- 2024-11-5
- 取材・インタビュー
世界が注目する、「精密位置決めセンサメーカー」の今
今回ご紹介するのは、多数のメディアに出演し世界から注目を集める「株式会社メトロール」です。精密位置決めセンサを取り扱う同社は世界の取引実績74カ国、対応機械メーカーの数は200社以上に及びます。第一回の今回は、「圧倒的製品力」を誇るメトロール社の特長に迫ります。
「持たざる経営」で製造工程を常にアップデート
―メトロール社の特長について、「製造」の観点からお聞かせください。
松橋氏:なんといっても「身軽」であることです。我が社では、固定資産が7%ぐらいしかありません。ここにある土地や建物も、基本的に全て大家さんから借りています。平地で見通しも良いので機械も安定しますね。自社の部品は1万点以上ありますが、そのうちの重要部品は全て自分たちで作っているんですよ。その方がコストダウンにも繋がるし、製造工程の中にノウハウや改善点があると思っています。そのための設備投資は惜しみません。改善や設備投資の一例として、以前は汎用機で人が手作業でやっていたことを現在は5軸の機械(従来の3軸マシニングセンタに回転軸と傾斜軸を追加した機械)で部品を作るようになっています。
―なるほど、「持たざる経営」を行うことで積極的に設備投資ができ、製品の差別化にも繋がっているのですね。ではセンサを作る「重要部品」の製作工程についてお伺いできますでしょうか。
松橋氏:工場をお見せしながらお話しましょう。うちは「部品工場」と「組立工場」の2つがあります。以前は部品についても外注を行なっていましたが、先程お伝えした理由から現在では重要部品の多くを自社工場で製造しています。現在は5軸の機械を5台導入しています。通常はフライス盤と旋盤の2台で行う作業を、この機械なら1台でこなすことができるんですよ!また、うちの部品加工の工程では、基本的に「機械の中で検査を完了する」プロセスにしています。そうすることで、作業者がつど部品を出して検査して戻して…という「段取り」の作業の手間が圧倒的に削減できる。部品加工においてはこの「段取り」をいかに少なくするかが大切。刃物が金属に当たる時間が長ければ長いほどお金を産むんです。町工場の凄腕の職人さんが高齢化に伴いどんどん引退していく中、いかに機械を操り人間の代わりとして操作するか、そこを重視していますね。工場のメンバーには「油まみれになって仕事をする時代は終わっていくから」と話しています。
―段取りを減らし、生産性をあげることで部品が効率的に作られていることが理解できました。機械を操作する「電子」の技術はどのように習得されているのでしょうか。
松橋氏:これは手探りで行なっていますね。元々ノウハウがあったわけではないので。5軸の機械も現場の意見を吸い上げて導入しました。うちは各現場に役員が入っているので現場の意見の吸い上げが早いんです。「導入するからにはしっかり使いこなして!」と言っています。社内トレーニングはなく、担当者が直接機械メーカーに行き、使用方法を覚えながら稼働させています。若い社員は比較的習得が早く、5年くらいでものにしていました。ただ、トラブルが起こると機械に原因があるのか、それともプログラムに原因があるのかが分からずのたうちまわることもあります。
―試行錯誤されている様子が伝わりました。続いてセンサの「組立工程」についてお聞かせ頂けますでしょうか。
松橋氏:こちらの主役は「パートさん」になります。一人で1つの製品を最後まで作り上げる「セル生産」方式を取っており多くのパートさんに活躍してもらっているんですよ。ただその過程にも工夫をしていて、「自動画像測定器」を使い部品検査を行うようにしています。7つぐらいの検査を自動で行うことができます。また、製造指示は生産管理システムで行なっています。やっているのはアナログだけど、指示は自動発注という感じですね。
―組立工程においても様々な工夫が伺えます。部品を組み立てる前に洗浄するお話を聞いたのですが、そうなのでしょうか?
松橋氏:海外の方がびっくりしていたやつですね(笑)。そうなんです。小さいゴミも取り除き、限りなくリスクを減らしてから組み立てを行います。センサのコア部分はすごく小さいんですよ。世界で一番小さい部品の組立ロボットで揺らしながら部品が重ならないようにしています。
―1万点以上ある部品をオーダーメイドに組み合わせる「完全受注生産」と伺いましたが、そのあたりも御社の特徴なのでしょうか?
松橋氏:そうです。センサのコアとなる部分は標準化して、他はオーダーメイドで組み立てるようにしています。言うなれば着せ替え人形の「人形」の部分は標準化し、「服」の部分を何種類も作る、そんなイメージを持ってもらえればと思います。それからうちは完成在庫を持たない。中間仕掛かりがあるので、注文が入ってから製品を作るようにしています。寿司屋のカウンターで大将が寿司握るみたいにね。それも大きな特徴だと思っています。ちなみに部品庫は番地化されています。トヨタさんに指導してもらったんですよ。
―A M R(自律走行搬送ロボット)が走っていますね!
そうです、コードをセンサのラインに運ぶんです。ルートを覚えることができて、バスがバス停に停まるみたいに動くんです。物の移動はロボットに任せ、ここも「自動化」を進めたいと思っています。あと2台、追加で導入を予定していますよ。
業種 工場の自動化に貢献する「高精度工業用センサ」の、開発・製造・販売
設立年月 1976年6月10日
資本金 4000万円
従業員数 118人(2023.5.1現在)
代表者 松橋卓司
本社所在地 〒190-0011 東京都立川市高松町1-100 立飛リアルエステート 25号棟 5階
電話番号 042-527-3278
公式HP https://www.metrol.co.jp/