共感が生む新たなイノベーション!〜単純検査労働を無くす世界を作る〜(株式会社メトロール②)

父の想いを受け継いで 〜現在までの歩み〜

第一回では、精密機械センサメーカー「株式会社メトロール」の特長について、製造工程を中心にお話を伺いました。第二回では、創業時から現在に至るまでの歩みについて伺ってみたいと思います。

技術者が報われる会社を目指して

―創業当時についてお聞かせ頂けますでしょうか。

松橋氏:創業は1976年、私の父である松橋章が52歳の時に会社を興しました。当時の創業メンバーは父を入れて4名だったと聞いています。創業前、父は大手精密機械メーカーで「胃カメラ」の製造に携わっていました。しかし、新しいものを作る時は「社内で」必ず反発があるもの。胃カメラを作っていた時は様々な苦労があったと聞いています。そのような経緯があり、父は「技術者が報われる会社を作りたい」という思いでメトロールを創業しました。うちの今のセンサは汎用機の中の過酷な環境においても耐久性に優れているのですが、実は父が胃カメラを開発していた時の「防水技術」が今のセンサにも活きているんですよ!

―お父様のモノづくりの技術が会社の礎となったのですね。その後はそのような経過を辿ったのでしょうか?

松橋氏:それはもう、大変でしたよ。実は創業メンバー4人のうち父以外の3人が辞めてしまいまして。しばらくずっと父一人とパートさんたちでやっていましたね。当初やろうと思っていた製品が他の会社の特許に抵触しているとかで全く売れなかったんです。当時僕は大学生でアルバイトとして手伝っていましたが、毎日来る日も来る日も図面を引いている父の姿を見て、これを仕事にするなんて冗談じゃないと思い他の食品メーカーに就職しましたね。(笑)

創業当時の様子(松橋社長プレゼンテーションより)

 

―大変なご苦労があったのですね。その中でどういった経緯でメトロールを継がれたのでしょうか?

松橋氏:純粋にいいものを実直に作っている父の姿を見て、私の気持ちが変わりましたね。当時全く畑違いの業界にいたので詳しいことはよくわかりませんでしたが、野心とかではなく純粋にいいものを作っていると感じたので、それを世界に広めたいと思いました。父の作った教典があって私はそれを広める、宗教と伝道師のような関係ですね。


早期から注力した、海外向けECサイト

―入社された当初から海外への進出を見据えられていたとのことですが、当時どのようなことに注力されたのでしょうか?

松橋氏:私が入ったのは1998年。当時B to B企業では珍しい「インターネット」取引に着手しました。多分、日本で3本の指に入るくらい早かったんじゃないかな。ちょうどTシャツ屋さんとかがインターネット上でB to Cの電子商店取引を始めた頃。B to B企業は基本的に手形商売だったので、そんなものはなかったんですよね。あと僕たちは基本的に世界中に売りたい、国内の特定の大企業に従属すると下請けになってしまうのでそれは避けたかった。なのでインターネットを使って「こういう面白いセンサがあるんだよ!」という発信に力を入れていましたね。

 

―当時は珍しい「B to B企業のインターネット販売」に早期から着手されていたのですね。そのほかに注力されていたことはありますか?

松橋氏:「クレジットカード決済」です。できるんじゃないかなと思って取り組んだら、できてしまったんです。これが海外取引には良かったんだと思いますね。当時は今とは仕組みも違うので自社でお客様のナンバーを管理したりしていたんですが、途中から第三者にやってもらうことになって、逆にその会社にノウハウを教えていたりしました。(笑) あとは「展示会」ですね。積極的に世界中の展示会に出展していました。延べ14ヶ国、38都市ぐらい。その時はまだ日本の中小企業はどこも海外の展示会に出るなんてことはやっていなかった。海外展示会での成果としては、ヨーロッパ主流である歯医者さんの歯科加工機にうちのセンサが導入されたことです。ヨーロッパの展示会に出て「面白いね!」と評価されたのがきっかけなんですよ。そのようなわけで、うちは2000年代初頭から「インターネット」と「海外の展示会」を沢山実施していました。

海外展示会の様子

 

英語と中国語のパンフレット。海外展開に注力していることが窺える。

 

シニア×若手が産んだ奇跡「エアマイクロセンサ」

―ネット販売、海外展示会、クレジット決済等を積極的に取り入れたことが海外展開の布石だったのですね。営業方法に加え、「エアマイクロセンサ」等の画期的な製品も開発されていますね。
そうなんですよ。「エアマイクロセンサ」は従来の製品の20倍の性能があり、検知できなかった「5μmのスキマ」を判別できるんです。この開発を我々は「老人と海」の世界と言っています。(笑) 当時80歳のシニアと20代の若手エンジニアが作り上げました。シニアが持っているアナログの技術でメカニズムを考え、若手が電子化しました。2年で開発し電子化に2年、機械メーカーに認めてもらうまでには4~5年かかりましたね。東京のベンチャー技術大賞を獲得しています。これはまさに「人と人との有機的なつながり」が生んだイノベーションだと思っています。

オフィスに常設展示されている「エアマイクロセンサ」

 

―まさに「会社はオーケストラ」ですね。メトロールでは「定年がない」とも聞きます。組織体系や社内の役割などはいかがでしょうか?

うちでは「定年」はありません。1年ごとの更新で、シニアエンジニアの方々には身体が元気な限り活躍してもらいたいと思っています。大手メーカーで半導体などを作り活躍されていた方々が頑張ってくれていますね。また、組織内では「役職」の壁が低い。ランクの高い者は、心と時間のスペースを作り打ち合わせの場でヒエラルキーをできるだけ行使しない。最後の結論出しは行うが、ありのままを明かしあえるような場づくりを心がけています。得意な分野では、例え若手であってもその人がリーダーをやればいい。「競争より共生、役職より役割、議論より対話」を重視しています。また経理や総務人事といった部門は持たず、「開発」「製造」「営業」といった付加価値を創出する部門のみ。「気付きシート」の内容は翌日の朝礼で共有され、即改善する。「イノベーションを起こすためにはどういった組織を作るか」を考え、行動をしていますね。

応接室に飾られた表彰式の写真


業種   工場の自動化に貢献する「高精度工業用センサ」の、開発・製造・販売

設立年月          1976年6月10日

資本金              4000万円

従業員数          118人(2023.5.1現在)

代表者              松橋卓司

本社所在地      〒190-0011 東京都立川市高松町1-100 立飛リアルエステート 25号棟 5階

電話番号          042-527-3278

公式HP           https://www.metrol.co.jp/

この記事の著者

田部井可奈子

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