っています。最後は「共感」から生まれるクリエイティブしかないんです。こういった考え方は家庭や学校の現場でも取り入れていくべきだと思います。
―とても大切な考え方を教えて頂きました。お互いの個性を認め合いながら価値を創出していく上では「心のゆとり」も大切になると思いますがいかがでしょうか?
松橋氏:「余白」は大切ですね。特にリーダーになる人はスペースを持って対話できることが求められると思います。また、今よく言われているDX化も、人に余裕を持たせてクリエイティブな活動ができるように活用していくべきだと考えています。うちでも「自動化」を進めていますが、全てはこの考え方に起因します。D Xで人間をできるだけフリーにし、その分で創造的な対話をする。あくまで付加価値を生むのは人間なんですよ。
今後の展望について
―自動化は人間をフリーにし、創造的な対話を生むためのものなのですね。お話は変わりますが、今後の展望についてはいかがでしょうか。
松橋氏:「メカトロニクス」を推進していきたいと思います。目指すべきは「単純検査労働を無くす世界」です。電子化については難しいことも多く、のたうちまわりながらにはなりますが、少しずつ進めていきたいと思います。また社内においても「自動化」「内製化」をどんどん進めていこうと考えます。部品工場の5軸機器や組立工場のA M R等、機械で効率を上げられるところについては設備投資を惜しまないつもりです。また基板内製化を進め、コストダウンとノウハウの蓄積に努めていくつもりです。事業承継については、60代の間にと考えていますね。あと4年くらいかな。息子はI C Tが得意でその分野で貢献してくれているので、自分とはまた違った形での活躍を願っています。
業種 工場の自動化に貢献する「高精度工業用センサ」の、開発・製造・販売
設立年月 1976年6月10日
資本金 4000万円
従業員数 118人(2023.5.1現在)
代表者 松橋卓司
本社所在地 〒190-0011 東京都立川市高松町1-100 立飛リアルエステート 25号棟 5階
電話番号 042-527-3278
公式HP https://www.metrol.co.jp/