未来にむけて描く姿(株式会社臼井工業所 インタビュー③)

最終回となる第三回は、100年に一度の大変革期と言われる自動車業界において、株式会社臼井工業所が描く未来の姿について掘り下げ、お話を伺いました。

自動車業界で起きている環境変化の影響

昨今は自動車業界もEV化など環境変化が激しいと思いますが、この状況をどのように捉えていらっしゃいますか。

臼井氏:試作品にとっては、チャンスでもあると考えています。車系が変われば、新型車が出てその分、開発も進むのでチャンスが増えると捉えています。ただEVになると板金は圧倒的に減るようになります。エンジンがなくなるのでそこに関わる板金が減るんですよね。幸いうちはエンジン本体に関係する部品は造っておりません。しかしエンジン回りの部品を固定・支持するための金具や取付部材であるBKT類が無くなる影響は大きいですね。

八木氏:ただ今後は材質がどんどん変わっていくと思うんですよね。今は鉄だったものが、アルミに置き換わるなど、材質が変わるとそれに伴い新しい技術への適応が求められるようになってくる。現時点ではそこまでの切迫した状況ではありませんが、近い将来、必ず求められる技術だと思います。

 

強みを活かした事業展開

そうしたチャンスをつかんでいくために、どんなことを考えられていますか

臼井氏:弊社では3Dスキャナーを使うことで、図面のない部品を取り込み、データ化することで図面や製品の復元が可能です。また、3次元5軸制御レーザー加工機を保有しているため、立体形状の加工に対応できる点も強みだと考えています。さらに「短納期」で製品を納品できるモノづくり体制を構築していることも、当社の特徴の一つです。
試作品って、めちゃくちゃ短納期なんです。例えば、火曜日に注文を受けたら金曜日には納品するイメージですね。本当に短い場合は、「今日依頼するので、明日までには仕上げてほしい」という相談をいただいたこともあります。

同社が保有する3次元5軸制御レーザー加工機

 

短納期を実現するために、どんなことをされているんでしょうか

八木氏:1つはお客様とのコミュニケーションを大事にしています。納期をベースにどうしたら間に合わせることができるか、密に打ち合わせをおこなっていきます。

臼井氏:当社では曲げ加工を行う前に、曲げの伸び率を過去の実績と経験から数値化し展開形状をCADデータで作成しております。そうした事で、実際に曲げた時のやり直しを最小限に抑える工夫をしております。
またベンダー専用のパンチとダイ(型)を60種類以上備えており、その情報を営業担当者・CAD設計者が共有する事で、曲げ部品を加工するときに、図面に記載されている形状・精度になるべく少ないトライ回数で仕上げられる技術をもっています。他にも塗装1つとっても納期によってはお客様と話し合い塗装方法を変えていきます。例えば、協力メーカーに依頼する電着(でんちゃく)塗装は1週間かかりますが社内のスプレー塗装では1日で対応することができます。
長年に渡る実績と経験を元にお客様が求める要求事項を部品毎に的確に社内共有する事で短納期を実現しております。

 

八木氏:技術力を活かしながら、お客様から言われたことをそのまま受けるだけじゃなくて、どうすれば納期に合わせられるかをフィードバックして打ち合わせを重ねて改善をしていくことを大事にしています。生産品においては、治具を作ることで効率化を図ったりしています。こうした積み重ねが短納期の実現に貢献していると思います。

 

そうした強みは営業活動にも生きていますか

臼井氏:そうですね。お客様の状況や反応も時代とともに大きく変わりつつあります。担当者によっても悩み事は様々です。先ずはお客様と風通しの良い関係を築き、気軽に相談してもらえる信頼関係を構築することが大切になります。そのうえで、完全に新規の企業を開拓するというよりは既存のお客様やその子会社、関連会社と裾野を広げる方が当社にはあっていると感じます。やはり生産品は実績が一番重要です。先ずは弊社が可能なかぎり対応できる仕事は引き受け、同時に工程改善活動を行い工数を下げていく努力をしながら品質で不具合を出さないようにして収益性のある部品にしていく努力をしています。
また、お客様のニーズに応えられる新規設備の導入も常に検討をしております。

今後の成長戦略について語る臼井専務

 

象徴的な製品の創造

5年後、10年後に臼井工業所が目指したい姿はどんな姿ですか

臼井氏:現在は、対応できる範囲が広い分、「何でもやります」という状態になっています。それは強みでもあるのですが、一方で、特定の部品や分野において明確な強みを持ち、「この部品なら臼井工業所」と想起いただけるような領域を増やしていきたいと考えています。そして、その主力となる製品を、将来的には月に数千個単位で安定的に生産できる体制を作っていきたいですね。

 

特に取り組んでいきたい製品はありますか

臼井氏:お客様からよく評価いただいているのは、車のボディなどの外観面ができる点です。外観面は誰が見ても明らかな部分なので、傷とか歪みが一切ない高い品質を強く求められますが、こうした加工ができる企業は実はそれほど多くないんです。難易度の高い分野ではあるんですけど、チャンスがあればそういうものを軸にやっていきたいと思います。例えば「臼井工業所といえば、外板部品だよね」と想起していただけるような存在を目指したいですね。

 

八木氏:材料でもいいんですよ。実際にお客様からご相談をいただいて開発した「丸棒」と呼ばれる鉄の棒材があるんですけど、先端を曲げて取っ手のような形状にする製品を開発してます。ここを丸く曲げる部分に高い技術力が求められるんです。そうした技術を強みにして、「丸棒なら臼井工業所だよね」と言っていただけるような製品を増やしていきたいですね。

丸棒加工技術を活かして開発したカプラー用レバー


業種   大・中・小型自動車用部品製造、試作板金部品製造、少量・補給部品製造、産業機械用部品製造

設立年月          1970年8月

資本金              10,000,000円

従業員数          22人

代表者              臼井 正文

本社所在地      〒252-0184神奈川県相模原市緑区小渕402

電話番号          042-687-3020

公式HP           https://usui-kogyo.com/

この記事の著者

清野裕樹

清野裕樹中小企業診断士

神奈川県中小企業診断協会所属。これまで企業の採用・育成・組織開発の活動に取り組んできた経験を活かし、中小事業者支援に取り組む。

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