金型設計のアイデアで新たな価値を創造―金属プレス部品メーカーの挑戦(佐藤金属工業インタビュー③)

更なる成長を目指して新たな挑戦

佐藤金属工業株式会社は、金型の設計から開発・試作・量産までを一気通貫で行う金属プレス部品メーカーです。第一回では、佐藤金属工業株式会の業務内容、強み、会社の歴史について、第二回では、所有設備、金型設計の秘訣、社内の技術資格制度について紹介しました。本編最後となる第三回では、現在抱えている営業面の課題や、その課題の解決に向けた今後の取り組みについて記載します。さらに、5年ぐらい先を見据えたご子息への事業承継についても掘り下げます。

佐藤金属工業株式会社 佐藤社長(左)とご子息の佐藤貴志氏(右)


営業体制の現状と課題

営業はどなたが行われているのでしょうか?

佐藤社長:営業が当社の一番の課題です。営業といっても実質私1人です。これまで、大規模展示会、プレス加工機械メーカーが主催する展示会に出展したり、商工会議所の商談会に参加したり、受発注のサイトに登録したりしてきましたが、なかなかお客さんの幅は広がりませんでした。2019年ぐらいまでは展示会も何年か続けてずっと出展してきましたが、新型コロナウイルス感染症の流行で申し込んでいた展示会への出展を断念しました。また、コロナ禍の影響で見積依頼の件数もがくんと落ちています。その状態が今も続いています。特に自動車部品の引き合いが大きく減りました。今年の5月以降は、息子を現在の品質保証部から管理部に異動して、営業体制を整えていこうと考えています。

品質保証部にある検査機器

 

新型コロナウイルス感染症の影響は大きかったのですね。新規のお客さんを獲得するためにやろうとしていることはありますか?

佐藤社長:本当は展示会への出展やWEBでの露出も増やしていきたいと思っています。ただ、展示会の出展には時間も労力もいるため、2019年で一度途切れてしまってから、重たい腰が上がらなくなりました。ホームページも、ほったらかしの状態になっています。当社ホームページを見に来る人やエンジニアに刺さる内容や文言が何なのか、しっくりくるものが見つからずにいます。自分たちだけだと1人よがりの内容になってしまうので、今後は外部の方の力も借りて、ホームページの見直しも進めていこうと考えています。

 

次の世代に向けた新たの取り組み

今年の5月以降、ご子息の貴志さんが営業を担当されていくとのお話でしたが、今後は徐々に経営を引き継がれていくのでしょうか?

佐藤社長:その予定です。息子が当社に入社したのは3年前で、入社後は製造部を経験して、今は品質保証部にいます。今年の5月に来てもらい、そこから5年ぐらいかけて引き継ぎをしていこうと考えています。私の年齢のこともありますし、私自身も42歳の時に経営を引き継いで、ある程度の経験も積んで、まだまだ体力もあるので良い頃合いだと思っています。

社長の佐藤隆幸氏(右)と息子の佐藤貴志氏(左)

 

 

5月以降、会社をこのようにしてきたいという話はされているのでしょうか?

佐藤社長:まずはすぐ引き継げるところの引き継ぎですね。加えて、今のままじゃなくて、新しいこともやっていかなければいけません。今年やらないといけないと思っているのは、先ずはISO14000を取って、次にISO45001を取ることです。ISOを取らないと、ベンダーの選定基準に合致しないので、やらざるを得ないと思っています。やることによって会社のレベルも上がるので、前向きに取り組んでいこうと思っています。あとは社内の電子化も今後進めていきたいと考えています。

 

電子化とは具体的にどのような作業になるのでしょうか?

佐藤社長:電子化は見える化だと考えています。生産管理の仕組み自体は既にありますが、紙に手書きでやっています。それぞれの機械が今どこまで作業が進んでいるのか、事務所では分かりません。分かるのは担当者だけで、部長もその機械のところに行ってみないと分からないという状況です。そういったところを電子化して、どこにいても、どの機械がどれだけ動いていて、稼働率がどれぐらいなのか、分かるようになってきたら、もう少し改善の方法も見えてくると考えています。仕組みとしては既に社内にあるので、それをいかに電子化していくかが今後の課題です。

工場内の様子-製造現場の見える化が課題


父から息子へ―息子が考える今後の展望

会社を引き継いだ後に取り組んでいきたいことは何ですか?

佐藤貴志氏(以下、佐藤(貴)氏):社長が言ったように電子化ということもつながっていますが、今よりも業務の効率化を進めていきたいと思っています。今までの勘やコツに頼った作業も、最新の技術を使用することで標準化できる部分も多くあると思います。今まで通りの金型作りや業務の流れに、新しい技術や考え方を取り込んで効率化や標準化を進めることで、より利益の出る会社に変えていきたいと考えています。

 

佐藤金属工業に入社する前は別の会社で働いていたと聞いています。外で学んできた内容で活かせそうなところはありますか?

佐藤(貴)氏:縁があって自転車部品メーカーのシマノさんで働かせてもらった経験が大きいと思います。製造部に2年、鍛造技術の部署に1年半ほど在籍しました。シマノさんでは、設備や考え方も最先端で、最新の技術や手法を数多く目にする機会がありました。その経験が、現在の自分の考え方のベースになっています。今後は、そういった新しい技術や考え方をどう吸収して、社内に展開していくかが課題だと考えています。

将来の展望について語る佐藤(貴)氏


会社名 佐藤金属工業株式会社

業種   金属プレス部品メーカー

設立年月          1974年7月

資本金              2,000万円

従業員数          30人

代表者              佐藤隆幸

本社所在地      大阪府堺市堺区神南辺町5丁152-5

電話番号          072-227-7715

公式HP           https://www.satokk.com/

この記事の著者

豊田裕史

豊田裕史中小企業診断士

2022年11月中小企業診断士登録。医療系のWEBサービス会社に勤務。新規事業の開発に従事。診断士としては区の創業塾に参画し創業を支援。趣味はマラソンと御朱印集め。

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