三代目(アトツギ)の挑戦~日々の積み重ねだけが未来を創る~(佐藤製作所 インタビュー①)

目黒の街で68年

東急東横線の学芸大学駅を降りると、東西に延びる商店街をメインに多彩なお店が立ち並ぶ。ローカル感がありながらもお洒落な雰囲気の商店街を進んだ先にあるのが、今回の取材先である佐藤製作所だ。

この地で創業し68年になる同社は、11年ほど前から「銀ロウ付け」と呼ばれる技術を打ち出すことで知名度を上げてきた。また近年は「東京都女性活躍推進大賞」を受賞するなど、様々な面からメディアでも注目を浴びている。

以前は従業員の高齢化や業績悪化に悩んでいた同社。本記事では、改革の立役者である同社の「三代目」、常務取締役の佐藤修哉氏にお話を伺った。

第一回は、現在の事業概要と、強みである銀ロウ付けについて紹介する。

株式会社佐藤製作所の佐藤修哉常務取締役

 

銀ロウ付けをフックに様々な金属加工に対応

現在の事業概要について教えてください。

佐藤氏:業種としては金属加工業です。中でも、銀ロウ付けというニッチな溶接の技術を強みとしていますが、銀ロウ付け以外にも、はんだ付けや一般的な電気溶接、レーザー溶接なども行っています。また、板金加工、切削加工、旋盤フライス加工など様々な金属加工のほか、細いパイプや棒を曲げるような加工もやっています。手作業での仕事が多いのが弊社の特徴であり強みです。

売り上げ構成ではロウ付け関連が7、8割を占めますが、ロウ付け単体で請け負う仕事だけでなく、金属加工や部品加工と組み合わさった仕事の比率が高く、そのように一連の加工をまとめて請け負えるところも強みになっています。

最近では、組み立てや電気的な配線を含むものや、これまでの金属加工とは毛色の異なる手作業の仕事の依頼も増えてきています。

事務所で取材に応じる佐藤常務

 

様々な金属加工に対応しているのですね。その中で「銀ロウ付け」を打ち出された理由は?

佐藤氏:私が入社したのは11年前ですが、そこから銀ロウ付けのPRを始めました。それ以前は「板金も、旋盤も、溶接も、一通り全部できる金属加工の工場です」という言い方をしていて、特徴がなかったのです。何でもできると言っても顧客には刺さらないので私は何か尖らせたいと考え、思い切ってロウ付けに絞って打ち出すことにしました。

すると「ロウ付けの会社」として認知度が上がり、会社を知ってもらう機会が増え、見つけてもらえる確率も非常に高くなりました。特にホームページへのアクセスが以前とは比較にならないほど増え、今でも問い合わせのほとんどがホームページ経由なので、やってよかったと思っています。

 

見えないところで光る技術

銀ロウ付けとはどのような技術なのでしょう。

佐藤氏:ロウ付けは、古くからある金属溶接技術の一つで「ロウ接」と呼ばれる技術になります。接合する部品そのものを融解させて固定する一般的な溶接と違って、部品自体は溶かさず、間に「ロウ材」と言われる接着剤を溶かし込んで隙間を埋め、固定させるのがロウ付けです。

弊社では、大気中でアセチレンガスを使用したバーナーでの銀ロウ付けを行っています。「銀ロウ付け」というのは銀のロウ材を使用しているからで、アルミなど他のロウ材を使用したロウ付けも行っています。

 

私達の身の回りのどのようなところに銀ロウ付けの技術が使われているのでしょうか。

佐藤氏:銀ロウ付けは、銅合金(銅が含まれる金属)を接合するための技術として用いられてきました。ですから、世の中で銅合金が使われているものに銀ロウ付けが多く使われています。銅には電気や熱をよく通す特徴があるので、アンテナのような放送・通信機器の中や、スマホやパソコンなど熱を発する機器の中の熱を放出・冷却するためのパーツに使われていたりします。

銀ロウ付けで溶接した銅素材のトレー

 

若手の存在が安心感を生む

なるほど、見えないけれど重要な部分に、広く使われているのですね。

銀ロウ付けができる工場というのは少ないのでしょうか。

佐藤氏:まだあるものの、かなり減っているという感じですね。11年前には全国的にもそこそこありましたが、特にこの2~3年で工場の廃業が増え、今後もどんどん減っていくのは間違いないと思います。

ですのでロウ付けの仕事ができるというだけで多くの引き合いをいただいていますが、他社よりも品質が良いこと、あと弊社は若いスタッフの比率が高いので、供給の継続性、安定性が見込める点がお客様の安心に繋がっています。今注文いただいているお客様からはそこが一番求められていることのような気がしますね。

特にここ数年、相対的に他の工場が高齢化していて、若い人に技術を引き継げていないのだと思いますが、ロウ付けにかかわらずそのような会社で請け負いきれなくなった仕事をできないかという相談がちょこちょこ入ってきています。

 

コミュニケーション重視の経営

社内コミュニケーションを大切にされているそうですが、具体的にどのようなものがありますか。

佐藤氏:まず毎週月曜の午前中に1時間以上かけて全員参加で会議をやっています。そこでは上の人間の独演会にならないように、できるだけ皆の意見を聞くようにしています。毎週、一つの議題に対して数名に意見を聞いていくので、誰がどう思っているのかが全体に共有されるのです。最終的にまとめとして会社の方針を私が話しますが、もう10年近くやっているので、皆が意見を出し合うという文化が浸透しています。

 

それは若手にとっても、会社の運営に自分も関わっているという意識が芽生えますね。

佐藤氏:経営的に見れば、全員参加の会議の間は製造が止まるわけですから、「そんな非効率で意味のないことをやるな」と、最初の頃は社内でも否定的な意見が多くありました。

しかし、それは経営者のスタイルだと私は思っています。高度に統率されてトップダウンでガツンと動くチームを作りたければこのようなことはしませんが、実は私には入社間もない頃に人間関係における苦い経験があり、皆で仕事をしていきたいという強い思いがあります。そのため、コミュニケーションを重視した取り組みをしているのです。

多世代が対話をしながら作業する現場


業種   金属加工業

設立年月          昭和33年12月17日

資本金              1,000万円

従業員数          17人

代表者              佐藤 隆之

本社所在地      東京都目黒区鷹番3-20-7

電話番号          03-3712-6652

公式HP           https://sato-ss.co.jp/

この記事の著者

青柳紗千子

青柳紗千子オフィス アオ・インサイツ代表 中小企業診断士

大学卒業後、服飾資材専門商社、アパレル輸入卸企業にて計15年間営業として勤務。製造から小売まで、国内外サプライチェーンのあらゆる現場に立ち会う。その後、行政の男女共同参画分野職員を経て、中小企業診断士として独立開業。「人権経営」を提唱し、あらゆる人が能力を発揮できる強い組織づくりを支援している。

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