「町工場から企業に」 新たな加工技術に挑戦し続ける(株式会社丸善 インタビュー②)

高度なプレス加工技術と徹底した品質管理によるお客様の厚い信頼

プレス加工技術をコアに、溶接・アッセンブリ加工から磨きまですべて一貫製造できる技術力の高さと広さを武器に、トラック部品を中心とした金属部品を製造・販売する株式会社丸善。第一回では、創業から前社長より事業承継した現在までの歩みについて伺いました。

第二回では、代表取締役の中澤憲一氏と常務取締役の藤田一郎氏に、創業から長年培ったコア技術であるプレス加工技術と、生産管理システムを活用した徹底した品質管理について伺います。

プレス加工といえば丸善

- 御社ならではの特徴を教えてください。

 藤田氏:ものづくりにおける製品加工における基本概念を3つ設けています。1つ目は製造管理です。生産効率の向上や安全衛生をチーム単位でしっかりと行っています。2つ目が品質管理で、お客様にきちんとした製品を納める“0キロクレーム”を目標に掲げています。製造工程で不良品が発生した場合でも、外部へ流出させず、車両の不具合搭載距離を”0キロメートル“にするという意味合いです。3つ目は作業者の教育管理です。人の入れ替えがある中で、製造にかかわる社員一人ひとりが製造工程を理解したうえで、作業標準に基づいて作れるようにしています。異変があった時には、グループ班長に報告して迅速に対応できる環境を整えています。また、業務効率化かつ品質管理を向上する為に生産管理システムを導入し、計画から出庫管理まで全てシステムで運用でき、効率的な生産計画や生産状況の見える化ができるようになりました。

スポット溶接機で加工されたトラック部品の一例。班長を中心に徹底した品質管理が行われている。

 

- お客様に評価されている、御社の強みを教えてください。

中澤氏:一番の強みは、お客様との距離が近いことですね。お客様側で問題が生じた際に、弊社も緊急で対応してお客様のラインを止めないように納品ができる点に、大変信頼を置いてもらっています。長年培ってきたプレス加工技術も強みの一つです。経験値は他の企業さんに比べて、非常に高いと自負しておりますし、“プレスといえば丸善”と言われるほどお客様には認知いただいております。

藤田氏:品質管理も評価されている点です。主要なお客様であるパブコ様からは、2年連続で品質優秀賞をいただきました。各班長を中心に、製造時、製造管理システム、出荷前の確認など何重ものチェックを行っています。それ以外にも、品質面では外部顧問にも協力いただき、品質確認工程や不具合が発生した際の検証、対策などを日頃より実施しています。例えば、自動車や運輸関連では、新規性のある製品を生産する際は、「PPAP」という生産部品承認プロセスを経て、量産の承認を取得する必要があります。以前、「POST SIDE GATE」というアルミ材料の切削加工に初めて取り組む際、弊社では設備環境や加工ノウハウが不足していました。そこで、社内における準備・トレーニング・設備導入・トライ検証、教育など多岐にわたる工程について、外部顧問と連携し支援を受けることで、顧客からのマネジメント承認を得ることができ、無事に量産立ち上げへとつなげることができました。

プレス加工した材料を取り出す様子。材料はベルトコンベアーで運ばれ、更にプレス加工される。

 

- プレス加工技術面ではどのような点を工夫されておりますか。

中澤氏:プレス加工は気温や湿度などの状況次第で、鉄が硬くなったり柔らかくなったりするので、同じ機械、同じ設定で加工しても形状が変わってしまいます。時には、ぱっくりと切れちゃうこともあります。弊社では、圧力を逃がすために何かを嚙ませたり、使用する油や塗布箇所を変えたりなど、色々と工夫しています。こうしたノウハウの積み重ねが弊社の強みであり、専務を筆頭にOJTで各従業員に伝えています。

 

三日三晩、パイプと向き合う

- これまでに苦労された案件について教えてください。

中澤氏:中が空洞の丸パイプは加工が本当に大変でした。パイプベンダー(パイプを曲げ加工するための工具)を用いれば加工できますが、それでは生産量が全然追いつかないことから、弊社にプレス化のお話がありました。弊社では過去に大型プレスで作った経験があるのでお引き受けしましたが、実際には思った通り上手くいかずに大変でした。

