「見えないところで世界を支える極小ねじ技術—共栄ファスナーの挑戦(共栄ファスナーインタビュー①)

見えないところで世界を支える極小ねじ技術—共栄ファスナーの挑戦

株式会社共栄ファスナーが製造するのは、0.6mmから6mmまでの極小ねじやφ0.4~5.5までのコネクターピン。どれも最終製品の内部で使われ、一般の目に触れることは少ない。だが、精密機器の性能を安定させるうえで欠かせない存在であり、同社はその世界で信頼を築いてきた。社名にある「ファスナー(fastener)」は英語で“締結”の意味を持ち、AとBをつなぐ役割を象徴する。極小ねじの世界で独自の技術を育ててきた同社の事業内容や強みの源点について、川添氏にお話を伺った。

工場内での川添隆取締役

 

株式会社共栄ファスナーとはどのような会社か

-現在の事業内容について教えてください。

川添氏:当社は0.6〜6mmの特殊ねじやφ0.4~5.5までのコネクターピンを中心に製造しています。主力はハードディスクドライブ(HDD)用のねじで、クランプ固定用のM2ねじは特に需要があります。その他にも自動車のシートベルト部品、ノートパソコンやスマートフォン内部の固定用ねじなど、精度が求められる分野を担当しています。そのほとんどが外から見えるものではないですが、重要な部品です。

 

-ノートパソコンやスマートフォンには何本くらいのねじが使われていますか。

川添氏:そうですね。スマートフォンの初期モデルでは1台に50本以上のねじが使われていることもありました。ノートパソコンも同程度でした。それが最近のスマートフォンだと10~20本くらいまで減っています。製品全体の設計が変わるとねじの需要も大きく変化します。

 

-ねじは“最後の部品”として発注が来ることが多いとか。

川添氏:はい。金型など大きな部材は数ヶ月前から手配されますが、ねじは製品が設計されて製造される一連の流れの中の最終段階で必要な要素が決まってくることが多いです。そのため「一ヶ月後に量産するから急ぎで欲しい」といった短納期の依頼が多いという特徴があります。

そのために、図面をいただいてから1〜2日で試作1万本を用意することもあります。1日で5〜8万本作ることができますが、セット替えに半日かかるので、いかに効率的に段取りできるかが勝負になってきます。金型と材料が揃っていれば、緊急対応にも応えています。

 

-製造工程について教えてください。

川添氏:製造工程を大きく分けると圧造転造の2工程になります。圧造ではねじの頭部を成形し、転造ではねじ山をつくります。削らないのでカスが出ず、強度の高いねじになります。当社は横プレス方式で、頭部の体積を0.1mm以下の精度で管理します。HDD用ねじは特に精度要求が厳しいですね。

 

-品質管理はどのようにされているのでしょうか?

川添氏:図面から試作図面を作り、材料寸法・ブランク径・金型仕様などを定めます。そのうえで工程標準書を作成し、各工程で寸法を記録。外注から戻った後は抜き取り検査を実施します。ロットは100万本単位ですが、10万本ごとに番号を振り、不具合発生時にどこを除くべきか即判断できる仕組みとしています。

極小ねじ、ピンのサンプル

HDD向けねじには、0.2ミクロンレベルの異物管理が求められる。世界中のHDD内部の異物をすべて集めても“サッカーボール1個分”と言われるほど厳しい世界で、ほんのわずかな締結力の差が読み取り性能に影響する。大量生産であるほど、不良が気づかれずに流れてしまうリスクもある。同社の品質文化は、こうした緊張感の中で磨かれてきたものだ。

 

創業の精神とこれまでの歩み

-共栄ファスナーの社名はどのように生まれたのですか?

川添氏: 創業者が鹿児島の甑島(こしきしま)から中学卒業後に上京したのですが、その途中で富士山を見た際にとても感動したそうです。それで当初は「富士ファスナー」にしようと考えたこともあったそうですが、「富士」=「日本一」で終わりじゃない、ということで“共栄”になりました。ファスナー(fastener)は英語で“締結”や”締め具”を意味しており、「共栄ファスナー」という社名には「共に栄えて繋がる」という意思が込められています。事業を志すにあたっていわゆる「三方よし」を大切にしていたので、そうした考えが社名にも反映されているように感じています。

 

-創業から現在の工場体制に至るまでの経緯を教えてください。

川添氏: 最初は綾瀬市の30坪の町工場からスタートしました。取引が増えて設備が入りきらなくなり2000年に海老名へ移転しましたが、そこでも収まりきらず複数拠点で生産する形になりました。ただ、距離があると往復で1時間半以上のロスが出るため効率が悪い。そんな折、大手自動車会社の工場跡地を工業団地にする話があり移転を検討しましたが、業界全体の動きで計画が進まず断念しました。最終的に海老名市からの後押しもあり、2010年に現在の地に落ち着きました。

ワッシャー組込みの設備。銅色のリングと銀色のねじ本体を自動で組み込みする。

創業者が掲げた「三方よし」は、自社、自社の取引先企業、自社が手掛けた製品を最終的に使用する顧客や地域社会の三者が共に栄えるという思想だ。川添氏はさらに“取引先企業の担当者”も加えた「四方よし」と語る。技術的に難しい要求があってもすぐに「ノー」と言わず、相談しながら道を切り開く姿勢は、同社が信頼を積み上げてきた理由の一つでもある。

 

技術と人が育つ現場

-技術の伝承はどのように進めていますか?

川添氏: 基本はいわゆるOJT(On the Job Training)ということで、実作業を通じて技術を身に着けることを大切にしていますが、作業に必要な情報は図面や工程標準書にもまとめています。細かい作業なので正直なところ、人によって向き不向きはありますが、“観察を嫌がらない人”は伸びますね。折り紙で立体作品をつくるのが趣味という人を採用したことがありますが、発想力と手先の感覚がよく、非常に戦力になりました。

 

-従業員の構成と採用方針について教えてください。

川添氏: 18名で、20年以上のベテランから若手まで幅広い構成です。年齢が偏ると世代交代をする途中で技術が途切れてしまうことがあるため、あえて幅広い年齢層からバランスが良くなるように採用しています。

 

-量産と品質を両立できている理由はなんでしょう。

川添氏: HDDメーカーの高い要求に応え続けてきた結果だと思います。異物管理、ロット管理、締結力管理など、厳しい基準が当たり前になり、現場の判断力と経験が積み上がっていきました。それが今の技術の基盤になっています。

完成したワッシャー組込みねじ

 


会社名 株式会社共栄ファスナー

業種   精密・一般・特殊ねじ、コネクター・カシメピン、電子用接点の製造

設立年月          1996年2月

資本金              1,000万円

従業員数          18人

代表者              川添民男

本社所在地      神奈川県海老名市上郷四丁目4番32号

電話番号          046-236-0010

公式HP           https://kyoei-fastener.com

この記事の著者

沖忠彦

沖忠彦中小企業診断士

東京都中小企業診断士協会城東支部、足立区中小企業診断士会所属。 補助金申請支援や創業支援などを通じて地域の中小事業者支援に取り組む。

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