三代目(アトツギ)の挑戦~日々の積み重ねだけが未来を創る~(佐藤製作所 インタビュー③)

若手が活躍する、活気あふれる職場へ

創業68年を迎える金属加工の町工場、佐藤製作所。同社の「三代目」である佐藤修哉常務取締役に、強みである銀ロウ付けの技術と、職場の風土を刷新するための入社当初の奮闘について伺ってきた。

第三回では、同社のもう一つの強みである若手の活躍について取り上げる。多くの町工場同様高齢化が進んでいた同社だが、現在は社員の約半数が30代以下だ。現在に至った経緯と、今後の展望についてお話しいただいた。

 

「新卒採用」にこだわるわけ

佐藤常務が入社した年から新卒採用を始めたとのことですが、何かきっかけがあったのでしょうか。

佐藤氏:それまではスキル重視の中途採用をしていましたが、定着率が良くありませんでした。当初私は採用には関わっていなかったのですが、たまたま自分と年齢の近い30代の方が入社したことがありました。その頃は社内のほぼ全員がかなり年上だったので嬉しくて、二人で飲みに行って意気投合し、これで一緒にやっていけるなと思っていたのです。それが、2、3か月後には全く変わってしまって、最後に彼は私に強い言葉を吐き突然辞めてしまったという出来事がありました。現場で何があったのか分からないのですが、私にはすごくショックが大きく、きついなと思いましたね。

スキル重視の採用だと、本人に嫌なことがあったり思ったようにできないことでうまくいかないケースが多くありました。私は単に作業をさせるというよりコミュニケーションを図りながら仕事をしていきたいという考えがあったので、スキルが十分なくてもいいからきちんとコミュニケーションが取れて、長期に渡って一緒に働ける人を何とか集めようと、新卒採用をすることにしました。

その後、高等専門学校での合同会社説明会にも出られたとのこと。

佐藤氏:それもたまたまのご縁でした。当時、技術関連の展示会に出展して営業活動をしていたのですが、そこで高専のインターンシップのコーディネートをしている方から「よかったら出てみないか」と声を掛けられたのがきっかけです。

初参加時のことをよく覚えているのですが、他は有名企業ばかりでスーツ姿の人事担当者が来ている中、無名の零細企業の、ほぼ私服のような恰好の28歳の私だけ、明らかに浮いていました。それが尖って見えたのか、学生から質問が沢山出て、興味を持ってくれているのを感じました。

その後、一度に4名もの学生がインターンに来て、そのうちの1名が入社して今も在籍しています。最初に4名来たことはインパクトが大きく、この取り組みが無駄ではなかったと社内にも示すことができました。とても運が良かったなと今でも思います。

とはいえ当時は年配のベテラン職人しか在籍しておらず「仕事中にどうして学生の面倒を見なければいけないのか」という空気が漂っていましたので、私が全て面倒を見ました。

若手職人が活躍する現在の工場

 

そうだったのですね。それでは実際に新卒の社員を雇ってからは、技術の伝承などどのように進めていったのでしょうか。

佐藤氏:前例もマニュアルも何もないですから、基本的にはOJTでしたが、日々の仕事の中で「ちょっとじゃあ君ここ手伝って」とか、そんな感じでした。今は教えてくれる人が非常に増え、何かあった時に皆でサポートできる体制になってきていますが、昔はそういう状況でもなかったので、当時の新入社員はよく頑張ってくれたなというのが正直なところですね。

 

この11年で、どのように変化してきたのでしょう。

佐藤氏:それはやはり、少しずつ若いメンバーが増えて、その若いメンバーが採用活動やインターン受け入れにも関わり、指導もしてくれていることです。人に教えることに対する理解も非常に高く、とても助かっています。そこが一番ですね。

 

入社した若手が今度は先輩としてまた新しい人のケアをし、それが段々と積み重なっていったのですね。まさに、丁寧なコミュニケーションがあってのことですね。

若手やインターン生が制作したPRチラシ

 

 

 

女性の活躍は自然の結果

御社では女性の職人も多く活躍され、「東京都女性活躍推進大賞」も受賞されています。意図して女性を採用したのでしょうか。

佐藤氏:意図的ではなく、自然に採用した結果です。人数比率としては男性の方が高いですが、女性も非常に活躍してくれているのは間違いないですね。

基本的に女性は向いていないと思われがちな職種・業界で、以前は社内でもそのように考えられていましたが、メディア向けも含め女性はPRをする能力に長けているし、顧客対応でも非常に活躍できる要素があると私は思いました。町工場とはいえ営業活動は大事です。男性が悪いというわけではないですが、年配の職人が窓口対応をするよりも女性が出たほうがお客さんの反応もいいんですよ。

また、この業界に女性が少ないということは、ひとつのチャンスでもあり一気に強みになる可能性もある。そういった意味で、女性を拒むこともなくただ扉を開けていたところに集まったというわけです。

 

技術面では、特に男女での差を感じることはありませんか。

佐藤氏:それはないと思います。私も驚いたのですが、「ものを作る方の仕事をしたい」という女性が多く、それは想定していなかった良いことでした。本当に能力の差はなく、物理的な力があるかないか、その程度のことだと思います。ただ、現場でものづくりをしている時間が多いか少ないかで差がつくということはあると思います。

女性社員が制作する社外報「銀ろうたより」(同社ホームページより)

https://sato-ss.co.jp/category/newsletter/

 

日々の積み重ねだけが未来を創る

最後に、今後の目標やビジョンなどあれば教えてください。

佐藤氏:明確な計画や目標を立てることは苦手ですが、これまでやったことのない案件でも前向きにチャレンジしてできることを一つずつ増やしていくことで、その先にまた想定していないものを掴んでいきたいです。そうやって何か世の中から困りごとの相談を受けたら応えていくことを10年続けていきたい。そのために今いるメンバーを大事にして、辞めたいと思われない会社にしつつ、今後もいいメンバーをどんどん採用していきたいです。

事務所には近年受賞した様々な賞の賞状が飾られている


業種   金属加工業

設立年月          昭和33年12月17日

資本金              1,000万円

従業員数          17人

代表者              佐藤 隆之

本社所在地      東京都目黒区鷹番3-20-7

電話番号          03-3712-6652

公式HP           https://sato-ss.co.jp/

この記事の著者

青柳紗千子

青柳紗千子オフィス アオ・インサイツ代表 中小企業診断士

大学卒業後、服飾資材専門商社、アパレル輸入卸企業にて計15年間営業として勤務。製造から小売まで、国内外サプライチェーンのあらゆる現場に立ち会う。その後、行政の男女共同参画分野職員を経て、中小企業診断士として独立開業。「人権経営」を提唱し、あらゆる人が能力を発揮できる強い組織づくりを支援している。

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