金属加工を通して「ものづくりの民主化」と「製造業の再興」を図る(株式会社極東精機製作所 鈴木亮介社長インタビュー第1回)

極東精機製作所の強みと、売上に繋げるWebサイトでの対応
日本企業の70%以上が新型コロナウイルスの悪影響を受けるなか、極東精機製作所の業績は好調に推移している。たとえ世界に誇るような技術を持っていても、効果的な発信が苦手で売上拡大に繋げられない企業も多い。極東精機製作所では自社のWebサイトからどのように新規受注を獲得しているのだろうか。2017年に専務に就任した時から、営業・Web施策・人事などの業務に広く携わり、2021年9月に社長に就任された鈴木亮介氏にお話を伺った。

株式会社極東精機製作所社長 鈴木亮介 氏

 

常にアップデートされ続ける創業時からのコア技術

極東精機の主力事業について教えてください。

鈴木氏:創業以来、金属部品の旋盤加工をメインに、通常は削りにくいとされている難削材の加工を得意としています。一番の特徴は、軸がずれている部品や、鍛造品にありがちな、いびつな形をした異形材を回転させて加工できることです。

通常の旋盤加工を理解いただくのに、ろくろを思い浮かべてもらうと良いと思います。まず、作りたいものを回転させますよね。そして、手を当てて形を変えていきます。旋盤加工では、ろくろで言うところの手が刃物であり、これをずらしていくことで加工品が完成します。一本の軸が通ったものでないと上手く回転させることが出来ませんが、当社では蛇が曲がったように軸がブレている加工品を製造することができます。そのため、他社が加工したがらない特殊性をもった部品を受注しています。

 

どのようにして異形材加工の技術は培われたのですか。

鈴木氏:我々の異形材加工の技術は創業時から存在します。初代である祖父が、治具を用いた異形材の加工を考案しました。その後、その初代の治具をヒントに様々な顧客要望に対応することで、コアとなる治具開発の技術を磨きながら受け継いでいます。今では、他社が思いつかないようなユニークな治具が当社には100種類程度存在します。主力製品である偏心軸のクランクシャフトは当社の治具開発の技術が凝縮された製品で、主に高圧ポンプ用途として使用されています。

 

軸がずれている異形材を加工できる会社は、大田区の中でも限られているのでしょうか。

鈴木氏:そうだと思います。東証一部上場企業からも年に3~4社は当社のクランクシャフトを見学に来ます。どうやら彼らの下請企業で対応できる工場が無く対応できる会社を探しているようで、コロナ禍にも関わらず、今年も既に3社ほどが見学に来られました。彼らの求める水準は高く、中には月産数千本というスケールの案件もあり、設備投資を含めて対応しようとしているところです。

 

Webサイトに注力して新規顧客の開拓・新規事業を開始

加工案件の問い合わせはどのように受けているのでしょうか。

鈴木氏:問い合わせは、主に自社のHPから受け付けています。特にSEO対策には注力していて、「大田区 金属加工」のキーワードで3年程、検索順位1位を取っています。

また、1日1~2件ほどの問い合わせをいただきます。「添付した図面の設計で加工できませんか」「このような装置開発をしたいのですが、どこかで打ち合わせさせてください」と、様々な内容の問い合わせが入ってきます。問い合わせと並行して電話していただくこともありますね。

問い合わせフォームを開設した当初は、個人のお客様からいただく趣味の範囲の依頼にも対応していましたが、今では、ありがたいことに問い合わせの件数も非常に多くなってきており、個人事業主と企業のお客様に限定して対応させていただいております。

 

年間300件以上問い合わせがあり、それぞれに対応するのは大変ではないですか。

鈴木氏:もちろん大変ですが、全ての案件に対して、熱意を持って対応しています。案件によっては、CAD図面を無償で書く対応もしています。ただし、問い合わせのうち実際の取引につながるものは全体の5%くらいですね。

こちらがどれだけ熱意を持って接していても、残念ながら、「とりあえず相見積もりをしたい」のような軽い気持ちで問い合わせている場合もあります。そのような案件は、最終的にお互いに意思疎通が取れず、取引にはつながらないことがほとんどです。

一方、実際のビジネスまで繋がるお客様は、問い合わせ時点で非常に強い熱意を感じます。自己紹介から始まり、「今後こういう風に売りたいんです」とビジネスプランをしっかりアピールされているお客様は、大抵上手くいきますね。

 

売上構成にはどのような変化がありましたか。

鈴木氏:コロナの影響で既存のお客様への売上はドンと減ってしまいましたが、Webがきっかけで取引を開始するお客様が増え、そのようなお客様の比率が半分程度になりました。新規のお客様の売上が大きな支えになっています。
さらに、昨年は美顔器事業が全体売上の大部分を占めることになりました。美顔器事業は、現在は提携先となっているベンチャー企業の株式会社YMGeと始めたものですが、YMGeとの取引もWebからの問い合わせがきっかけでした。

 

極東精機製作所の加工技術や、加工できる金属などがまとめられている。問い合わせフォームからの受注も増えている。

 

美顔器事業について教えてください。
鈴木氏:美顔器事業の主力製品はFace-Pointerという顔のコリをほぐす美顔器で、2年間で45,000本売れたヒット商品です。実はこれ、私自身で設計をしたんです。当時、私は製品設計をするのは初めてだったのですが、試行錯誤してなんとか製品化までもっていきました。それまで経験が無かった3Dデザイン・プロダクトデザインは、Face-Pointerの開発をきっかけに新事業化しており、3Dのグラフィックデザインそのものの販売も開始しております。

 

業績を大きく下支えしているFace-Pointer。2年間で45,000本売れたヒット製品である。

 


【企業情報】
業種   各種金属製品製造業

設立年月          1968年10月23日

資本金              10,000千円

従業員数          15名(役員除く)

代表者              鈴木亮介

本社所在地      東京都大田区南蒲田2-19-4

電話番号          03-3734-6461

公式HP          https://www.kyokutouseiki.co.jp/index.html

この記事の著者

山崎勇典

山崎勇典中小企業診断士

1992年生まれ。埼玉県出身。大学卒業後、化学メーカーにて機能性材料の営業職に従事。 現在は海外の電子デバイス市場を対象にしたマーケティング活動に携わる。

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