断られた仕事にこそ、活路がある。日本のインフラを支えている町工場(東蒲機器製作所インタビュー②)

他社が断る難加工に挑む、町工場の「泥臭い強み」

第二回は、有限会社東蒲機器製作所の強みの再定義、傷や不揃いな形状から生み出す「いびつな素材」に果敢に挑む現場の技術について掘り下げます。職人の手感と汎用機をいかにして活かしているのかその取り組みに迫ります。

「何でもできます」を捨て、他社が嫌がる加工で活路を開いた自社の再定義

-民事再生を経て、最盛期に9割を占めていた特殊土木の仕事は現在どうなっているのですか?

髙橋氏:今は土木のシェアとしては売上の3割くらいまで下げています。代わりに鉄道関係が2割、残りの5割をその他の色々なお客様で構成しています。もう土木で待っていても仕事が来ない時代になりましたから、意図的にお客様の分野を広げてリスク分散をしてきました。結果的にようやくここまでばらけさせることができたな、と思っています。

 

-新規のお客様に選ばれるための、御社ならではの強みはどこにあるのでしょうか?

髙橋氏:率直に言って、技術的に他の企業様より優れているところなんて、当社には何もないんですよ(笑)。髪の毛一本の穴を通すような微細加工ができるわけでもないし、5軸の最新の機械で三次元をスムーズに動かせるわけでもない。以前、コンサルタントの方からアドバイスをいただいた時に、「何でもできます、というのは何もできないのと同じだ」と言われたんです。本当にその通りだなと思って、「何でもできます」と言うのをやめました。その代わり、自社を見つめ直して行き着いたのが、「他社が面倒くさがって嫌がる仕事を請け負おう」ということでした。

東蒲機器製作所の工場内

 

-他社が嫌がる仕事、ですか。

髙橋氏:父が社長の時は、他社に真似されるのを恐れて工場に人をほとんど入れなかったので、誰も当社のことを知らなかったんです。どんな機械があって、何ができるのかほぼブラックボックスでした。そこで、私が大田区の工業会へ積極的に顔を出すようになって、「うちはこういう、みんなが嫌がる加工ができますよ」とオープンに触れ回っていったら、逆に「そんな大きなものが削れるの?」とか「こういう形状の追加工できない?」と仕事がつながり始め、相互に仕事をやり取りする人のつながりも生まれました。

 

機械に載せる前のひと手間。職人の技でいびつな素材に「正確な面」を切り出す

-具体的に「みんなが嫌がる加工」とは、どういった仕事なのでしょうか?

髙橋氏:分かりやすい例で言うと、バラバラな形状の鍛造品や鋳物への追加工(除去加工)です。通常の綺麗な金属材料、例えば銀色のフラットバーのような材料であれば、最初からある程度の寸法や直角が出ています。そういう材料なら、今の最新の自動機に載せてプログラムを組めば、誰でも簡単に自動で加工ができます。ところが、当社に持ち込まれる鍛造品や鋳物は、真っ黒に焦げていて、表面がゴツゴツといびつで、カドも直角も寸法も、一個一個が全くバラバラなんです。最新の自動機しか持たない現代の工場は、こうした形状が定まっていない素材をもの凄く嫌がります。なぜなら、自動機というのは材料の寸法が綺麗に揃っていないと、最初の位置決め(芯出し)が非常に難しく、プログラムで自動化するのが極めて面倒だからです。

 

-御社はそのような材料に対して、どのような対応をされるのでしょうか。

髙橋氏:ゴツゴツとしたいびつな材料が来たら、当社の工場長の旋盤師が、まず汎用機を使って、自分の手でメモリを合わせて、黒皮を取る、捨て加工をやるんです。自作の治具に品物をうまくつけて、100mm角なら100mm角のきれいな四角の寸法を自分たちの手で作ってしまう。そうしてきれいな基準面を一つ作ってからNC機に乗せてあげれば、芯出しも容易になりますし、そこから寸法を追っかけて百分台、千分台の穴開けや切削が確実にできるようになるんです。

加工前の材料(表面はザラザラしており表面はいびつ)

 

 

古い機械を愛して鋳物に挑む自社の覚悟

-職人の汎用機での「手作業」があるからこそ、その後のNC自動加工が活きるのですね。

髙橋氏:近年のマニュアル化や自動化が進んだ環境では、データ通りにいかない不揃いな形状を目の前にすると、アプローチの仕方に苦慮される技術者の方も少なくないようです。しかし当社の場合、汎用機を駆使してあらかじめ扱いやすい形へと整えてからNC機へと繋ぐアプローチが、ごく自然な仕事の流れとして根付いています。これが大きな強みになっていますね。また、もう一つ多くの工場が慎重になる理由が、加工時に出る切り粉の性質にあります。通常の鉄であれば、らせん状に繋がって出てきますが、鋳物は粉末状の細かな鉄粉になるため、最新の精密機械を扱う環境ほど、その管理に大変な気を遣われるのだと思います。

 

-細かな鉄粉ですか。それが機械に悪影響を及ぼすのですか?

髙橋氏:その細かな粉が、機械の滑る面(摺動面)に付着してしまうんですね。水溶性の切削油を使用していることが一般的であるため、その水分と鉄粉が反応すると、どうしても機械に錆が発生しやすくなります。そのため、高精度な最新設備を導入されている工場ほど、機械のコンディションを最優先に守る観点から、鋳物の加工には非常に慎重になられるのだと思います。しかし当社の場合、もともと土木や鉄道の分野で鋳物や鍛造品を数多く手がけてきた歴史があります。また、長年大切に使っている機械を、自分たちでメンテナンスしながら稼働させている工場でもありますから、そうした素材に対しても高い耐性とノウハウを持っています。もちろん、加工後の徹底的な清掃とケアは大前提ですが、多くの工場が設備の保護を理由に慎重になる「黒皮を取ること」や「鋳物加工」であっても、当社であれば柔軟に対応が可能です。

マシニングにセッティングされた材料


業種   金属切削加工

設立年月          1953年(昭和28年)

資本金              300万円

従業員数          10人

代表者              髙橋 俊樹

本社所在地 東京都大田区東蒲田1丁目13番10号

電話番号       03-3731-7056

公式HP           https://www.toho-kiki.com/

この記事の著者

中坪孝太

中坪孝太中小企業診断士、1級販売士、豆腐マイスター、ソイオイルマイスター

東京都中小企業診断士協会所属。広報部、青年部に所属。日用品の製造会社において営業に従事し、営業所長としてマネジメント業務も行う。販路拡大や、お店の売り場づくり、棚割の作成などに取り組む。

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