「技術を支える人づくり!若き後継者の奮闘記」(富士精器株式会社インタビュー①)

精密部品でさまざまな産業を支える、縁の下の力持ち

東京都目黒区にある富士精器株式会社は、旋盤加工による金属切削加工を得意とする、精密部品製造業の会社です。今回は、同社の取締役製造統括部長であり、代表取締役社長のご子息でもある藤野開斗様にお話を伺いました。第一回は、会社の事業内容やこれまでの歩み、また強みとなる切削加工技術の特徴を中心にご紹介します。

戦前から事業を営む富士精器

-まずは、御社の会社概要についてお伺いできますでしょうか。

藤野氏:私どもは、いただいた図面を受けて、精密部品の切削加工を行うOEM事業を営む会社です。すべて自分たちで行うのではなく、連携するパートナー企業で加工してもらう外注も取り入れています。当社をハブにいろんな製品をお客様にお届けする体制を整えています。

-これまでの御社の歩みについて教えてください。

藤野氏:創業は、1936(昭和11)年です。戦時中は戦闘機「隼(はやぶさ)」で知られる中島飛行機の直属工場で、航空機のエンジン部品などを作っていました。終戦後は、自動車部品を手掛けて成長してきました。

自動車部品は何万個単位という量産型でしたが、当社独自の技術を磨こうとNC旋盤の機械を導入したことで、多品種小ロットの精密機械部品の製造へと方向転換をしました。そこから色々な業界の製品の部品の受注を増やしていき、現在の姿になっています。

工場入口での藤野様の写真

 

独自の複合旋盤技術や品質管理体制が強み

-長年培った御社の強みは、どういったところにあるのでしょうか。

藤野氏:旋盤の中でフライス加工も同時に行えるといった、複合旋盤技術が強みの一つです。丸だったものを四角にして削り落としたり、様々なところに穴を開けたりして、複雑な形状を作り出すことができます。対応サイズですが、一般的にφ(ファイ:直径ミリメートル)20以下の細い加工を行う会社が多くて、大きくてもφ65が一般的にみられる限度でそれでも十分太いというところですが、我々はその上のφ100までできるところを強みにしています。

使用する材料については、旋盤加工は輪切りの材料を使うことが多いのに対して、当社では長いバー材を使って、しかも連続加工することができますので、省人化にもつながりその分コストを抑えられています。素材についても、ステンレスを中心に、チタン・アルミ・真鍮などの難削材も加工対応ができます。他社さんが敬遠されるような材質、例えばインコネルのような材質も受けられるので、幅広く相談をいただきます。対応数量については、数百~数千個程度の中量産を得意としています。

生産後の品質チェックについては、社内の品質管理部が、三次元測定機などを使って高精度な仕上がりを検査し保証する体制を構築しており、安定した品質で部品を届けられます。ここでは、長年自動車部品の製作で培った品質管理手法が生きています。

また、目黒区という都心に近い立地にあるので、得意先の急な依頼に対応しやすいのも強みになると思います。

加工直後の部品の一例 品質検査を経て出荷される

 

こんなところに活かされている、富士精器の部品

-販売についても教えてください。市場概況や販売状況はいかがでしょうか。

藤野氏:部品市場全体の中では、特に自動車や半導体関連の部品は、市場としては大きいのですが、やや浮き沈みが激しいところがあります。一方、医療系やロボット産業向けの機械部品などといった、成長市場もありますね。
当社は、特定の業界や大きな会社に依存しておらず、幅広い業界に販売しています。最も大きな取引金額のお客様でも当社に占める割合からすると20%ぐらいで、数多くの取引先様に納品させていただいています。

 

-御社の部品は、具体的にどのような機械に使われているのでしょうか。

藤野氏:最終的な使われ方は、多岐にわたります。ステンレス部品であれば、バルブ(弁)やポンプなど、配管内の流体物が流れるところに使われることが多くあります。

例えば、歯医者さんで歯型をとるときに、混ぜた粘土を歯に当て、時間をおいてから剥ぎ取って歯型を取ることがあると思いますが、その溶剤を混ぜる機械の中のステンレス部品を我々がほとんど担っています。
鉄は、錆びてしまうのでメッキしたりするのに対して、ステンレスは耐食性があるので、そのまま使えます。半導体や建設、食品系の機械や設備にも多く使われています。

意外なところでいえば、カーレース用のヘルメットの部品なども挙げられます。レース用のヘルメットは、後ろの部分に運転席のシートと固定する部品があって、そこの連結部分に当社の部品が使われているのですよ。

富士精器株式会社の精密部品群 複雑な形状が特徴

 

-営業はどのような体制なのでしょうか。

藤野氏:営業部があり、社長ともう1名で営業を担っています。
リピート受注が多く、得意先からは、保守的で堅実な会社という印象を持っていただいているようです。不確かなところがあればすぐに取り上げて、お客様の指示を仰いだりするので、その意味では信頼性は高いと思っています。

新規開拓では、WEBサイトからの引き合いに対応したり、展示会にも出展したりします。例えば、最近だと「機械要素技術展」に東京都中小企業振興公社の枠で毎年出させていただいているのですが、そういうブースに入って開拓活動をしています。そこからテレアポしてつながる例もありますね。
あと、同業でも撤退されている会社さんも時折あり、そういうところの仕事を引き継いで請け負うこともあります。会社の数は、確実に減ってきていますね。この地域でも、辞めてしまった企業があります。不景気で辞めたのではなくて、後継者がいないため決断された会社もありました。当社は、地域のためにも引き続き取り組んでいきたいと思っています。

「機械要素技術展」出展ブースの様子


業種   精密部品製造業

設立年月          1936年2月26日

資本金              1,200万円

従業員数          17人

代表者              藤野雅之

本社所在地      東京都目黒区碑文谷1-12-15

電話番号          03-3715-5401

公式HP           http://www.fujiseiki.co.jp/

この記事の著者

矢野達也

矢野達也中小企業診断士

東京都中小企業診断士協会所属。食品製造業での商品企画やマーケティング実務を約20年経験。中小企業の新商品開発やブランディング、6次産業化のプロジェクトを、立ち上げから育成・定着まで幅広くサポート。マーケティングや人材育成等に関する研修講師の実績も豊富。

この著者の最新の記事

関連記事

ページ上部へ戻る