 

- なぜプレス加工が上手くいかなかったのでしょうか。

藤田氏:原因はスプリングバックという鉄の特性で、加工直後は目的の形状が出ますが、時間が経つと形が戻ってしまう現象ですね。プレス加工では、スプリングバックを見越して微調整を行います。例えば、少し上に振れるのを抑えるために、あえて加工直後では下向けになるように見込み加工します。

中澤氏:今回の案件では同じように加工しても、スプリングバックによる形状の振れ方は“もの”によって大きく異なり、公差に上手く入らずに大変苦労しました。トータルで3ヶ月ぐらい取り組みましたね。時には、金型屋さんにも張り付いて見ていただき、私自身も現場に立ち会い、三日三晩徹夜でトライしましたね。最終的には、ご依頼された試作台数分は、無事に納品できました。本当に大変でこれ以降、パイプが嫌いになりましたね(笑)

苦労したパイプ加工について語る中澤憲一社長(右)と藤田一郎常務(左)

 

現場に合った生産管理システムによる品質管理

- 生産管理システムはどのような内容でしょうか。

中澤氏:部品点数や処理内容が増えていく中でヒューマンエラーが目立っていたので、改善したいと考えていました。プレス会社で導入している企業は少ないですが、海老名商工会議所工業部会で日本コンピュータ開発様から生産管理システムのご紹介を受け、導入を行いました。

それまでは事務所から紙で作業の指示を出していましたが、いまでは事務所から全員に配ったタブレット経由で指示を出しています。各従業員は作業を終了後、完了ボタンを押すと生産管理システムに進捗情報が登録され、事務所から全体的な進捗状況を把握できます。

 

- 生産管理システムを導入して特に良かった点を教えてください。

中澤氏:弊社の独自システムである不良品の記録を管理できる点が特に良かったですね。生産数量に対して、良品と不良品の数量を全て入力し、ひどい不具合では写真も保管しています。もしも、お客様で何かあったときに、どの生産品か遡りができるようになりました。過去には、3ヶ月後に不良品が見つかったこともあります。そうすると、従業員が記入した作業日報を一つ一つ確認して、どの生産品か探し当てる必要があり、大変な時間と労力がかかったこともありました。このシステムのおかげで、すぐに遡れることができ、在庫管理もできています。

ライン化されたプレス機の最終工程。生産管理システム上で、良品・不良品の数量が管理される。


- 全ての業務に生産管理システムを展開されていますか。

中澤氏:実は全ての業務に導入しているわけではありません。生産管理システムでは、お客様からのオーダーに基づく生産管理、原材料の在庫管理、プレス加工した製品管理まで行っています。しかし、その後のアッセンブリの管理は紙で行っています。これは、お客様のラインにあわせて、数日前のオーダーを1日前に納入する序列納品が繰り替えされ、イレギュラーなオーダーが入らないシンプルな運用であり、生産管理システムを導入すると、却って工数が大幅に増えるためです。一度、全ての業務へのシステム導入を検討しましたが、あるメーカーさんの工場を見学した際に、 “システムだけではできないところがあり、紙を使った方が最も効率的”というお話を伺い、そういう考えもあるのかと、紙での運用を残しました。


業種   プレス加工、溶接組立、鈑金加工等の金属製品製造業

設立年月          1946年12月

資本金              1500万円

従業員数          35人

代表者              代表取締役 中澤憲一

本社所在地      〒243-0401神奈川県海老名市東柏ケ谷4-11-4

電話番号          046-231-2285

公式HP           https://www.ebn-maruzen.co.jp/

この記事の著者

山本祥晴

山本祥晴中小企業診断士

2024年中小企業診断士登録。化学メーカーにおいて研究開発業務に従事。環境系の中小企業診断士として、経営改善や各種補助金の申請支援に加え、脱炭素経営などの支援も行う。東京都中小企業診断士協会三多摩支部、神奈川県中小企業診断士協会に所属。

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