「技術を支える人づくり!若き後継者の奮闘記」(富士精器株式会社インタビュー③)

地域と共存して、発展し続ける

東京都目黒区にある富士精器株式会社は、旋盤加工による金属切削加工を得意とする、精密部品製造業の会社です。今回は、同社の取締役製造統括部長であり、代表取締役社長のご子息でもある藤野開斗様にお話を伺っています。第三回は、富士精器株式会社の将来の展望、および地域貢献について紹介します。

成長産業の機械に欠かせない部品を作る!

-富士精器株式会社の将来に向けた課題について教えてください。

藤野氏:経営戦略としての課題は、今後どの分野に注力してアプローチするべきかを定めることです。半導体や鉄道、ロボットなど、特に成長産業の業界に入っていきたいとある程度考えていますが、まだ明確にできていません。我々の強みを最大限発揮できる分野はどこか、どのような提案が可能なのかを、突き詰めていきたいです。

それに合わせる形で、5軸の複合旋盤加工機など高度な技術を駆使して、1個1個付加価値の高いものを作っていきたいです。中量産という、数百~数千個程度のボリュームゾーンを強みにしていき、今までできていないような複雑な形状をできるようにしたいです。

さらにいえば、OEMから脱却できないかという目線でも考えてみたいと思っています。つまり、自社製品の開発です。現状のような図面をいただいてからだと、一般的に価格競争になりやすい。新しいチャレンジとして、今後成長拡大する業界で自社ブランドを立ち上げられたら面白いと思っています。

 

-製造部門の今後の取り組みの方向性については、いかがでしょうか。

藤野氏:一つには、省人化を図っていく段階に来ていると考えていて、協働ロボットという産業用ロボットを導入しました。柵が不要で人の隣で働けるロボットです。万が一人間に当たっても、自動で止まるようになっています。そういう機械を導入することで、単純作業をさせることはもちろん、これは移動もできて、加工製品も色々変えられるということで、様々な業務の効率化を図れるメリットがあり、これから本格稼働を目指しています。機械の前に材料を並べておくだけで、機械が人の動きをまねて加工対応が可能なので、人が帰った後の無人の時間に加工を進めることができます。我々のこの工場自体が住宅街にあり、どうしても夜10時には稼働を止めないと近隣に迷惑になってしまうので、繁忙期には少しでも挽回になると思っています。また将来を考えると、人が採用できなくなってくることが考えられます。今はありがたいことに面接に来てくださる方もいらっしゃいますが、いずれそれがなくなるだろうとなった時に、少しでも生産量を維持するために、あらかじめ手を打っています。
二つ目には、省エネです。各機械メーカーが環境配慮型の設備を揃えてきています。得意先からも省エネ性能がどの程度あるかを監査の時などに指摘されるようになってきているので、先駆けて対応していきたいと思っています。

このように、今後もっと突き詰められる部分があると思っています。それをやっていると得意先から評価されて、新しい仕事が舞い込んでくるものだと思います。

富士精器株式会社ロゴをバックに写る藤野様

チャレンジを後押ししたい

-人づくりを大切にする会社の部門長として、組織や従業員のさらなる成長をどう推し進めますか。

藤野氏:技術者1人1人の個性を引き出していければと考えています。

ここに樹脂型の3Dプリンターがありますが、この導入にもちょっとした経緯がありました。ある若い社員がロボットを自作するのが好きで、自分で操作したりして大会に出ているのですが、そこで使用した新しい3Dプリンターが余ったので、会社で活用しませんかと言ってくれて、試しに入れたのです。それで、機械から製品が出てくる部分のカバーをさっそく樹脂製で作りました。

これは当社の特色になりますが、やりたいことがあればどんどんチャレンジをさせる。同じ彼が、ロボットを導入したいと話してくれたので、先ほど触れた協働ロボットを導入し、担当として彼に操作を覚えてもらっています。若手であっても、最前線に立ってもらえるよう後押ししています。

一方で、例えば刃物はある程度昔ながらの職人の世界で、自分で研ぐ感覚が技術力そのものであるという仕事で、なくならないと思います。そういった分野では、ベテランにも活躍をしてもらいたいと思っています。

「モノづくりは人づくりから」をモットーに、よい関係を築いて、お互いの信頼を深めていきたいです。

若手技術者の作業の様子 若手の主体的な活動を後押し

 

地域と共存して、これからも

-事務所や工場の壁に、小学生が工場見学に来られた様子の写真などが貼ってありますね。

藤野氏:地元の目黒区を中心に、小学3年生の工場見学をずっと受け入れていて、もう何十年とやっています。自分も小学生当時、見学に来ました(笑)。また、遠くから修学旅行で来てくれた工業高校の生徒さんたちもいるのですよ。

最初の頃は、社内でも業務の邪魔だと反発の声もあったそうですが、その都度きれいにして受け入れていると、常にきれいな場所にしたいと社員から声が上がってそこから5Sの意識が自発的に高まりました。

現在では、区の小学校の教科書(社会科教材)にも掲載していただいています。

売上に直接つながるわけではないですが、地域密着型企業としての当社のポイントです。

新しく入社された方にも、工場見学のアテンドを担当してもらって、当社のことを自分自身の言葉で紹介するので、自然と愛社精神を醸成できます。その点で、インナーブランディングにもなっています。

質の高い教育を子どもたちが受けることができる社会を創る。今後も地元密着の企業として、地域への還元を通じて社会貢献をしていきたいと思っています。

  富士精器株式会社が取り上げられている小学校社会科教材


業種   精密部品製造業

設立年月          1936年2月26日

資本金              1,200万円

従業員数          17人

代表者              藤野雅之

本社所在地      東京都目黒区碑文谷1-12-15

電話番号          03-3715-5401

公式HP           http://www.fujiseiki.co.jp/

この記事の著者

矢野達也

矢野達也中小企業診断士

東京都中小企業診断士協会所属。食品製造業での商品企画やマーケティング実務を約20年経験。中小企業の新商品開発やブランディング、6次産業化のプロジェクトを、立ち上げから育成・定着まで幅広くサポート。マーケティングや人材育成等に関する研修講師の実績も豊富。

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